MUSIC

Ska Flames

 
   

2014年12月にRiddimOnlineに掲載された記事です。

 スカという音楽は、本来ルードな若者たちのための音楽という側面がある。だが一方で、スカという音楽には年齢を重ねるごとににじみ出てくる面白さもあるんだということを体現してきたのが、Ska Flamesだ。
 まったく触れないのも不自然なので事実だけ記すが、昨年(2013年)の12月21日、〈Ska Flames〉という名前のバンドが都内の二ヶ所で同じ時間帯に、別々にライヴを行っていた。Ska Flamesをフォローしてきたリスナーはもちろん、彼らに縁のあるミュージシャンや関係者たちはこの異常な事態に困惑したし、その後のなりゆきについても見守るしかなかった。当事者同士の話でもあるので詳しくは書かないが、現在は〈Ska Flames〉というバンドと、〈Okawa & The Rulers〉というバンドが、別々の道を歩きはじめたということだ。
 筆者個人の想いを述べさせてもらえば、それぞれのバンドが今後奏でていくであろう音楽、そして展開されていくであろうライヴには大きな期待を抱いている。だって、どちらのバンドにも、敬愛してやまないプレイヤーたちが集まっているから。さらに個人的な希望を言えば、時が経っていつの日かまた一緒に……いやその前に、二つのバンドの活動をしっかりと目撃していきたいし、生み出される音楽をもっとたくさん浴びたい。それだけだ。
 さて、そのSka Flamesだが、2015年に結成30周年を迎えるという。アニバーサリー・イヤーを前に、新たな想いとともに裏打ちの歴史を刻みはじめた彼ら。その創設メンバーである宮崎研二(g)と伊勢浩和(vo)に話を訊いた。

●今年(2014年)夏のフジロックでのステージを観ることが出来たんですが、大勢のオーディエンスで埋まったField Of Heavenを大いに盛り上げていました。

宮崎(以下、M):まぁ、全然変わらないでしょ? 曲も変わらないからね(笑)。間が空いたことはあっても、ライヴを止めたことはないもんね。

伊勢(以下、I):うん。一度もやらない年っていうのはなかった。

M:去年いろんなことがあって、バンド名を変えようかなんて話も出た。みんなでいろいろ相談もしたし……だけど、そこで結束も強くなった。

I:だから今は、昔バンドをはじめた頃の感覚に戻っているのかもしれないね。

そんな話の流れから、バンド結成当初を振り返ってもらった。

M:Ska Flamesを名乗る前に、Blue Flamesって名前でちょこっとやってたんだけど、その前にSka All Starsって名前でライヴを1、2回やったことがあるんだよ。

I:俺、その名前は知らない(笑)。まだメンバーが固まる前だよね。

M:ニッカさん(西川/バンド創立の中心人物であるドラマー)と俺とナベ(渡辺浩司/元メンバーのトロンボーン奏者)と、あと宮永(桂/b)と長井(政一/key)くんはいたかな。同じ頃、伊勢は伊勢でバンドやってたからな。

I:俺はアキヒト(中須彰仁/per)たちと一緒にBlue Beatっていうレゲエ・バンドをやってた。今になってみれば、なんて畏れ多い名前でやってたのかって思うけど(笑)。3回ぐらいライヴやったかな。そのバンドは最初はニッカさんがドラムを叩いてたんだよね。そのあと合体して、Blue Flamesになった。たしか84年頃だったかな。

M:ニッカさんなんて、もともとドラマーじゃないしね。(バンドを辞める)最後までドラム組み立てられなかったんだから。フロアタムの上には、いつも財布が置いてあった。手が回らないもんで、使わないフロアタムが物置きになってるんだよ(笑)。

●それ、すごいエピソードですね(笑)。

M:その頃、こだま和文さんは、松本隆乃さんたちとRude Flowerってバンドをやってらしたでしょ? そことアキヒトは近い関係だったし、こだまさんとニッカさんも原宿界隈で知り合いだった。そのつながりもあって、吉祥寺の曼荼羅でBlue Flamesがライヴやった時にこだまさんは観に来てたんだ。客5人しかいなかった時にだよ。『スカやっちゃてるんだ~、ヤバいよ~』って、こだまさんが喜んでたのが記憶にあるね。同じ時期に知り合った松竹谷清さんには『スカのギターの弾き方はな、人差し指でなぞるように弾くんだよ! Studio Oneのあの音は、ピックなんか使っちゃ出ねぇぞ』なんてことをよく言われましたね(笑)。

●情報があまり入ってこなかった時代なりの、音源を聞いて想像を膨らませながら探究していくという面白さもありますね。

M:バンドをはじめる時、ニッカさんからこういうバンドやるからって、スカの曲が入ったカセットテープをもらって。そこには〈The Guns of Navarone〉とか入ってたかな。カセットを聴いたら、テープが縒れててウニョウニョいってるんだよね(笑)。それ聴いて、変な音楽だなって思ったね。当時はもちろん、スペシャルズは知ってたけどね。で、バンドでやってみるんだけど、どうしてもあの雰囲気が出ない。当時はレコードをレプリカしようぐらいの勢いでやってたから、難しいもんだなって思ったよね。

長い歴史の中では、メンバーの加入/脱退もあった。比較的新しいメンバーというイメージのあるトロンボーンの溝呂木圭でも、加入から13年近く経っているという。

溝呂木(以下、MZ):Ska Flamesは昔から聴いてたし、自分の通ってた大学の学園祭に呼んだぐらいなんですけど、もともと僕はスカど真ん中じゃなくて、ファンクやR&Bを演っていたんですね。だからSka Flamesというバンドに対して変な先入観は無かったし、今でもある意味では第三者的な視点で見ることが出来る。それにしても、こんなバンドは他に無いよなって思いますよね。みんな本当に好き勝手なことばっかりやってるし。

M:今は溝呂木くんがスケジュールを管理したり、メンバー間の連絡を取ってくれてる。ご苦労様です(笑)。

MZ:溝呂木でも、そんな人たちがひとたび演奏をはじめると、このバンドにしか出せない音を奏でる。不思議なバンドだと思いますよ。

M:好きな音楽の指向性も幅広いからね。アキヒトなんかはルーツ・レゲエが大好きだし、長井なんかはMighty Massaと称してニュー・ルーツをやってるしね。宮永はソウルやR&Bやラテンだし、紫垣(徹/g)さんはマーヴィン・ゲイだしな。伊勢はジャンル問わず、奄美大島の民謡から矢沢永吉までルーツにあるし。

●過去の作品を聴き返してみても、作品を重ねるごとにメンバーそれぞれが持つ音楽性やエッセンスが音に反映されているのが面白い。

I:それだから、結構続いてるのかもしれないですね。みんなのいいとこ取りでね。

M:Ska Flamesには譜面が読めないメンバーも多いし、そもそも楽譜が存在しないんだけど、それでも伊勢なんかはホーンの和音を耳で聴いて『この音が足りないんじゃない?』ってアドバイスして、それがSka Flamesならではの和音になっていったりするんだよね。

I:ここであえて変な音入れたらいいんじゃないとか、ここは気持ち悪くていいよねとかね。クラシックをちゃんと学んでる人にしてみれば、頭が痛くなるようなハーモニーかもしれないけど(笑)。

●それはジャマイカン・オールディーズから影響を受けた美意識や価値観から来るものなんでしょうね。

M:そうだね。それに俺なんかは、戦前ブルースとかシカゴ・ブルースが好きで。音楽を聴きながら時代背景に思いを馳せたり……音楽って、人間の生活に密接じゃないですか? ジャマイカでスカが生まれたり、ロックステディに移行したりするのも、当時の時代というものが反映されてるんだろうし、そういうのがすごく気になるんだよね。

●では、Ska Flamesが演奏している音楽は、今の時代が反映されてると思いますか?。

M:直接、音には反映してないんじゃないかな。ただ、それぞれが自分の職業をもって働きながらも長く続けられるバンドがいてもいいんじゃないの? とはずっと思ってる。アマチュア・バンドからプロになる時に、みんな仕事を辞めて事務所に入って、事務所から給料もらってるけど、売れなくなったらクビになってとか、そういう例がたくさんあるじゃないですか? それはちょっと違うだろうなっていうのは、当時からメンバーみんなで言ってたよね。

●直接的に時代は反映されてないけれど、メンバーそれぞれの生活が音楽に表れてるかもしれない。

I:それはあるでしょうね。

M:バンドとしても、ここにきて活性化してきてると思う。この前、東北ツアーをやってきたんだけど、ライヴやった翌週って普通は練習を休むメンバーが多いんですよ。一応、スタジオは毎週押さえてあるんだけど、1人か2人しかこないこともあるし、そうなったら個人練習にしちゃうんだけど、その日は7人も来ちゃって。みんなお互いに『来るとは思わなかった!』みたいな顔しちゃってさ(笑)。

●それはなんでなんですかね?。

M:やっぱり、自然と足が向くんじゃないですか?。

●結成30周年を前にして、ふたたびフットワークが軽くなってきた?。

M:Ska Flamesって、もともとオープンなバンドだったと思うんだよね。僕ら、単なるパーティ・バンドですからね(笑)。

そんな〈パーティ・バンド〉がオーガナイズするライヴ・イベントが、12月23日に開催される。しかも今回は、SHEENA & THE ROKKETSとの2マンということで、期待も高まる。

M:僕は高校生ぐらいから、鮎川誠さんがずっと憧れで……僕はサンハウスは直接観たことがなかったけど、紫垣さんは観たことあるって言ってたね。で、SHEENA & THE ROKKETSのデビュー盤は当時買ってて、ライヴを観に行ったらエライかっこよくてね。今まで共演する機会がなくて、実は去年一緒にやるはずだったんだけど諸事情で先送りになって。それから1年経って、あらためてお願いに行って。まだ詳しくは言えないけど、お互いのステージに加わって共演するってアイディアもある。もし俺らの曲で鮎川さんと一緒にやれたら、もう鮎川さんには気が済むまで延々とソロ弾いてもらいたいね。俺はそれを横でニヤニヤ眺めながら、涙流してるかもしれない(笑)。DJには大貫憲章さん、山名昇さん、CLUB SKAのメンバーが参加してくれることになった。大貫さんとも久々にご一緒出来るし、山名さんは我々がデビューする以前、それこそブラックホークに通ってた時代からよく書いてくださってた。そうやって縁のある方々がまた協力してくれるのは、嬉しいことだよね。

●来年(2015年)には、Ska Flamesが30周年を迎えます。今後の展望はありますか?。

M:来年30周年を迎えるんで、なにか出来たらいいなって思いますね。もうなんでもいいんですよ。演奏付きの飲み会でも(笑)。まあ、来年もがんばってやりたいです。なんたって、スカタライツもまだやってるしね。もしこの先、メンバーが順番に亡くなっていったとしても、俺らの息子や娘が加入していくのも面白いよね(笑)。それで古い曲を演奏してくれれば嬉しいしね。