MUSIC

JESSE ROYAL

 
   

Interview by Ichiro Suganuma Photo by EC

2015年9月にRiddimOnlineに掲載された記事です。

「Modern Day Judas」のヒットやMajor LazerのWalshy Fireによるミックステーブ「Royally Speaking」のリリースなどもあり、ルーツ・リヴァイバルの中で頭角を現してきたアーティスト、ジェシー・ロイアル。最近ではGachapanとのEP「HOPE & LOVE」が日本先行でリリースされたばかり。

石井 (以下、EC):今年のRebel SaluteとKingston Dub Clubでも会ったね。

Jesse Royal (以下、J) :そう覚えてるよ。ジャマイカにはよく来るんだね。

EC::84年から70回以上は行ってるし、90年代にはThriller U(現L.U.S.T.)のマネージメントを数年間やって6枚のアルバムと沢山のシングルをリリースしたし、友達も沢山いて大好きな国だよ。

●︎もうすぐジェシーが出る「ソウルレベル」なんだけど、いつもは日本人だけだけど、2007年の1度だけWayne Smithが出演したんだ。完全なシークレットゲストで、出演者もバンドも誰も知らなかった。

J:2007年?最近? グッドなショウだったのか?(映像をみて)ワォ!、自分の記憶とはちがうね。ドレッドにする前を覚えてるよ。バンドも彼が来るって知らされてなかったのか?女性のキーボードだね。

オカマイ:HOME GROWNはShabba Ranksとか色々なアーティストのバックもやったりしてるのよ。

●︎この年はこのまま「スレンテン」でオールキャストのラバダブ・ショウに突入、スゴかったよ。では改めて、簡単な自己紹介を。

J: St. James出身、父がMaroon、母方はOrangeでシティの外のカントリーサイドだ。父が95年くらいにモンティゴベイからキングストンに移り住んで母と自分と兄弟は97年に父のいるキングストンに移った。高校まではそこにいて、卒業してモンティゴベイに戻って農場で働いたりして、その後1年半ほどカナダの学校に行ってたんだけどうまくいかず、ジャマイカにまた戻ってきたんだ。

●︎音楽はどうやってかかわるようになったの?

J: 自分の祖母が聖歌隊のディレクターでモンティゴベイのバプティスト教会でオルガンを弾いていたから祖母と一緒に5〜6歳の頃はいつも聖歌隊の練習に行っていた。そこでたくさんの曲や音楽を学んだんだよ。母もシンガーで、今でも聖歌隊でうたっているよ。キングストンで学校に通うようになってから、Ziggy Marleyの息子のDanielと友達になって、リリースされる前のZiggyの曲を彼が歌ってくれたりして誰よりも早く聞けたんだ。だんだん音楽が好きだっていう事に気づきはじめたんだけど、最初は本気というよりは楽しみだった。ReasonとかFruity Loopsとかを使ってリズムトラックを作ってデモも録音もしたよ。ただのリビングルームでね。それが音楽キャリアの始まりかな。そうやって14、15歳ぐらいになってだんだん真剣に音楽に対しての姿勢や技術が育って、その時の経験が今はPalace Pikneyというレーベルを始める糧になっている。Danielってやつと「This Morning」のプロデューサーCurtとCrash Dummy Productionsの3人だった。
カナダから戻ってきて、人生にはやらなければいけない事があってそれをしないと幸せになれない、とそう思うようになり音楽を真剣にやるようになったんだ。Philip ‘Fatis’ Burrell(Xterminatorレーベル)の息子、Kareem ‘Remus’とはフットボールを一緒にやる仲で彼も音楽を作っていて一緒にやるようになった。その後、アンクルFatisが俺たちをフックアップしてくれて今までにない力を与えてくれた。アンクルFatisはとても素晴らしい影響を与えてくれた。2009年ごろだったかな。
 最初は従兄弟のDJ TALL UPと自分たちの曲でミックス・テープを一晩で作ったんだ。いつも録音していたから曲はたくさんあって、最初の『Misheni』と『Small Axe』の2つのミックス・テープができた。誰もチャンスをくれないし、誰も自分たちの音楽に無関心だったからとにかく聴いて欲しくて作ったんだ。ラジオで流すとかじゃなく、ただ同世代に自分たちのメッセージを伝えるにはミック・ステープを作るしかなかった。無鉄砲だったかもしれないけどそんなことは関係なかった。

●︎「Modern Day Judas」はどうやってヒットしたのですか?

J:どうやってヒット曲が生まれるのかは分からないけど、あの曲のヴァイブレーションはOverstand EntertainmentのプロデューサーWinter Jamesがくれたんだ。WinterはDamian Marleyのキーボードを担当していたりする知り合いで、ある時ライブの際にキーボードを弾いてくれたんだ。そのショウの後、すごく褒めてくれて、リズム・トラックがいくつかあるからそれで歌うように勧めてくれてその一つがRootsman Riddimだったんだ。1週間後にBig Yard Studioでレコーディングしたんだけど、こんなにヒットする楽曲になるとは思っていなかった。とても個人的なリリックで、人が優しさを弱さに捉えたり、謙遜を愚行だと思ったりするそういうところからこの曲ができている。ライブでこの曲を歌っていたら、みんなが反応し始めていつの間にかラジオでもプレイされるようになったんだ。

●︎ファンデーションのリディムで特に何か好きなのがありますか?

J:Stalag, Al CampbellのBad Boy, Answer, Taxi Gangの殆どが好きだし、Satta Massaganaだったり、本当に沢山ありすぎて一つを選ぶのは難しい。素晴らしいプロデューサー、ミュージシャンが大勢ジャマイカにいたんだ。スタジオもChannel One、Studio One,、King Tubby,、Jammy’s、それにサウンドもJaro、Stereo Marsだったり。Marcus GarveyやHaile Selassie Iなんて自分はまだその時代にそこにいなかったから更に素晴らしく思える。見たものや触れるものしか信じないが、彼らがいなくても、彼らが残したものがある。その時代の全てが興奮させてくれるからその時代にいたかったとも思うけど、できないからね。だから好きなリディムを一つは選べないよ。

●︎ラスタファリアンですか?

J:俺はラスタマンだ。ラスタファーライは我々のティーチャーだ。ラスがヘッドで、タファリがクリエーターだ。我々の上に存在する創造者の長だ。我々を導き神と地球とともに生きるように教えてくれる。原理にもとづいて、教えに正しくだ。どうやってお互いに対応するかだから宗教ではなく、スピリチャルな理解だったり、具体的な生き方だったりする。カルトとか宗教じゃない。ラスタファーライと言うんだったらラスタファーライのように生きなかったらおかしい、それだけさ。

●︎現在のシーンについて教えてください。

J:ある時期ユーツが方向性を見失って、スラックネスが氾濫していろいろ鉾びってそれの繰り返しだった。もう少しで自分たちも巻き込まれそうだった。でもコンシャスなヴァイブレーション、神聖なパワーを持ったChronixx、 Protege、Jah9、自分だったり、Kabaka、Kelissa、Keznamdiとかのユーツたちが出てきた。我々は怒ったりするのをやめ共に生き、自分たち世代が成長するんだ。下へ下へ落ちていくのではなく、”自分の兄弟を殺せ”といったら狂ってるだろ。我々の世代やユーツはいろいろ対処し、それぞれが自分たちのやるべきことをやり時間が経った時に、エネルギーがどうなっているか分かるかい?たぶん我々を一緒にさせてくれるはずだ。皆がルーツ・リヴァイバルと呼ぶようになったが、それはユーツがコンシャスな心をもっているという証だ。マイク、言葉、サウンドの力を信じているということさ。まだ始まったばかりだ。人々は色々なものにすぐに名前を付けようとするけれど、そんな名前に惑わされること無く、良心でこの国に変革をもたらしていく。真のマイクロフォン、真の食べ物、真の本、真のファンデーション、これらの全てがムーヴメントなんだ。ミュージシャンだけじゃない。皆んなだ。
 ジャマイカは混迷してはいけない。政府や政治家は若い世代をスラムから救うことができない。警察にも頼れない。だから自分たちで守り、自分たちで教育を受けて自分たちが生き延びられるようにしなければならない。すべての行動には反応があり、その反応があるところはそれを行動に変えられる。

●︎今日まで日本を廻ってどうですか?

J:ツアーは最高さ。すべてのショウがいい感じで、幾つかソールドアウトしたショウもあるしね。自分にとって初めてのアジアは、本当に目が覚めるようだ。西側(西欧諸国)の考えは、ともすれば自己完結的で、つい敬意を払うのを忘れてしまうことがあるけれど、日本ではアイデアもモラルもあり、小さくても、大きくても、普通でもお互いのリスペクトがあって驚く。文化、マナー、敬意、そして平和が実現可能だっていうことを教えてくれる。皆が共存することができるとね。自分がただ一人の黒人でもリスペクトしてくれる。ジャマイカに日本人が来て、皆と違うから敬意を払われるべきなのに払われない。でも現実は皆一緒、違わないだろ?人生のレッスンをここで受けたよ。平和の心構え、晴朗で、暴力が最初にあるんじゃないってことだ。話し合い理解することが最初にあるんだ。ライフはバランスだ。お金だけじゃない。グローバルな市民になるってことだ。皆んなが繁栄できるようにね。

●︎「HOPE & LOVE」のリリックが素晴らしいと思いました。自分に語りかけてるように感じました。

J:ありがとう。ほとんどの音楽は自分の内から生まれる。パーソナルなものなんだから、時にはそれを他と共有したくない時もある。個人的なものだからね。「HOPE & LOVE」の音はGachapanのジャマイカのオークランドのアパートで生まれた。Gachaがギターを弾いて、自分がドラムを叩いたりしてアイデアが生まれ、このプロジェクトに繋がった。確かじゃないけど、”Babylon”っていう言葉はこのEPでは使っていないと思う。このプロジェクトは彼らのためではなく、我々のためのプロジェクトなんだ。ライブで歌うと自分に問いかけているような感じがするんだ。これは本当のことを歌っている。“雨に打たれていても誰も傘を貸してくれない” Jesse Royalはいつも真実を歌う。

●︎Gachaとはどうやって一緒にやるようになったの?

J:ジャマイカで自分のショウを見に来て、ショウの後でリンクしに来てくれた。我々はお互いユーツなんだ。Panchoもそうだ。誰かと出会う時、本当に仲が良くなるといつ出会ったか分からなくなり、いつ終わるのかも分からない。Gachaはもう僕の兄弟だ。

●︎レゲエアーティストだと特に誰が好きですか?

J:Jimmy Cliff、 Bob Marley、Peter Tosh、Burning Spears、CultureのJoseph Hill、Super Cat、Yellowman、Brigadier Jerry、Early B、Buju Banton、Luciano、Sizzla Kalonji、Richie Spice、I Wayne、Chronixx、Protégé、 Jah9、Earl Chinna Smith、沢山いすぎて難しい。それぞれ違うし、ヴァイブレーションもね。でも誰かといったらCultureのJoseph Hillかな。違うエネルギーを感じるんだ。何かすごい感じがするんだ。

EC: 90年代にCultureのジャパンツアーをプロモートしたことあるな。

J:本当かい?それは観たかったなァ。DVDは無いのかい?そうか残念だな。Joseph Hill は大好きなアーティストの一人だ。魂や情熱を感じるんだ。”I’am a humble African, Passing through Babylon, I’am a humble African….” “For everywhere she see Iyah, she want money..” “Took a walk down on riverside” 全てさ。Peter ToshやBob Marleyも異なることを教えてくれるけど、Joseph Hillが一番かな。う〜ん、やっぱり一人は選べないね。

●︎9/26(土)の「SOUL REBEL 2015~逆襲~への意気込みを!

J:みんな用意はいいかい。ツアー最後の今まで見たことのない最高のショウを約束するよ。是非観に来てくれ。