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2008年2月 アーカイブ

2008年2月 5日

Pushim / I Pray

Pushim
I Pray
 
Text by Maki Kawaguchi / Photo by Takayuki Abe
 

我らがPushimが名曲「Anything For You」以来、約1年ぶりとなるニュー・チューン「I Pray」を7/5にリリース。この夏に全国津々浦々で開催される様々なビッグ・ダンスでこの曲が歌われたとたんライターが灯されるであろう必殺バラード・チューンとなった。
 
昨年8月のセレクション・アルバム『DAZZLEZ~songs of songs』リリース時のインタビューで、「次のアルバムの構想は既に出来ている。それをゆっくり形にしていきたい」と語っていたPushim。その後、彼女は「レゲエ・ジャパンスプラッシュ'06スプリング」「スプリング・グルーヴ」といった大規模なフェスに出演したり、Home GrownやBoy-Kenの作品にフィーチャリング参加するなど、ライヴ活動やフィーチャリング仕事に勤しんでいたわけだが、その間にも先述の言葉通り、自分のやりたい音楽をゆっくり丁寧に具現化していたのだろう。
 
一日でも早く新曲を聴きたいというのがファンの切ない思いでもあるが、しかし彼女には素晴らしい作品を届けてくれるという確信が常にあるし、実際彼女はそんなファンの思いを裏切ることなど今まで一切なかった。それは今回も同様。シングルとしては「Anything For You」以来1年振りとなるニュー・チューン「I Pray」も、待った甲斐のある、且つ実に説得力のある名曲となっている。
 
生のストリングスを大々的にフィーチャーしたイントロから一気に惹き込まれる本作、そのまま緩やかなサウンドに乗せてPushimは困難に負けずに前に進む大切さを、そして愛の大切さを力強く歌い上げている。巷に溢れる“バラード”とは明らかに一線を画す“厚み”は、彼女の生命力溢れる歌声だからこそ生まれるものだし、この厚みがあるからこそ、彼女の曲はずっしりと胸に響き、そして感動を生む。もちろん彼女は“クイーン・オブ・ジャパニーズ・レゲエ”と呼ぶに相応しいレゲエ・シンガーであるが、この「I Pray」に綴られた一言一言はジャンルを越えて多くのミュージック・ラヴァーの胸に響くだろうし、06年夏の忘れられない1曲として今後も多くの人に愛されること間違い無しだ。
 
また、今作が生命力に溢れた力強い作品ながらも、繊細で包容力豊かな作品となっている要因には、Pushim本人や今作のプロデューサーであるTanco(Home Grown)の力はもちろんのこと、女性エンジニア、Angela Pivaの手腕も大きいだろう。女性ならではの感覚でPushimの歌声が持つパワーをより繊細に、より魅力的に引き出しており、結果Pushimにしか作り得ない壮大且つ女性的な優しさも伴った素晴らしい“レゲエ・バラード”が完成したのである。歌声、歌詞、サウンド、すべてが有機的に作用し誕生した傑作「I Pray」、生まれながらにしてクラシックと呼ぶに相応しい作品だ。
 
この新曲に続いてすぐ5thアルバム『Sing A Song, Lighter』のリリースも控えているPushim。「I Pray」1曲だけでも身震いするほどの素晴らしさなのに、果たしてアルバムにはどれほどの名曲が詰まっているのか。考えただけでもドキドキしてしまうが、間違いなく言えるのは、アルバムでも彼女はこちらの期待を裏切ることはないということだ。
 

"I Pray"
Pushim
[Ki/oon / KSCL-994]

PANG

PANG
 
Interview by Kazuhiko "Hico" Maeda
 

「夏」「海」「恋」「友達」「ダンス」「Rela~x」。そんな陽気にさせてくれる音楽が人を元気にする。Pangが描くイメージをシンプルにレゲエのリズムに乗せた『Pang II』をリリースした彼女にインタビュー!!
 
●出来あがった感想は?
Pang(以下P):「できてよかったー!」っていうのが正直。半年位の制作期間で、出来るかなってちょっと不安な時期もあったんですよ。
 
●自分的にはどんなアルバムに仕上がりました?
P:今までのアルバムと聴き比べて、色的に「夏!」って感じ。最初から最後までバランス良く、すんなり聴ける感じだと思う。悪い意味じゃなくBGMにもなれるけど、かといってメッセージを込めてない訳じゃないし。去年のファースト・アルバムは自分自身を知ってもらいたいのがあったから「喜・怒・哀・楽」を入れてみたんだけど、より一層ポップっていうか陽気な方向に。曲の雰囲気で人を気持ち良くさせる事もできるし、ちょっとした言葉で人を元気にさせる事もできるし。もっと分かり易く楽しませたいと。
 
●成長を感じさせますね。
P:気持ち的に、2ヶ月位迷いがあった時期もあるけど、昔だったらもっと焦ってたと思う。だけど、1曲1曲作る時に焦りが無く、どこか「絶対出来るはずだ」って思えてる自分がいて。以前よりも楽に聞いてもらいたいとか、楽に伝えたいっていうのが増したかも知れませんね。それは今までちゃんと作品を出してきたから出来るんだって思ったりしたし。ライヴでも、お客さんが増えていったりする事が、自分にとって心強いんだなぁって。
 
●3月に「Japansplash」にも出演しましたね。
P:今回、マーシャ・グリフィスと色々話ができて、知らない事を教えてもらったっていうより、色んな事に気付かせてくれた。勇気とか力とか元気をもらった気がして。「間違ってないよ、その気持ちがあればいい」って。それから曲作りのペースも上がりましたね。感じた事をどんどん書いて。今出来る事を100%やるっていうのを考える事ができるようになりましたね。単純に彼等に会えた事、ステージを間近で観れた事もそうだし。フィナーレで一緒に歌って踊れた事も凄く大きかった。
 
●今回のアルバムで特に気に入ってる曲は?
P:全部ですよ(笑)。でも特にといわれると「夢心地の日曜日」も好きだし。「スカンキン・ムード」も乗れるから好きだし。「ココ夏・ビーチ」も。ラヴ・ソングだから照れるけど「フォーリン・ラヴ」も。歌詞を書く前に、自分が感じてる事に対して、ちゃんとした答を今出したいと言うのがあって。「この星の宝」も今伝えたい事がちゃんと書けたし。書きながら気付けた事もあったし。ちょっとした事で大きなものを変えられるとかっていう気持ちがあるから、普段自分はこういう事を心掛けたいとか。みんなもそうあったら、どんどん色んな事がポジティヴに変わっていくんじゃないかなって気持ちが今、凄くあって。このタイミングで書けたのが凄く良かったなって。
 
●今回アルバムを作り終えて、今後に思う事は?
P:人の思い出になったりとか、人の行動に伴う良いきっかけになる曲を作っていきたいですね。友達と話していて気付かされたんですけど。その人にとってハッピーなれる要素って生活の中にいっぱいあるのに気付いていない自分っているから、そういうのを一個一個いえたら良いなって思いますね。じゃあ、Pangがどういう時に幸せな気持ちになれるのかって。そういうのも探していけたら良いなって思いますね。それがテーマでもありますね。それから、極力笑っていたいですね。誰かにとっての存在もそうですけど、曲でも、人を笑顔にさせられたらいいなって思いますね。
 

"Pang II"
Pang
[Cutting Edge / CTCR-14431]

 

Kodama and the Dub Station Band / More

Kodama and the Dub Station Band
More
 
Text by Takeshi Miyauchi
 

1999年、一夜限りの本誌200号記念イヴェントのために結成されたThe Dub Station Band。そのリハーサル時の模様を収めた秘蔵音源を発掘した『In The Studio』が昨年リリースされたのをきっかけに、パーマネントなバンドとして新たに始動。そして、こだま和文としては実に10年ぶりの“バンド”作品となるアルバム『More』が完成した。
 
こだま和文が歌っている。昨年より活動を本格化させている自らの“バンド”=The Dub Station Bandを従え完成した、待望の新作『More』。そこに収録された一曲が、リコ・ロドリゲスを彷彿とさせるようなあたたかみのあるリラックスした歌声が聞けるネーネーズ「黄金の花」のカヴァーだ。こだまには、今、自分の声で歌うことに必然があったのだろう。
 
「声を出したくなったんだ。ずっと楽器だけでやってきたけど、それだけじゃ俺も息苦しいし、段々といいバランス考えながら(マイクを持って)声を出すことが増えてきて。すごいゆっくり進行してきたんだ(笑)。で、25年目にしてやっと歌だよ」
 
やっほー!バンドのリズム隊やドリームレッツ/川上つよしと彼のムードメイカーズで活躍する秋広真一郎ら、こだまよりも若い世代のレゲエ・ミュージシャンが集ったThe Dub Station Bandで展開されるのは、実に活き活きとしたバンド・サウンド。そのフレッシュさに呼応するように、こだまのトランペットはこれまでに以上に若々しく、まっすぐな鳴りをみせている。
 
「彼らと一緒にやっている理由……なんだろう? 一生懸命さがあるところかな。(今のメンバーよりも)達者な人たちはいっぱいいるけど、彼らにはもくろみがないし、ピュアなんだよ。彼らがピュアなぶん、自分が自分でいられるし、自分が変化していける」
 
収録された楽曲の多くはこだまにとってのスタンダードな楽曲のカヴァーや、ミュート・ビート時代のナンバーの再演がほぼ全曲を占める。
 
「1年間(バンドで)ライヴをやってきて、いいことをやってるから形に残したいと思ったんだよね。ライヴでやってきて馴染んだ曲をアルバムにするっていうのは、自然な気がするんだ」
 
精力的なライヴ活動で得た手応え。それはアルバムの“音”にも表れている。
 
「今回のアルバムは、エフェクトが少ないんだよ。ダブっていうのは、ある種の異空間を狙うもの、別の雰囲気を醸し出すものな訳だけれど、今はメンバーがいて、出している音の魅力のほうが大きい。だから、今、音を出している居場所から別な場所を見せたくないんだ。あんまり音をひん曲げたり自分の居場所をリミックスしたくないなって、そういうのを再認識した。どこにも行けねえぞって。それになんかね、幻想性とかさ、そういうのが自分に通用しなくなってきてんだよ。テレビでキツいニュースを観るにつけ、自分の身の回りで、音楽やってる人だったり知り合いだったり、今のメンバーとこういうことをやってたり……人がいて、そこで起きていることのほうが魅力あるんだ。今はそういうのを大切にしたい。演奏の善し悪しは置いといて、一人一人がやってること、そのものが一番いいなって。レコーディングをして、新しい魅力を知ったよ。俺自身も変わったよ。自分の中で、もっとナチュラルな音を出したいって思うようになったのはね」
 

"More Dub Station Band"
Kodama & The Dub Station Band
[Delphonic / GNCL-1072]

H-Man / チャンスは今日今夜

H-Man
チャンスは今日今夜
 
Interview by Naohiro Moro / Photo by Masataka Ishida
 

馬鹿3部作は、己の芸風の有効性をなぞり、確認するための旅路だったのか。H-Manが到達した境地は、語り芸としての自分のレゲエDee Jayスタイルは「それでいい」という確信だった。“レゲエ求道者” H-Manの4枚目のアルバム『チャンスは今日今夜』は、その妙にカジュアルなタイトルとは裏腹に、いや、だからこそと言うべきか、迷い無く力の抜けた、ほどよい彼のワン・アンド・オンリーな世界が展開された快作となっている。
 
● デジB黄金オケを7トラックも使用!
「そうそう。好きでしょ? ま、オレはDee Jayだから、リリックを用意するまで、って感じだね。ハナからそういうつもりだから。オレはとにかく喋りたいんだよね、韻を踏みながら。それでウケを取る。オケは、オレの話に合わせて反応するツッコミみたいなもんでさ。バンドもそうだけど。
 
デジBはさ、去年夏からライヴで“Kette Drum”のオケ使っててさ。タオル振り回してばっかじゃなくても充分気持ちいいだろ、みたいな感じでさ。それで使わしてもらおうと思って、どうせならってことで他にも借りて」
“Kette Drum”の他に、“Rope In”、“Heaven-less”、“Shine & Criss”、“Far East”、“Heavy Rock”、“Queen Of Minstrel”がアルバムでは使用されている。その他のリディムは、前作から引き続き、カールトン・マニングの甥っ子、ジョシュア・マニングやサンセット(もちろんプラチナム・サウンド)らの手による。デジBオケ曲のミックスはもちろんボビー“デジタル”ディクソン。
 
● スタイル確立の確信
「実はさ、前作はオレなりに売れてみようとか、色気を出した部分もある訳よ。コスプレもしたしさ。いいジャケだけどね、もちろんアレも。とにかくポップな感じをさ、オレなりに考えた部分もあった訳。でも全然コテコテになっちゃってたし(爆笑)。結果、セールスとか特に変わらねぇ。だからそういうんじゃねぇな、少なくともオレは。気にすべきことはそこじゃねぇ。そういうこと感じながら去年の夏はライヴやってて、より冷静にコントロールの効いたステージが出来る様になったんだよね。去年のリキッドのワンマンも何も変わらず平常心。その上、ウケを取れる確信がある。だから今回のアルバムは極端なことを言えば、オケなんてどうでもよかったんだよ。オレが拘ったのは違うとこなんだ」
 
きみまろトランスが、やっぱり「きみまろ>トランス」である様に、聴いてもらうための、ほどよいテンション、喋り声、声色、調子、毒気、そういったものそのものが、H-Manなのだ。話芸キャラとして確立されている、ということは誰でもすぐ出来るという訳ではないだろう。「H-Man>オケ」。彼のスタイルにおけるその比重は大きい。
 
● 2ヶ月
「オレが拘ったのは、テーマがあったんだよ、自分的に。オケが全部揃ってから始めて2ヶ月で終わらせる、ていう。ほら、ジャマイカのDee Jayって録るの、早いじゃん。そういうノリを試したかったんだ」
 
録音期間のことだ。全12曲、ゲスト無しの本作は、2月、3月の2ヶ月間で録音されたという。山岳修験者の山ごもりにも似た、孤独なリリック12番勝負の様な趣である。何故そこを?
「レゲエを好きな人は、それぞれ何かジャマイカを真似したりするでしょ。例えば、パトワ覚えたいとか、髪形だったり、服だったり。オレは、そのジャマイカのDee Jayの録るのが早いとこを真似したかったんだよね。Dee Jayってもしかしたらそういうものじゃねぇのかと、ふと思ったもんだから」
 
制作期間限定という制限を自ら敢えて設ける。この少し「?」な、荒行の様なレコーディングは、箕輪育久の「ヘヴン」にも似たムードすら漂わしている。きっと、彼なりの「道」なのだ。馬鹿3部作を経て、H-Manは、彼の行くレゲエ道のハイヤー・レベルの実践者となったなのだろう。実際、アルバムは難なく完成した。通して聴いても、気負った印象はド頭からしてゼロだが、本作は実は、2ヶ月間の独白の記録でもあるのだ。
 
● チャンスは今日今夜
「タイトル? タイトルはね、オケが“Heaven-less”だから。実は“Heavenless”で今回は歌うっていうのも自分の中でのひとつのテーマだったの。だからかな。意味は無いよ。そのぐらいでいいんじゃねぇのかな、って(笑)。
 
もうこれ出せばさ、ワンマンのライヴ、ノー・ゲストで90分やるのも簡単かな。ま、現場を選ばず、1万人オーヴァーのフェスから100人の小箱まで、全方位でウケを取るのが自分の仕事だと思ってるからさ。どんな場所でもそこに居る人をいい感じに出来りゃいいよね」
 
ステージ上での熱狂のただ中で、思考の片隅に冷静なマインドを保持し、彼は常に客の方を向いている。現場を湧かすのが仕事の最低限の基準。それはH-Manにとっての芸の腕の基準であり、すなわち、レゲエDee Jayの基準でもあるのだろう。
 
観客の共感する部分を突くことは、話芸の基本だろう。H-Manの話芸は、「レゲエ人」という限定されたツボに向けた、あるあるネタ的なレゲエ人の日常を、レゲエ人同士が共感出来るという、世間的には正にピン・ポイントに超マニアックなものなのだ。それでも、その分かる奴には分かる「あるある」感覚は的確且つ、面白い。そしてその演芸は、腰をくねらせ、踊りながら聞くというのが作法なのである。社会的にはきっとおかしいはずだが、日本語のダンス・ミュージックとしては機能的だし、強力だ。
 

"チャンスは今日今夜"
H-Man
[Overheat / OVE-0097]

Junior Dee / Point Break

Junior Dee
Point Break
 
Text by Hajime Oishi / Photo by Katsuyuki Maeda
 

ここ最近好調にリリースを重ねているJunior Dee。3月に発表されたミニ・アルバム『Dancehall Rock』に続いて早くも届けられた新作『Point Break』も、彼の大きな魅力のひとつである現場でのヴァイブスはそのままに、彼独特の言葉選びと遊び心が隅々まで詰まった充実作となった。本人による全曲解説を交えながら紹介しよう。
 
●意外なんですけど、フル・アルバムとしては前作『The Captain』('05年)がファーストなんですよね。シングルやミニと作り方って違うものなんですか?
Junior Dee(以下J):結構閃きで全部やっちゃってて、その時に思いついたことをやろうとしてる。それはシングルもアルバムも同じかな。
 
●リリックは書き溜めてるんですか?
J:全然書いてない(笑)。書いてないけど、毎日考えてる。いきなり降りてくる感じ(笑)。あんまり強引に書くと素直な部分が出なくなっちゃうから、基本的に波乗りの感じでやってる。無理に逆らわないで……時々逆らうけど(笑)。
 
●波乗りの経験は大きい?(註:ご存じの方も多いと思うが、彼は子供の頃からのサーフィン狂いでもある)
J:そうですね。最近はアルバムの制作で行けてなかったけど、普段はしょっちゅう行ってます。夜の世界は波乗りの時とは全然違うけど、両方楽しいからね。
 
●今回はPoint Breakというレーベルを立ち上げてのリリースという形になっていますが。
J:これからこのレーベルを少しずつ進めていこうと思っててね。もちろん(前作をリリースした)爆音Syndicateとは今までと同じ繋がりのなかで、自分のことをもっとやっていこうかなと。……ホント遅いんだけどね(笑)。
 
●そういう意味合いを込めて、このタイトル?
J:うん。サーフィン用語で、そこからしか崩れない波のこと。なんか音楽と重なるなと思ってね。
 
●じゃあ、簡単に各曲の解説をお願いできますか。
J:OK、なんでも訊いてよ。
 
●まず「Irie」。オープニングらしい突き抜けた感じの曲ですね。
J:レゲエ好きなら誰でも知ってる言葉だと思うんだけど、そのままの感じの気持ちいい曲だね。それこそ海に行く時にいいんじゃない?
 
●2曲目の「ドドンパ」。
J:これはリメイクのトラックなんだけど、今回気付いたらリメイクが多くて。“ドドンパってどういう意味だろう?”って辞書を引いたんだけど、書いてないんだよ(笑)。富士急ハイランドに“ドドンパ”ってあるでしょ、そんな感じで突っ込んでいくような……。
 
●「Everything From Street」。
J:情報が溢れてるなかで、道を歩いていろんなものを見たほうが大事だろう、と。“ストリートを見つめ直そうよ”ってところかな。
 
●「アチチ」。ちょっとソカっぽいテイストですね。
J:これはね、ラバダブで遊んでた時に“アチチ!”っていうフレーズが出てきて、ムチャクチャ盛り上がっちゃって。“これは1曲出来んな”と思ってね(笑)。Kon Kenが“Cherry O Baby”を使ってトラックを作ってくれたんだけど、皆ビックリするんじゃないかな。
 
●子供の声を使ったスキットを挟んで「Sweet Reggae」。
J:これは野外ダンスで歌ってる時のことを思い浮かべて作った。音が遠くまで響き渡ってるその空気感を出したくてね。
 
●次もいいですね、ラヴァーズっぽい「伊豆半島」。
J:初めてこういう歌を作ったんだよね。友達にも“意外なんだけど、妙にハマってんだよな”とか言われて(笑)。自分のなかでも新しい世界に一歩踏み入れた気はしてる。僕のハードコアなラバダブの部分が好きな人には意外な曲かもしれないけど。
 
●Ken-Uとの「目には手には」は?
J:意外な人とコンビネーションをやりたくて、僕からKen-Uを誘った。いい感じですね、彼は。一緒に曲を作って思ったんだけど、出てくる言葉とか表現がすごく繊細。人と違う言葉使いをするし、だから人気が出たんじゃないかな。
 
●この曲と同リディムの「Sensi Love」。
J:これは女をセンシに例えて作ったんけど、よく聴かないとわかんないかも。この曲は夜の感じかな。前半が昼間だとしたらね。
 
●タイトルからしてズバリな「Mighty Raggamuffin」。
J:思いっきりラガマフィン賛歌ですね。レゲエを聴き始めた時、最初に覚えた言葉が“ラガマフィン”だったんだけど、その頃からかっこいいイメージがあって。ルードボーイとは違う、もっと硬派な感じ。ここ最近、俺の周りではみんな“やっぱラガマフィンだよね”って言い始めててね。
 
●Captain-C制作のスキットを挟んで「Leagal Shot」。
J:これはライヴを意識して作った曲。“心の銃をブッ放そうぜ”っていう。敬意の銃をね。これはSami-Tにダンスホールのトラックを作ってもらった。
 
●Bongmanをフィーチャーした「いい湯」。ここでまた雰囲気が変わりますね。
J:前の曲でダンスから帰ってきて、この曲で風呂に入って……(笑)。ジャパニーズ・オリジナルと言えば味噌汁か風呂か、だから(笑)。
 
●最後は「Wave Song」。前曲で風呂に入った後は…。
J:浜辺に行って語り合う、と。最後だけね、レゲエにしないで静かな曲調でシメてみた。……そっか、そう考えると1日の流れに沿った形になってんだ。
 
●(笑)意図してなかったんですか?
J:うん、自然にそうなってた感じ。こうやって並べてみると、前作と違う雰囲気になったんじゃないかな。
 
●今回のアルバムで伝えたかったことは?
J:レゲエって革命の音楽だったりもするけど、楽しい音楽でもあると思う。そのなかに“楽しく行こうよ”っていう自分のメッセージを入れつつ。それは自分の生き方にも通じるものかもしれないね。やっぱり、楽しいなかに意味があると思うから。
 
●じゃあ、最後に読者に対してメッセージを。
J:作品を作るのも好きなんですけど、僕はライヴが一番好きだし、一番自分を表現できるので、ぜひ遊びに来てほしいです。よろしく!
 

"Point Break"
Junior Dee
[Nobrand / Point Break / NBCDG-1022]



"Dancehall Rock"
Junior Dee
[Nobrand / 爆音Syndicate / BSCD-009]

Mighty Crown

Mighty Crown
 
Interview by Naohiro Moro / Photo by iGa-C
 

ついにこの夏、横浜スタジアムに乗り込み、前人未到の3万人集客を目指す“The Far East Ruler”マイティー・クラウン。超多忙なスケジュールをこなしながら、強靭な意思で15周年アニヴァーサル・イヤーの準備を着々と進めている彼等に話を聞いた。
 
● 15周年、あっと言う間だよね。
Sami-T:そうだね。あれヤッベー歳を食っちゃてるよ、っていうヴァイブスに襲われてるね(笑)。
 
● ここまで来るのに何かヴィジョンみたいなものはあったの?
Sami-T:そういうのは無いよ。ひたすらがむしゃら。とにかく毎回絶対ショウをカマシテやろうっていうのがあったから。
Cojie:そうやって来て、結果はそれに付いてきたものかな。
Masta Simon:常に目標を設定してやってるっていうのはあるね。今回はこれをクリアしていこうって。最初はみんな夢みたいなことを言う訳。でもそれが面白そうだと思えば実現するために真剣にみんなで考える。全員が意見を出すし、それを取り入れていこうっていう姿勢はあるよね。
 
●クラウンは結成の頃からチームとしての意思統一が他とは比べものにならないぐらい出来てたんじゃないかと思うんだ。
Masta Simon:それはあるね。小さなことでも目標が出来たら全員がそっちを向くっていうのはあるね。いいチームに恵まれたっていうのはでかいよ。
Sami-T:わがままな連中の集まりだってことじゃあ、ウチは日本一だと思うよ。でもそれをうまくバランス取ってやれてきてるね。
 
●早い段階から裏方さんたちにも恵まれてたよね。小さいハコでやってる頃から、バーも物販もセキュリティも、全部自前のスタッフでやってたでしょ。
Masta Simon:凄くでかいね、それは。地元の人たちでさ、金とかじゃなくてさ、気持ちで手伝ってくれるっていう人が沢山いたからね。スタッフには本当、感謝だよ。
 
●長い間やってる連中は他にも居ると言えば居る中で、でも正直言って、クラウンだけがズバ抜けた成果というか、実績を残してる訳でしょ。それは何なんだろうね。何がその原動力なんだろうね?
Sami-T:まあ、負けず嫌いは負けず嫌いなんだけどね。クラブ24みたいな150人とかそういうところから始めたから、取り敢えず倍にしていこう、みたいな。それを達成出来たら、次は1,000人を目指そう、それの繰り返しだね。
Masta Simon:原動力。何なんだろうね。やっぱ続けてるうちに人も増えて来たし、期待に応えたいっていうのもあるし。確かに常に「上を行ってやろう」って気持ちはあったよね。
Sami-T:何年か前まではオレらが雑誌の連中とかに頭下げて「これからレゲエは凄くなるよ」なんてこと言っても、全然取り上げてもくれなかった訳じゃん。「ちっきしょう、ゼッテー振り向かせてやる」ていう気持ちはあったよ。
 
●海外でやるのも最初から真剣に考えてたでしょ?
Sami-T:やっぱ最初は1本のカセット・テープから始まった世界で、何にも分からなかった訳じゃん。それで始めてNY行った時に喰らった衝撃っていうか、「うわ、こいつらの土俵で凄えヤリテェ!」ってのはあったね、その頃から。そういうハングリーな気持ちがあったから、レコード・ケース1つでブルックリンのアンダーグラウンドみたいなとこにいきなり行って「やらせてくんねぇ?」みたいな。それが今に繋がったっていうか、やり続けてきてよかったな、て思うよ。
Super G:サミーが海外修行で、向こうでやってくために必要なことを、しっかり理解して来たのはでかいよ。オレもそれで教わったことがすごくでかいし。
 
●そんなこんなのアニヴァーサル・イヤーなんだけど、2月の「ワールド・コネクション」、5月の「サウンド・セッション」があって。
Masta Simon:7/1にライフ・スタイルのリリース・パーティがあって、
「Road Toレゲエ祭」、それで「横浜レゲエ祭」をスタジアムで。イベントはそんな感じ。リリースだと5月にライフ・スタイルのコンピの2出して、ファイヤー・B、パパ・Bもシングル出して、アルバムも出して、その後、秋か冬頃に、オレらのミックス音源が海外から出るかも、って感じかな。
 
●「レゲエ祭」、いよいよ横浜スタジアム。気になる内容なんだけど……。
Sami-T:公式発表以外のことは、当日まで一切秘密。来た奴にしか分かんないよ、何が起こるかは。
Masta Simon:みんなが気にしてるマル秘の部分は、それはそれで楽しみしてて欲しいんだけど、今言っておきたいことは、あくまでそれは今年の「レゲエ祭」のプラス・アルファの要素でしかないってことだね。本当の仕掛けはその見せ方(=演出)にあるってこと。それはどこのフェスとも絶対違うはず。とにかくそれだけは言えるね。6/10、チケット一斉発売だから、今年は去年より1万人分見れるチャンスが増えたから、みんながんばってチケット取って下さい。
Sami-T:ホント来た奴にしか分かんねーぞ! 楽しみにしてろよ!(詳細はyokohamareggaesai.comへ)
 
 
HISTORY OF MIGHTY CROWN FAR EAST RULAZ

【1991年】ラバダブ・セットとしてMighty Crown結成。DJはMasta Simon、 Sami-T、 Sticko (Truthful)、 Criss、Jun 4 Shot。拠点はCR、ジーン・ジニー等。
 
【1992年】大阪Cat FishでEarth Quake(現Rock Desire)とクラッシュ。当時NYでプレイしていたCojieとSamiが知り合う。Nico Demusのダブを初録音。
 
【1993年】SimonとSami、初めてジャマイカに。Samiがブルックリンで初プレイ。
 
【1994年】SimonはMCに専念し始め、スピーカー制作や海外での活動もスタート。サウンドとしての活動が本格化。
 
【1995年】 芝浦Gold、新宿Kingston Club等に進出。スピーカー完成(辻堂でBrain Busterとのクラッシュで初披露)。横浜Club24で「横浜Reggae Bash」(横浜レゲエ祭)スタート。
 
【1996年】大阪Bay Side JennyにてTerminator、Rock Desire、Judgementとクラッシュ。
 
【1997年】3月、ボストンでLegacyとクラッシュ。Cojie正式に加入。四国・九州にて「火と拳」ツアー敢行。
 
【1998年】Jammy's音源のMix CD『Boom Boom Ragga Bass Vol.3』(アルファ・エンタープライズ)をリリース。4/27、東京YellowでTaxi Hi-Fiとクラッシュに勝利。12/28、大阪ベイサイド・ジェニーでTaxi Hi-Fi、Tokiwaとのクラッシュ「頂点」で勝利。 この年より「横浜レゲエ祭」をHeavenに移す。
 
【1999年】Digital-B音源のMix CD『Mighty Crown meets Digital-B』(オーバーヒート)リリース。リリース記念イベントにも盛況。Bounty Killer横浜・大阪公演に出演。 CoxsoneとDown Beatと対した「Vintage Clash」で優勝。10月、NYでの「World Clash '99」で優勝。カセット・アルバム『Life Style』リリース。12/17、Riddim 200号記念イベントとして「Might Crown meets Judgement」出演。
 
【2000年】ジャマイカの「Death in the Arena」でDavid Rodiganとクラッシュし勝利。「World Clash in Jamaica」「Warlords」「World Clash 2000」等に出演。Captain-C加入。『横浜レゲエ祭2000』ビデオ・リリース。MoominのMix CD『Triple M』(Neo Site)、『Mighty Crown Tribute to Volcano』(ビクター)制作。
 
【2001年】Life Styleレーベル始動。Super-G加入。5月「10周年」イベント開催。「World Clash 2001」で実質的な優勝。Mixテープ「Crown Foudation Mix」「Crown Jugglers」、Mix CD『Dancehall Ruler 2001』(ビクター)をリリース。
 
【2002年】ヨーロッパ・ツアー。4月、ロンドンにて「UK Cup」、12月、NYにて「Global Cup」に出演し共に優勝。Fire Ballの1stアルバム『火の玉』をプロデュース。「Jamaica World Clash」出場。「World Connection」スタート。 Vol.1はT.O.K.を、 Vol.2にはTony Matterhorn、King Agonyを招聘。Mixテープ『Crown Jugglers 2』とそのリミックス版CD『The Next Dimention』、Mix CD『Spice Of Love』(ビクター)をリリース。Mad Capsule Market、ラッパ我リヤ、Back Drop Bomb等の楽曲をプロデュース。
 
【2003年】3月、「World Connection Vol.3」にて Jazzy-Tを招聘(横浜、大阪、沖縄)。3/21、NYでStone Love、Bass Odysseyとクラッシュ。4月、「UK Cup」出場。5/31、川崎Club Cittaで12周年記念ダンス開催。「横浜レゲエ祭」を初の野外で開催し1万人動員。Papa-BがMighty Crown Campに加入。Nine Rulazスタート。Zeebra「Big Big Money」のリミックス。Mix CD『Crown Jugglers 3』リリース。
 
【2004年】「World Connection vol.4」に Elephant Manを招聘。Mighty Crown Family名義で「Dancehall Fiesta~レゲエ祭のテーマ」をリリース。「横浜レゲエ祭」2万人動員。「 World Clash」出場。
 
【2005年】6月「World Connection vol.5」にてAdonai招聘。6月「横浜レゲエ祭」2万人動員。ヨーロッパ、ジャメイカ・ツアー。「UK Cup」と「World Clash Antigua」で優勝。「World Clash Canada」に出場。
 
【2006年】結成15周年イベントとして3月 Capleton招聘。5月「International Sound Session」開催。『Life Style Compilation Vol.2』(EMI)リリース。8/5「横浜レゲエ祭」を横浜スタジアムにて開催決定。

Rico Rodriguez / Japa-Rico

Rico Rodriguez
Japa-Rico
 
Text by Noboru Yamana / Photo by Sho Kikuchi
 

ゴールデン・ウィーク直前、トロンボーン奏者リコ・ロドリゲスが来日し自身のトリビュート・アルバムを日本人の名うてのミュージシャン達と制作中という情報が入った。さっそくリコと付き合いの長いライター、山名昇に品川の某スタジオに向かってもらった。
 
【4月24日(月)晴れ、22℃】
先週会ったスクービー・ドゥのメンバーが、リコのレコーディングの本番が今日だと、メール&地図まで送ってくれたので、出掛ける。モノレールの大井競馬場で降りて、「湾岸音響」へ。途中、山の手線が動かなくて、各駅停車に変更された京浜東北使用。暑い。
 
リコはまだ来てなかったが、顔見知りばかりのスタッフらと話す。今回の企画は、リコ本人が参加するリコへのトリビュート。いつしか彼は、十分「親日家」と呼べるようになったし、来日回数を重ねた彼への日本サイド(ミュージシャンもファンも)からの暖かい気持ちは、まだ続いているのだ。参加アーティストたちは、既にオケを録り終え、そのバックトラックのCDRを携えてクーボが渡英。打ち合わせの中で、これは演りたくない、とか、キーを下げてとか、テンポを落として、とかの注文がリコから出たのかと言えば、実は全てOKだったらしい。歌う曲に◎印、トロンボーンを吹く曲に○印が付いた「表」を、クーボが持ち帰った。
 
そうこうするうちにリコ登場。運転手役がアルファ・エンタープライズ小林さん。小林さんとも久し振りだ。リコは相変わらずyamanaと発音出来ないが、yomogiかなんか言われて、ハグする。カメラマンの菊地さんが「後で(また)二人の写真撮ってあげるよ」と言ってくれて、それは嬉しかったが、ハグといい、二人だけの写真といい、僕と付き合いの浅いスクービーのメンバーは、僕がどうしてそこまでリコと仲がいいのか、不思議に思ったかも。
 
スクービーが選んだのはスペシャルズの「Enjoy Yourself」。なるほど。まずリコの歌を被せ、その後、トロンボーンにも挑戦。挑戦、というのは失礼だが、最初はやや危なっかしかった。ま、最終的にはOKテイクが出来たけれど。このペースで1日2曲仕上げていくそうだ。だんだん調子が上がっていくのならいいが。今日の後半のズート16のメンバーが集まったところで、退散。まだ電車が動いてないらしく、スクビのリーダーの車で渋谷へ。他のメンバーと下北沢に移動、最後は小砂利まで。W杯話題など、酔った。
 
書き忘れるところだったが、1昨年夏の『Warrika Dub』をリコに渡す。彼がこれを持っていないのは、とっくの昔に確認済みだったが、手放したのか、リアルタイムでも持っていなかったのかは不明だったのだ。正解は後者。「ダブ・プレートは持ってたけど」とのこと。当然ながらリミックス・エンジニアについて知る由もなく、「お前知らないのか? 教えてくれよ」と言われる。

【5月1日(月)晴れ、29℃】
また月曜にモノレール~湾岸音響へ。今日は何が特別かと言えば、「Man From Wareika」だけは、バックのオケから録るからなのだ。クーボ仕切りで集められた「名うての」メンバーは余裕の演奏。でもスタジオ・ミュージシャンがレゲエも演ってますぜ、という感じは全くない。そう、「レガエ」の時代から30年経ったのだ。こんな深みのある演奏が出来るミュージシャンは、ジャマイカにももういまい。
 
リズムを録っている間、リコはインタヴューを受けている。話を聞いているのはCool Wise Menの連中。彼らのレコーディングは終っていて、4日からのリコのミニ・ツアーのバッキングの方が気掛かりな様子。「マネージメントから曲のリストのファックスもらいましてね。18曲練習しとけ、って意味なんですよ。毎晩そんなに演るんすかね?」って、オレに聞くなっつーの。
 
リズムが仕上がる頃には三々五々、「上物」のホーン隊が到着。リコを入れて5本のトロンボーンというFour Freshmenばりのカッコ付けに、加えることテナー、アルト、トランペット、計8管の贅沢ぅ! こちらの仕切りはスカパラの北原で、アレンジを譜面に起こして持参するという念の入れよう。自分のことみたいに嬉しかったので彼に断ってそのコピーをもらった。
 
最終日なので「乾杯」もあり、まるでご褒美のように全曲のCDR(ミックスダウン前)をもらって、小林車に便乗、リコをホテルに降ろし、自宅まで送ってもらう。メルシー。
 
【5月2日(火)小雨、21℃】<>/b
鮎川誠さんの誕生日~リコとCWMのリハのはず。時間が合わず見に行けない。鮎川家から歩いてリコのホテルのフロントに「御土産」だけ預けに行く。
 
【5月3日(祝)晴れ、18℃】
リコにタンタンも加わって、Down Beat Rulerのステージに立ってる時刻、オレは新宿オープンでDJ開始。DBR帰りにこちらに流れてくれた人もたくさんいたのに、皆に「リコどうだった?」と聞いても、酔っ払いばかりで話になんねえ、っタクもぅ。
 
【5月7日(日)小雨、20℃】
バスで吉祥寺に着くと、駅前ロータリーでS・バッパーズが演奏中! 相当後ろ髪引かれるも、井の頭線乗車。座っているとこんどは「よう!」と複数の若い衆にカラまれる。というのは嘘で練習明けのL・テンポの何人かがリコのライヴ@Eggmanに行くところだった。一緒に行動する。で、リコは20分ぐらいも演るかな、と思っていたら、なんのなんの2時間演ったんだ! 件の「リスト」18曲全部演ったかも。スペシャルズ、バッド・マナーズ、ジャズ・ジャマイカ、スカタライツと来日しても、『ワレイカ』の曲はプレイ出来ない。それが可能なのは日本のミュージシャンを従えた時だけ。これまでは、随分前に確かイエローで、デタミのギターの人が仕切ったグループをバックにした時だけだった。今日が2度目。故に、リコ、ニコニコ。
 
単独でパブに移動、プレミア最終戦、VS. ハマーズ観戦。がボコボコにされる。後でホテルの食事にガナーズの回し者が毒を盛ったとわかる。クソ! 機嫌が悪い、というより、泣きたいが、我慢してリコの「アフター・パーティー」@ウダラバに。藤井悟に5/3のギャラを支払う。で、とっくに帰っているんだろうと思ってたリコ本人もまだいるじゃん! ファンたちに囲まれて、またニコニコ(少々スパスパ)。2時過ぎ、小林車でホテルへ。道中、リコのこれまでの in Japanにまつわる冗談連発←オレが。これが最後になりませんように。love。
 

"Japa-Rico~Rico Rodriguez meets Japan"
V.A.
[Sony / AICL-1753]


【参加アーティスト】
東京スカパラダイスオーケストラ、川上つよしと彼のムードメーカーズ、スクービードゥー、こだま和文、Afra & Incredible Beatbox Band feat. Tucker、マイスティース、Cool Wise Men、Zoot16、オレスカバンド、Dubsensemania、Skaymaite's、Jungle Roots Band feat. Fire Ball、Special Band feat. Rico, Nabe, 増井, 北原 & ヒロシ

Rub-A-Dub Market / 僕たちまだまだSeason Of The Witch

Rub-A-Dub Market
僕たちまだまだSeason Of The Witch
 
Text by Hiroshi Egaitsu / Photo by Pak Ok Sun
 

Rub-A-Dub Marketの新作『Extra Standard』が素晴らしい。そして、その周りを巡ると、色々刺激的な人間がいることに気がつく。オルガン・バーのパーティ"Real Step"に集まる連中とか、Ska Flamesのライヴで見かける顔とか。“青山レゲエ”とか呼んでみる? 4、5年前、あの辺りでみんなよく朝まで騒いでたから。
 
マイケル/おい、急いでくれよ、そのブツを持ってさ。マイケルが車に乗る。もう1人の男が後部座席に座っている。彼もいい身なりをしている。マイケルは小さなレンズをポケットから出して、男に渡す。男/何だ、こりゃ?またクズか? マイケル/違うよ、クズじゃない。それはドイツ製のレンズだぜ。男は注意深く見ている マイケル/いい買い物だよ……船積みが2つあるんだ 男/使えないな マイケル/何言っているんだ?テレスコープ用のやつだぜ、いい代物だよ。男/まず、これはドイツ製じゃない……日本製だ……第2に、これはレンズじゃない、これは??アダプターだ。つまり、お前は船積み2つのジャップ・アダプターをレンズ無しで持ってるってことになるな(彼は笑う) 男はアダプターをマイケルに返す マイケル(失望して)ジャップのアダプター?(『Mean Streets』ファースト・ドラフトより)
 
「すべて手探り。こういう音楽をやろうとか、“パンク・ロック”をやろうって、それに近づけていくんじゃなくて、自分たちでやろうとしている音楽も(曲が)出来るまで自分たちでも分からない、っていうか」(MAL from Rub-A-Dub Market)
青山から新宿にかけて走るヴァンの後部座席にはZoot16の渡辺俊美が手足を伸ばし、繰り返し、前の座席に声をかけている。
 
「あいつ、図体がデカイだけでしょ、やっちゃっていいかな?」渡辺俊美が酔っていること、本気でないことは分かっているので、助手席に座っているZoot16のベース・プレイヤー、Shjは適当に生返事をしている。Shjは、プリンス・バスターが初来日した時、“ソルジャーだな、お前は”って言われてる、そういえば。花園神社に着くまでに、あと10分。同乗してるKatchin(Dog Day Afternoon)もYossy(Club Ska)もまだ酔っていない。この2人は、細かく道をドライヴァーに指示する。夜の取り締まりと、道の混雑具合をよく知っている。車に乗っている全員はSka Flamesのライヴを今夜見たかえりで、そのまま家に帰りたくないのだ。
 
DJの藤井悟が西麻布にあったクラブP/Picassoで“パワー・ハウス”というレゲエ・パーティを始めた辺りまで遡れるのだろうか? 1980年代初めからSka Flamesのライヴに行ってはモッシュしていた松岡徹は、(現U.F.O.の)矢部直と85年にはTool's Barで、スタジオ1のスカや、初期のボブ・マーリィ、リズム&ブルースに“ちょっとすかしてジャズ”をかけたりしていたが、その後藤井悟とピカソでプレイを始める。
 
「別にサブ・カルチャーとか、アンダーグラウンドとか、斜に構えるつもりもまったくないですし、パーティしたい、踊りたい、っていうのがコンセプトで」(MAL)
 
その頃の常連の客に今Inkをやっている川辺ヒロシがいて、当時プエルトリカンみたいなハットをいつも被っていた。ちなみに、川辺ヒロシは絶対自分では電話をかけない。誰が他の人間がかけるのだ。また、複数の人間に同時に話はしない。必ず1対1が原則だ。
 
こうして、同じクラブのDJだったり、客だったり、違うクラブのDJでも、通りが一つ違うだけだったり、自分がDJではない時遊びに行ったりして、好きな音楽が似ている人間が少しずつ集めるようになっていった。
 
「基本的にダンスホールが入り口。“スレンテン”とか、ダミ声のDJとか」(MAL)
 
同じ時期のダンス・ホールに魅せられた人間にSly Mongooseを率いる笹沼位吉がいる。彼は今回のRub-A-Dub Marketのアルバムにも参加しているし、渡辺俊美も「Fade Away」を歌っている。“青山レゲエ”という名前は冗談としても、何かに近づくのではなく、自分に近づくための音楽を作る人間が集まっているのは確かだ。
 
花園神社で誰かが全裸で走っていた。“ポリス・オン・マイ・バック”てな勢いで。
 
【俺たちまだまだSEASON OF THE WITCHな気分のアルバム4選】
Selected by 荏開津広

"Extra Standard"
Rub-A-Dub Market
[Part 2 Style / BHCR-18001]
1曲目から、すかっとする快作。ここまでくるには、代官山と青山で過ごした時間は無駄じゃなかった!



"Triple Barre"
Tokyo No.1 Soul Set
[BMG / BVCR-8804]
そろそろぶっちゃけてもいいと思いますが、「アルマゲドン・タイム」のこのチョップはやっぱり凄いでしょ。



"Zoot16"
Zoot16
[Zoot Sunrise / ZT-0003 ]
そろそろ最高傑作、3枚目が登場するZoot 16。この種のバンドとしてそのアップデート感はB.A.Dか。



"Tip Of The Tongue State"
Sly Mongoose
[Locarno / LCN-0015]
レゲエにおおいに影響されながらも、それを自分たち流に消化するバンド。さあ、次はヴォーカルだ!

2008年2月 6日

1★狂

1★狂
 
Interview by Masaaki okino
 

このエロさ満開中年男衆の悶絶発散の場、一☆狂(イチバンボシクルー)が6/21に2ndアルバム『一☆狂2』を発売。その秘密を探る為にセッティングされたマニー・マークも舌鼓をうったタコヤキ・パーティでの一☆狂語録也。
 
一☆狂はイラストレーターの2-Yang(Sampler&Vo.)、ダブ・バンドSoul FireのWo-Chang(Gt.&Vo.)、ハードコアなDeath Surf 2000のTakami(Gt.)、Tet-Chin(Synth.)、謎のベーシストKunikichi、そして元Bush Of GhostsのBun Bun(Dr.)という恐ろしい集団。なのになぜか外国人さんも踊りまくり、子どもは駆け回り、時にステージでサンプラーとマイクで煽動し、キ○タクの出たCMに曲が使われたり全くもって意味不明のバンドである。
 
2-Yang:99年、僕とタカミくんとウーチャンの3人でサンプラー2台とギター、普通のレコードプレイヤーとMTRを使って始めた。サウンドシステムの馬力でズッコケるような音楽やったらオモロイかなて、ほんまは本気でカッコエエと思てたけど。いざやってみたらこんなんで。
 
Bun Bun:(客として)ライヴを観て、演歌にJammy'sのリズム乗せたりしてるのを観てショック受けて。で、飛び入りでDJしてるうちに加入してドラムも叩くようになった。で、ウーチャンがクニキッチャンをナンパしてきて、Death Surf 2000のTet-Chinが入って現メンバーになった。CDは音合わせの時から練習を録り溜めたのを編集して。02年の1st CD(『一☆狂』)には分担で1人50枚ノルマのオマケを入れた。Tet-Chinはその頃、うどんとかに付いてる七味を集めてたのを入れた。他には煮干しや干しエビとか自転車撤去の領収書、手書きのパックマン等。その後emレコードから7"「かんにんして」を出した。
 
Takami:練習も延々とセッションやから全然憶えてない。後からCD聞いて「これ、俺かな?」とか「これ誰?」て訊いたら一☆狂のCDやったり。基本的に自分さえよかったらエエわて皆思ってる。
 
2-Yang:6人集まる事自体が嬉しくてその時点でライヴ終了みたいなもん。リハで完全燃焼。「あの曲良かったね」とか言われてもそんな曲やったのか憶えてない。延々ガーてやって気持ちよくなる寸前のイキそうな瞬間が好き。クニキッチャンはスピーカーに登ったり遠く眺めたり、Tet-Chinは皆汗かいて必死でやってるのに後ろで煙草ふかしながらニヤってデジカメ録ってたり。そういう意味ではウチは実はオトナの集まりかも。対外的には無責任やけど、自分らが好きな事する分にはそれぞれ責任持って人の自由は束縛せえへん。他の人が演ってる事はどうでもよくて自分の好きな事してるだけやから、メンバー間で音楽的な衝突が起こる事がない。
演歌なのかサンプリングなのか?というより「どっきりカメラ」。ピンサロとパチンコ屋の間から聞こえてくる音楽に「ワァ!」って、そんな肌触り。バリのバッタもんのトランスや、テープしか出回ってないイギリス在住インド人が作ったガラージとジャングルの間みたいな、そんな市民権のない音楽が好き。あと宇宙バイキンみたいな音が好きかな。日本橋で50円位で買った演歌を家で聞いて泣いてる奴のために国産の「けったいな音楽」を道端に落ちてる物で作りたいという運動の一環が一☆狂。
 
Bun Bun:新作の曲名は飯食べてる時、2-Yangに「そろそろ曲名考えなあかん」って言うたら店のメニュー見て決めた全19曲各420円。

2-Yang:『Ultimate Breakbeats』みたいでカッコエエかなて。

以下、モテたい、海水浴、世界征服、ポジティヴ・パンク。月亭可朝と共演、できるだけ息を止めて聴いてください、次回もこういうイヤラシイ絵を描きたい…等々、カオティックヤードコアな酔っぱらいトークのため残念ながら割愛… 。
 

"一★狂2"
一★狂
[UFO / UFO-003]

Cool Wise Men / Salty Dinner

Cool Wise Men
 
Interview by Takeshi Miyauchi
 

前作『Unity』で懐の深さを示したクール・ワイズ・メンが6/10、待望のサード・アルバム『Salty Dinner』をリリースする。前作とは打って変わってスカ・ミュージックのど真ん中を突いた痛快な作品となった。
 
まずは旬な話から。この春、再来日を果たしたリヴィング・レジェンド=リコ・ロドリゲスのサポートを、我らがクール・ワイズ・メンが無事務め上げたことについて。全国4ヶ所でのツアーでは毎回セットリストを変えただけではなく、予定されていなかった楽曲も急遽セッションで追加されたりとハプニングもあったようだが、それもリコがワイズ・メンの実力を認めたことの証。そして、ワイズ・メンにとっても今回の共演で、バンドの持つ、底しれないポテンシャルがグイっと引き出されたようだ。
 
「最初、リコのバックをやるっていうのでもらった曲をキチッと覚えなきゃいけないんじゃないか?とか、そういうことばっか気にしてたけど、『お前らもっと楽しめ、リラックスしないといい音楽が生まれてこないんだぞ』って。初日こそ演奏も崩れかけたんだけど、二日目を無事に終えたときに『ここまで立て直した彼らを抱きしめてやりたい』って言ってくれて、その次はまたよくなって……そうしてリコが俺らをどんどん信頼してくれてきてるのがわかった」(篠田)
 
スカ~ルーツ・レゲエはもちろん、グッとジャズに寄ったアプローチまで、リコの音楽性の奥深さに柔軟に対応できるのは、ワイズ・メンがもっとも適任だったのは、最終日の東京のライヴでもしっかり証明されていた。
 
で、だ。その大仕事を成し遂げられたのは昨年5月にリリースされたダンスホール・レゲエからカリブ、ファンクまで多彩なゲスト陣とのコラボレーションによって生まれたコンセプト・ミニ・アルバム『ユニティ』と、ド直球にスカと向かい合った待望の3枚目となるニュー・アルバム『ソルティ・ディナー』という毛色の違う2作を通過したことが大きいと思うのだ。
 
「わりとヴァラエティに富んでいた『ユニティ』に対して、シンプルに、原点へ帰ったような……それも自然な感じなんですよね」(浜田)
 「奥のほうに閉まっていたスカの7インチが、なんか聴きたくなっちゃったんだよね」(土川)
 
日本のシーンのなかで、ワイズ・メンほどレゲエ全般に深くコミットした活動を展開しているスカ・バンドはないと思うのだが、これまでの彼らの作品がさまざまな音楽を呑み込む、スカの貪欲さを前面に打ち出してきたのに対して、そこを追究したことでやっぱり見えてきたスカの揺るぎようのない“核”の部分を、『ソルティ・ディナー』は至極シンプルな味付けで供してくれる。素材の魅力を最大限に引き出した内田直之のミックスとも、素晴らしい相性をみせている。
 
「以前は垣根を取り払って聴いてもらいたいって言ってたけど、今はそのままを受け止めてほしいっていうか。『リディム』を読んでるような人のなかでは特殊な音楽かもしれないけど、俺ら、こういうバンドなんで(笑)」(篠田)
 

"Salty Dinner"
Cool Wise Men
[Or Glory / Galactic / GLOR-0018]

Twigy / Twig

Twigy
Twig
 
Text by Hiroshi Egaitsu
 

ラップを初めて20年という歳月が経ったTwigyがソロとしては3年半ぶりとなるアルバム『Twig』をリリース。タイトル通り、日本語ラップの「真実」、そしてもちろんこの社会の「真実」を射抜く言葉の洪水。ただ本作であっても天才によるひとつの通過点に過ぎない。
 
1988年にTwigyはDJ HazuとBeatkicksとして活動を開始した、と書いても、今の読者には、当時、若い人間がヒップホップ・ユニットを組むということがいかに冒険に満ちたものであったか、想像するのは難しいだろう。
 
TVにヒップホップの情報はなかったし、あってもほとんどがさらっと流されている情報だったりした。もちろん、ランD.M.C.が来日した時タモリの番組には出ていて、ラップを披露していたり、とんねるず(コメディアン)がホストをつとめていた深夜番組でブレイク・ダンスのコーナーが1980年代半ばにはあったりした。だが、そういうことと、真剣にヒップホップを追求していく、自分の人生をヒップホップに賭ける、というのは、またまったく別の話だ。
 
この時期は日本のヒップホップにとって多くのことが起きていた時代で、その後。ライムスターの宇多丸師匠の言う、いわゆる『日本のヒップホップ暗黒時代』が来る。この暗黒時代に何も起きていなかった訳ではない。逆に、ユー・ザ・ロックは自分たちでクラブをオーガナイズし、マイクを握る場所を自分たちで作り上げた。TwigyはMuroとMicrophone Pagerというグループを作っている。このグループは、いわゆるNYCのハードコアなヒップホップに影響を受けたものだが、そうしたグループが日本のシーンに大きな波紋を呼びかけたのも、今では説明がいるほどだ。ここでは、その過程は省略する。ただ、彼らの作ったアルバムは『Don't Turn Off Your Lights』を聞いてほしい、と書いておこう。
 
Twigyというアーティストは、自分の影を残していくのだが、それが半ば意識的なのか、そして半分はそういう天性の才だと思うのだが、型にはまることをよしとしないのである。言うまでもなく、ヒップホップが産業として大きくなったのは、「型」にはまってからで、Twigyは、それを次々と変えていく。それは、天才的な彼の才能によるものなのだが、天才のすべてが努力によってなされているのだから、彼の20年間は、大変エキサイティングであり、労苦も多かっただろう。
 
「今、ヒップホップって女のものになっているような気がするよ。作り方がわかってきちゃってような人間も多いし。ビッグ・ダディ・ケーンがかっこいい、とかビズ・マーキーがかっこいい、とかそういうことじゃなくなってきたから。好きになる部分って、人によって違うのに。掘り下げると、つきつめると、違ってくる。理屈抜きで、うわーってなっちゃうところ、それはサーカスで大技を見た時とちょっと似ている感覚だと思うんだけど」
 
そして、Twigyというアーティストは、デビューから最新作『Twig』まで、ルーティンではない、大技を見せてきたし、聞かせてきたのである。並大抵のことではないと思う。
 
彼の次の20年に乾杯しよう。
 
"Thing Twice"
Twigy
[東芝EMI / TOBF-5474]


"Twig"
Twigy
[東芝EMI / TOCT-25279]

Singasun & Chehon

Singasun & Chehon
 
Text by Hajime Oishi
 

上昇を続ける日本ダンスホール・シーンに次に斬り込むのは誰か?……ここで登場するSingasunとChehonの2組は、その筆頭となるかもしれない存在だ。どちらもなかなかフレッシュな初音源を届けてくれたばかりなので、両者の発言も交えながらその魅力を紹介しよう。
 
「One Love!! 人種、言葉、音楽、すべての壁を取り払え!!」??“歌を通して伝えていきたいことは?”という問いに対してこう答えてくれたのは、このたびデビュー・ミニ・アルバム『Risingasun』をリリースするSingasunのリーダー、Rockin' Tosh(彼はその名の通り、ピーター・トッシュを敬愛しているという)。彼とMaku Di Iver、Asakoの3人が活動を続けてきたのは、日本でもジャマイカでもなく、LAだ。彼の地のレゲエ・シーンについての情報が日本に入ってくることは多くないが、ジャマイカのビッグ・アーティストも頻繁にライヴを行い、現地で活動するクルーも少なくないという。
 
「小さいながらも確実に強いものがあるシーンです。やはりウエスト・サイドということでヒップホップが強いですが、レゲエ・シーンもしっかりありますし。ジャンルの壁を作らず、いろんなジャンルと交わる事の大切さをここでは学びましたね」
 
実際、様々な人種のなかで活動を続けてきた彼らだけに冒頭の発言があるのだろうし、それゆえに今作は幅広い層にアピールしうる内容となっている。少しソカ・フレイヴァーも盛り込まれた冒頭曲「Sha La La」から一気にアゲまくり、以降もAsakoの伸びやかな歌声に対してRockin' ToshとMaku Di Iverがヴァリエーション豊かに絡み付いていく……その迷いのない真直ぐさは高感度大。自身の個性については「明るい、前向き、ポジティヴ」と語る彼ら。すでに各地のダンスを賑わせ始めているようなので、チェックしておいたほうがいいかもしれない。
 
続いてご紹介するChehonは大阪のコリアン・タウン、鶴橋から飛び出した新人DJ。マイクを握り始めたのは2002年とそのキャリアは長くないが、“みどり”という名の女性に捧げたラヴソングの体裁を取ったダブルミーニング曲「みどり」が地元からブレイク、全国へとその名が拡がりつつある中、Dr.Productionから同名のミニ・アルバムがリリースされることになった。その地元に対して訊くと「大阪は毎日ダンスがあってレゲエ人口やスタジオも多いし、環境はかなり恵まれてるっすね。歌い手も多くて生き残るのも大変やけど、その競争心がまたレヴェルアップにもなる」と話す。“Guilty”リディムを使用した「みどり」や“Stars”リメイク・オケの「Banzai」のようなミディアムで映えるストレートな歌声が心地良い印象を残す一方で、背伸びのない等身大のリリックもまた彼の魅力。ただし、それを“芸”として聴かせるだけの言葉運びのおもしろさがそこにあるのも事実だ(その意味では三木道三との共通点を感じさせなくもない)。
 
「今の自分の中ではそういうリリックが多いかな。でも、自分の置かれる立場が変わったり年齢とキャリアを重なることでまたさらに変化していくと思うし、コアなメッセージも伝えていきたい」
 
「もっとさらにアンダーグランドを盛り上げていけるよう協力していきたい」と話す彼は、まだ21歳。作品リリースのあるDJとしてはもっとも若い世代に属するであろうChehon、今後の動向に期待していいDJの登場だ。
 
"Risingasun"
Singagun


"みどり"
Chehon

Miss Monday / -no rain, no rainbow-

Miss Monday
-no rain, no rainbow-
 
Interview by Kazuhiko "Hico" Maeda
 

トレード・マークのショート・ドレッドからスパイラル・ヘアーに。これまでの彼女から、そのありのままを感じさせる容姿同様に、心境の変化を感じさせる新作『雨虹-No Rain, No Rainbow-』について話を聞いた。
 
●髪型変えちゃったんですね。
Miss Monday(以下M):自分の中でもういいかっていうのがあって変えちゃいましたね。
 
●今回のアルバムに収録された歌詞をみても心境の変化を感じられますよね。
M:自分の中での開き直りというか、もっと自分に対して自由にやってもいいんじゃないかとか、枠にとらわれないで自分の好きな音楽を自由に楽しんで行こうっていう風に思えるようになったのも(先行シングルの)「雨虹」作るようになった頃ですね。
 
●今までの作品のタイトルにしても、“自然体”っていうところに統一された感はあるけど、今回はこれまでとまた違ったものを感じるんですけど。
M:“自然体”に関していうと、自分がこれまで今まで気持ちの中で掲げてあげきたこと……それは今でも変わらないんですけど……“自然体”って言葉に逆に縛られ過ぎてるっていうのを逆手に取ってしまった時期もあった。自分の中でレゲエも好き、つまり色んな要素を含んだミス・マンディがいるんです。で、('03年3月にリリースした)「ルーツ」って曲を作っている時、トラック自体が凄い格好いいのが出来て、直感的にレゲエのフロウを乗せたらかっこいいなっていうのがあったんですが、自由な音楽をやろうって考えられなかった時期で…。ミス・マンディはラッパーとして見られちゃってる部分もあるし、こうじゃなきゃいけないっていう考えもあったんです。でもトラック格好いいしって考え込んでしまった。でも先に作ってもらった(スピナ・)ビル君の歌詞で「昨日の自分を受け入れて」という部分を聴いて、自分を否定しちゃいけないんだっていうメッセージに感じた。色んな音楽を好きな自分も事実だし、そこを受け入れないでどうするんだって自分にいい聞かせたし、言ってくれたことによって、自分を認めることが出来た。そこからは自然体っていうことに関してもっと真っ正面に向き合おうと思えるようになりました。
 
●そんな流れの中でこのアルバムも制作されたわけですが、今回の作品の中で自分にとって思い入れのある楽曲を教えて下さい。
M:想いはそれぞれあるから特にっていうのは難しいけど、強いていえば(タイトル曲の)シングルもそうだし、「シェア」も個人的には思い入れが強いかな。リッキーG君との曲なんだけども、喜びとか悲しみって感情を言葉と時間を使って分かりあうっていう内容。自分の気持ちとか考え方を伝える、分かってもらうっていうのが、凄く大事なこと。コミュニケーションをする時に自分の気持ちを伝える方法が拙かったから、今までは誤解をされてしまったり、上手くいかなかったりっていうのが往々にしてあった。だけどその中で自分の言葉を使って相手に気持ちを伝えた時に、お互いがその気持ちを共感するっていうことの嬉しさを分かち合えたのが嬉しかったし、色んなお付き合いをしていく中で、もっと分かり合えて行くんじゃないかっていうことを感じましたね。
 
●最後に今後についての理想を聞かせて下さい。
M:自分の音楽をもっと追求していきたい。ヒップホップとかレゲエを越えた「いい音楽」を作っていきたい。
 

"-no rain, no rainbow-"
Miss Monday
[Epic / ESCL2832]



"&I"
Miss Monday
[Epic / ESCL2843]

カルカヤマコト

カルカヤマコト
 
Interview by Kazuhiko "Hico" Maeda
 

今年5月11日に25周忌を迎えたボブ・マーリーの名曲の数々をカルカヤマコトがカヴァー。数あるボブのカヴァー集と比較しても全く異色の作品に仕上がった模様。
 
カルカヤマコトは、レゲエ・ミュージックの虜となり2001年、高校卒業後単身ジャマイカへと渡り、その後も日本とジャマイカを往来し生活してきた。1stアルバム『カルカヤマコト』は、そんな生活をしていた2003年にリリースされている。ボブ・マーリーやマービン・ゲイと言ったアーティストのカヴァーを交えた内容で、地元大阪のアーティストを迎え、ジャマイカ音楽に対する憧れを素直に繁栄させた作品だった。
 
同年、長女の出産を経験し、彼女の生活の基盤は次第にジャマイカが中心となっていく。2004年の2ndアルバム『Black and Browny』は、ジャマイカで生き抜くそんな姿がハッキリと示された作品となった。そして、後のQ45制作によるシングル「Gal Anthem」やダブ・アルバムをリリース。2005年の3rdアルバム『Money Voice』では、子を持つ親としての声が聞かれ、続く4thアルバム『System Of Jah』は、彼女の環境の中で見つけていった人間としての考えを更に深めたメッセージに溢れた作品となった。
 
その後、音楽番組「69 Tribe」の企画によって実現したボブ・マーリーの娘、ステフ・ポケッツとのコラボレーションを体験し、次第に彼女が生きる中での様々な現実は、ある偉大なアーティストが伝えてきたメッセージとシンクロしていく。ボブ・マーリーが、その人である。これまでの彼女の作品の中でもカヴァーされ、歌い続けてきたボブ・マーリーの曲。今回の全編ボブ・マーリーのカヴァーという企画が自然な流れであったことは言うまでもない。
 
トラックの制作は、前作『System Of Jah』を手掛け、デタミネーションズの名曲「Mango Rock」のタイトルにもなったギタリスト、マンゴが手掛けた打ち込みのトラックにメロディアスな生音を交えたもの。更に前述のステファン・ポケッツとの「Iron Lion Zion」を含んだ7曲が収録されている(11月にはマンゴと制作した他の5曲とテイク違い2曲を含んだ“パート2”もリリースされるそうだ)。彼女の生き方が見いだしたユニバーサル・メッセージが、ボブ・マーリーの曲を通じて表現されたこのアルバム。カルカヤマコトだからこそ、意味のある作品となっているのが特別なことだ。
 
"カルカヤマコトCovers Bob Marley"
カルカヤマコト
[LD&K / POCE-5704]

Moomin / Adapt

Moomin
Adapt
 
Interview by Naohiro Moro / Photo by Hiroshi Nirei
 

カヴァーはレゲエ文化には欠かせないファクターだし、僕らはレゲエになった自分のお気に入り曲を探してレコ屋のエサ箱を探ったものだった。本誌読者の中にも、知ってるカヴァーが多く入ったサンチェスのアルバムとかを好んで聞いていたクチ、なんて人は多いのではないだろうか。ムーミンがメジャー・デビュー10周年の区切りに贈る全曲カヴァーによるアルバム『Adapt』は、そんな懐かしさと新鮮さを感じさせてくれる作品だ。
 
●もっと早くに聞いてみたかったというか、あってもおかしくなかったアルバムですね。今回、初めてのフル・カヴァー・アルバムということで、ムーミンにとって「レゲエによるカヴァー」とはどんなものですか?
Moomin(以下M):レゲエって今じゃあ日本でもメジャーなジャンルとして定着してきてるけど、僕が歌い出した頃とか、まだまだそんなじゃなかったし、シンガーは特にオリジナルの曲を書く前は、とりあえずみんなカヴァーから入ってたじゃないですか。その頃はレゲエにカヴァーされた曲を聞いて、レゲエの良さとか、原曲の良さを感じたりしてたし。ジャマイカ人のするカヴァーの感覚も、お金儲けのためっていうより、みんなで音楽を共有する感じっていうか、とにかく何でもレゲエになったものを聞いてみたい、みたいな……。僕も最初歌い始めた頃はカヴァーから入りましたから、そういう意味では初心に帰った感じもありますね。どうですか、今回のアルバムの印象は?
 
●カヴァーだっていうことを意識しなくても、既にムーミンの歌になってる。その辺は流石だな、と。歌もバックの演奏も、全体がリラックスした雰囲気に包まれてて、特に生音とムーミンの歌のマッチ感が気持ち良かったな。ホームGプロデュース曲でもそうだし、今回、多くの曲に参加しているノダチンのギターがもたらしてる感触がいいですね。
M:ノダチンは本当、僕にとって一緒にいるだけで心地いい人っていうか、伝え易いんですよね。ツボってあるじゃないですか、こうしたいツボみたいなもの。そいうのをノダチンはすぐ分かってくれる。それと今回は、自分のイメージを伝えるために作るプリ・プロダクションを自分でやっているんで、形にし易かったってのもありましたね。
 
●あとサイゲンジさんプロデュースの「夏をあきらめて」! カッコいい!
M:サイゲンジさんもいい感じの人なんですよ。あの曲も思い入れがあるし。134号線沿いにパシフィック・ホテルがまだあった頃の茅ヶ崎のイメージですね。今回どの曲をカヴァーするか絞り込むのが大変だったんですよ。やってみたい曲はいくらでもあったし。
 
●回りが盛り上がっちゃうでしょ(笑)。やっぱアレ歌って欲しい、コレ歌って欲しい、ってね。そうそうムーミンがフル・カヴァー・アルバムって聞いただけで、みんな自分勝手にそう思い始めそう(笑)。
 
M:そう。でも、ただカラオケのレゲエ・ヴァージョン程度になっちゃうのも面白くないし、こんなやり方もあるんだぞ、こんな曲もレゲエになるんだぞ、みたいな部分を出したかったですね。やってみてまだまだレゲエになるいい曲があるなって思いましたね。むざむざ他人にやられる前に自分でカヴァーしたい(笑)。こういうのなら後2~3枚作っちゃいたいですよ(笑)。今回のアルバムは、何か不思議なタイミングがいくつか訪れて、最終的にフル・カヴァーにしようってことになったんですけど、やってみて、結果、いろんな世代の人に聞いてもらえる作品になったな、って思うんですよ。リラックス出来る音楽としてのレゲエの良さっていうものを多くの人に伝える手段としてのカヴァーの有効性を改めて感じたし、歌っていいなぁ、ってそういうことも改めて感じましたね。普通のビジネスマンみたいな人たちにも聞いてもらいたいな、と思いますよ。
 
原作のイメージを踏襲した泉谷しげるの「春夏秋冬」でアルバムは始まる。クリーヴィもコーラスで参加したゴダイゴの「Beautiful Name」、ホームGのナイスな演奏が心地いい井上陽水「リバーサイド・ホテル」、リョウ・ザ・スカイウォーカーとのコンビネーション仕立てになった安全地帯「悲しみにさよなら」、ムーミンの世代ならではのGAO「サヨナラ」、外池満広プロデュースのチューリップ「サボテンの花」の随所にさり気なく散りばめられた、ポップさと対を成すマニアックなフレヴァー、ブラジルな感じがたまらないサザン「夏をあきらめて」、エンディングを飾る「山賊の唄」などいったレゲエになった日本歌謡史に輝く名曲たちに加え、洋楽カヴァーとしては、エルヴィス・コステロの「Alison」や、ヨーヨー・Cのアルバム『Love, Peace & Light』にも収録されている「Modern Girl」日本語ヴァージョンのストレート・ミックス、ボブ・マーリー「Waiting In Vain」、チャック・フェンダーを迎えたヘプトーンズ「Why Did You Leave」など、ムーミンが歌いたかったナイスなレゲエ曲もあり。僕はこのアルバムを桜並木の下で聞いたが、これからの季節なら真夏のビーチはもちろんだが、梅雨に入る前の5月、6月の青い空の下もいいだろう。レゲエの魅力を再確認出来る“Adapt”な感じを楽しんでみるのはいかが?
 

album "Adapt"
Moomin
[Island / UPCI-1046]



single "River Side Hotel"
Moomin
[Island / UPCI-5031]



7inch"サヨナラ"
Moomin
[Overheat / OVE-7-0091]

2008年2月27日

CHART from No.300

REGGAE 7" | REGGAE LP | REGGAE CD | REGGAE CLUB
HIP HOP 12" | HIP HOP LP | R&B | HOUSE | ABSTRACT

 
REGGAE 7
 
●CISCO(渋谷)03-5458-6625
1. Cherine Anderson / Against The World (Birchill)
2. Estelle / Come Over (Black Chiney)
3. Erupt / Click Mi Finger (Truck Back)
4. Timberlee & Ward 21 / Bubble Like Soup (Ward 21)
5. Nato / Bed (Mafia & Fluxy)
 
今月は季節柄か唄物強しです。(1)もう、日本での人気も定着ですね。伝わり易い良い曲です。(2)またもや女性シンガー。R&Bとか好きな人にも好まれそうな感じじゃないでしょうか。(3)指パチパチ音入り。話題のリディム“Gear Box”話題のDJです。(4)リリースされる前から随分耳にしたような気がします。耳に残りますね。(5)コレも唄物。J.HolidayとAlicia Keysのカヴァーです。
 
●LION MUSIC DEN(名古屋)052-953-1386
1. First Born & Colione / Worried Over You (Vizion Sound)
2. Buju Banton / Not An Easy Road (Gargamel)
3. Ranking Joe / Weakheart Fadeaway (Greensleeves)
4. Ini Kamoze / Wings With Me (Taxi)
5. Carol Gonzalez / How Come How Long (DR)
 
(1)渋い所を突いた好カヴァー! ダンス好きにはCJ Lewis & Janet Lee Davisで有名なJAオールディーズ。(2)90年代後半の大ヒット・チューンが初7インチ化!(3)Jr. Byles「Fade Away」trkの嬉しいシングル!(4)1stアルバム収録のヘヴィー・チューン!初7インチ化?(5)Dean Fraserプロデュース! アダルトなムードのヴェテラン女性Vo。
 
●ROCKER'S ISLAND(大阪)06-6214-7565
1. Erup / Click Mi Finger (Truck Back)
2. Junior X / Hustler (Birchill)
3. Movado / Touch Di Road (Fouta Hype)v
4. Vybz Kartel / Money Fi Sprend (Big Ship)
5. Ray Darwin / Another Day (Pow Pow)

(1)只今ジャマイカでも激ボス中。俺が指を鳴らすとギャル達が寄ってくると!(2)絶好調Birchillレーベルより哀愁系ミディアム・トラ "Dreams" に乗せ、「Plead My Cause」の大ヒットでお馴染みのシンガー。同リディム好チューン多数!(3)以前から現場でもヘヴィー・プレイされていた話題曲が遂に7インチ・リリース! Bountyも要チェック。(4)人気上昇中の天才S. McGregor制作 "Bee Hive" ! 独特Kartel節がハマる。(5)「People's Choice」のヒットでお馴染みRay Darwinのニュー。切ないメロディー・ラインにやられます。
 
●ORANGE STREET(新宿)03-3365-2027
1. Mikey Murka / War (Reality Shock Records)
2. Ras Nyto / Tribulation (King Earthquake)
3. Barry Issac / Mission Against Herbs (Reggae On Top)
4. Joe Higgs / Let Us Do Something (Elevation/Pressure Sounds)
5. Hugh Mundell / Can't Pop No Style (Greensleeves)
 
(1)先行リリースのアルバムから待望のシングル・カット。数ある同曲カヴァーの中でも秀逸!(2)重低音を誇る同システムだけあってサスガのTuffチューン。抑え気味に切々と歌うヴォーカルがこれまたいい感じ。(3)UKルーツ界で最もコンスタントにリリースを続けるBarryのステッパー・チューン。(4)多くのアーティストに影響を与え続けた彼が74年にリリースしたヘヴィー・ルーツ。嬉しい再発。(5)同レーベル再発シリーズの中で当店人気No.1のルーツ・ヴォーカル。Abaのフェイバリット・チューン。
 
 
REGGAE LP TOP 5
 
●REGGAE SHOP NAT(新宿)03-5337-7558
1. Peter Hunnigale / Free Soul (Coxsone / Peckings)
2. Joe Higgs / Life Of Contradiction (Pressure Sounds)
3. Slickers / Break Through (Tads)
4. Jacob Miller / Who Say Jah No Dread (Greensleeves)
5. V.A. / The Biggest Dancehall Anthems 2 (Greensleeves)
 
(1)UKより、話題のリリース! 全曲、Coxsone制作の名曲のオリジナル・リズム・トラックを使用。Bitty McLean『On Bond Street』を思わせる好内容。シングルでリリース済みの曲のリミックス、後半ダブのディスコ・ミックス等も収録。(2)70年代にリリースされた幻の名盤が遂に再発! ロックステディ・ファン、ルーツ・ファン共に必聴!(3)Lee PerryプロデュースのRoots作品。ボーナス・トラック付で復活。(4)Rockersプロダクション制作の名曲集。全曲ダブも収録。(5)ダンスホール創成期の名曲満載。80年代初期当時のスーパースター勢揃い。 ※ブログで最新リリース情報をゲットして下さい! www.rs-nat.ne.jp。
 
●DRUM & BASS RECORDS(大阪)06-6211-1044
1. Joe Higgs / Life Of Contradiction (Pressure Sounds))
2. Peter Hunningale / Coxsone Presents Free Soul (Coxsone/Peckings))
3. Sound Dimension / Mojo Rocksteady Beat (Soul Jazz))
4. Lee Scratch Perry / Chicken Scratch (Heart Beat))
5. ロイド・ブラッドリー著 / Bass Culture (シンコー・ミュ−ジック)
 
(1)Wailersの師匠である伝説のシンガーによる70's名盤が遂に復活!「Theres A Reward」レゲエ・カット収録。(2)Peckigs企画の限定アナログ。在英ヴェテラン・シンガーがスタワン・オリジナル・トラックに乗って艶やかに歌ってます。(3)Late 60'sスタジオ・ワンの屋台骨を支えたハウス・バンドが残した定番曲〜レア曲をまとめて聞ける嬉しい作品。「Summertime」収録に感謝!(4)オリジナル・シングルでは激入手困難な「Feel Like Jumping」、「Mother In Law」などを収録したペリー先生のスタワン・スカ集!(5)全レゲエ・ファン必読の書。 ※ポッド・キャスト、パイレーツ・チョイス毎週日曜日アップデート。→www.drumandbass-rec.com / www.rock-a-shacka.com♪
 
 
 
REGGAE CD TOP 5
 
●TOWER RECORDS(渋谷)03-3496-3661
1. V.A. / Flexx From T.O.K presents D'Link (Victor)
2. Joe Higgs / Life Of Contradiction (Pressure Souds)
3. Steel An'Skin / Reggae Is Here Onece Again (em)
4. Buju Banton / Inna Heights 10th Anniversary Edition (VP)
5. V.A. / Penthouse Singerz (Koyashi)
 
(1)T.O.KのFlexxがプロデュースした全曲ブランニューのコンピ。現在進行形、リアル・ダンスホールに踊りっぱなし。(2)みんなが探していたあの名曲が収録されたルーツ・レゲエの大名盤再発。心の底から溢れ出るソウルに感動。(3)ビックらこいた世界初CD化。スティールバン+レゲエ+ディスコで祭ビート全開。カツオもハッスル!(4)ブジュ、1997年の大作がリマスタリングされ再発。DVD付(40分のライヴ映像)。いやぁ、久しぶりに聴いたがやはり最高だね。(5)良曲の宝庫、ペントハウスより厳選された輝曲集が出たぞ。レゲエが好きで良かった!!  擦り切れるまで聴けるコンピだ。
 
●HMV(渋谷)03-5458-3411
1. Cutty feat. Patexx / そんなの関係ねぇレゲエ (Universal)
2. V.A. / Penthouse Singers (Koyashi Haikyu)
3. Scientist / World At War (P-Vine)
4. Omar Perry / Man Free (Cor)
5. Chalart 58 / Recording (Kasba)
 
(1)僕の外国の友人もなぜか“小島よしお”にハマってました。という訳で「Opp」世界への第一歩!(2)90年代、ダンス・フロアを席巻した名曲勢揃い!(3)名盤復活! 今このアルバムが普通に手に入る喜び、ありがとう!(4)Omar Perryの息子が遂にデビューです。正統派レゲエ、Good Music!! (5)スペインはバルセロナにて活躍中のLakinky Beatのドラマーのソロ・プロジェクト。世界中のVo.、Dee Jayを集めたBarrio Style Punky Reggae!。
 
REGGAE CLUB TOP 5
 
●CLUB JAMAICA(西麻布)03-3407-8844 Selected by Club Jamaica Crew
1. Jr.Gong & S.Marley / Mission (Tuff Gong)
2. Serani / Everywhere I Go (Fire Links)
3. Movado / Informa (Payday)
4. Estelle / Come Over (Black Chiney)
5. Lenn Hammond / Not Far From Sunshine (UDMG)
 
(1)今年の頭から現場ではコレ。このコンビにこのいかついリディム、最高。Movado「On The Rock」と共にエライことに。(2)強力タッグ。Daseca & Fire Links。"Drum City" リディム!(3)男気溢れる "Gangstar Beat" リディム。相変わらず恐ろしい事を切ないメロで歌ってます。(4)怖い系続きなのでコレで。UKのR&Bシンガー。B.Chineyは良い仕事します!(5)久々の新曲。好チューン! ※今月もお待ちしてます!
  
●JADE(札幌)011-520-1015 Selected by Green Peace"Mac"
1. Erup / Click Mi Finger (Truck Back)
2. Beenie Man / Gangster Prayer (357Records)
3. Anthony B / Excercise & Call (Massive B)
4. Junior X / Hustler (Birchill)
5. Busy Signal / Unknown Numbers (Juke Boxx)
 
(1)札幌のダンスでも流行中、JAでもBoos中の1曲!! 俺が指を鳴らせばギャルがよってくるぜ!! (2)題名通りのギャングスタ・チューン、リディムもHip Hop調で、Good!(3)Massive Bのブランニュー、今回も流行る事間違いなし! Anthony B以外も◎ (4)自分の家族を守る為に、自分は一生懸命働かなければいけないとういう内容のチューン。他にも注目アーティスト発売中。(5)「ギャングスタは知らない電話番号は出ない」という、JAらしい変わった内容のチューン。
 
●CLUB I to I(大阪)06-6252-4201 Selected by Dodge from Killasan Movement
1. Erup / Click Mi Finger (Truck Back)
2. Busy Signal / Unknown Numbers (Juke Boxx)
3. Beenie Man / Barbie / Give It Up (3.5.7)
4. Junior X / Hustler (Birchill)
5. Shaggy feat. Akon / What's Love (Big Yard)
 
(1)激やばニュー・リディム "Gear Box"。ド派手なオケにErupが絡むビッグ・チューン!! (2)Juke Boxxからのニュー。最近のBusyはHip Hopテイストのオケではハズレなしっス。これまたグッド。(3)やっとリリースされました。攻撃的な "Revenge" Trk。ピック・アップするのはやはり最近なにかと話題のこの二人。(3)Birchのニュー "Dreams"。全タイトルいい曲ですが、中でもコンシャスな内容のJunior Xをチョイス。7inchカット。Hip Hop調のおしゃれなオケに乗せた極上ラヴ・チューン!! 本当にShaggyはお洒落ですね。
 
 
HIPHOP 12
 
●CISCO www.cisco-records.co.jp
1. Olive Oil / Spring Break (We Nod)
2. Flash Callahan / Do You Know The Truth EP (Jalapeno Records)
3. Empty Chair / An Echo Of The Future (Living Space)
4. V.A. / A+ TV - Street Visionary (Legendary Inc.)
5. B.A.D Rep / Nothing Can Stop Us Now (Pay Roll)
 
(1)聴けば聴くほどに味の増す極上アルバム、遂に入荷! 磨きのかかった神秘的な世界観をフィール。(2)ブレイカーにオススメのブレイクビーツを収録。(3)地味な一曲ながらもマッドな曲調がGood。緑のカラー・ヴァイナル。You Know It。(4)Den、D.Oによる名物司会によるイベント[A+]を映像パッケージ化!(5)Bizzie Boyzで御馴染みのレーベルから貴重な一枚再発!
 
 
●Dance Music Record(渋谷)03-3477-1556
1. Olive Oil / Pianity EP (Jorzedisc)
2. DJ Baku / Spin Street - Remix (Pop Group)
3. V.A. / Beatnicks Vol. 2 (Up My Alley)
4. Diplo / Fuji Ouija (Honest Jon's)
5. Dabrye / Get Dirty (Ghostly International)
 
(1)アルバム「Spring Break」より先行カット第2弾! Poppy Oilデザインの豪華観音開きジャケットもコレクタブルな逸品。(2)プロモ盤として関係者にのみ配られたOakとGoth-Tradによるリミックスが遂に正規リリース!(3)ビートニクス世代のコンピ第2弾。Rusiteのビートがヤバイ!(4)アフロビートのDiplo的解釈が斬新で素晴らしい。(5)Kode 9やFlying Lotusと言った注目のプロデューサーによるリミックスをフィーチャー。
 
 
HIPHOP LP TOP 5
 
●TOWER RECORDS(梅田大阪マルビル店) 06-6343-4551
1. Jazz Liberatorz / Clin D'oeil (P-vine)
2. Lupe Fiasco / The Cool (Atlantic)
3. V.A. / In Ya Mellow Tone (Goon Trax)
4. V.A. / Beautiful Field (Aicube Music)
5. Nomak / Calm (Huge Soul)
 
(1)フランスから届いた上質Jazzy HipHop!! 仏産ながら英国的品のよさを備えた生音感が心地よすぎ!(2)聴くほどにハマるジャンルレスなルペ・ワールド全開。(3)Goon Traxのレーベル・コンピ。アングラ〜ジャジー系のレア音源、注目アーティストのトラックまで一気聴き!! 個人的に激押しArt Official!! (4)前チャートにもランクインし、ロングセラー中、ピアノの旋律が切ないHipHopトラック集。(5)ふと泣きツボを押されてしまう和的美トラック。こちらもロング・セラー中。
 
 
R&B TOP 5
 
●DISK UNION ONLINE SHOP hiphop@diskunion.co.jp
1. Keith Sweat / Suga Suga Suga (Atco/Rhino)
2. Making The Band 4 / Got Me Going (Bad Boy/Atlantic)
3. Ray Lavender feat. T-Pain / Put It Down (Konvict)
4. Lyfe Jennings / Never Never Land (Columbia)
5. Jordin Sparks feat. Chris Brown / No Air (19/Jive/Zomba)
 
(1)目新しさはありませんが、美メロ・ミッドでファンのニーズには確実に答えてくれます。ヴェテランらしい安定感。(2)名前が示すとおり例のMTV企画の新グループです。作はMario Winans。前シーズンのDanity Kaneに続くか。(3)今月のKonvict。哀愁漂うメロディ・ラインに若者(24歳)らしい繊細さと透明感のあるヴォーカルが高ポイント。(4)3rdアルバムからの先行。タフさと深みを堪能できるスロウです。(5)しっかり歌い上げる清純派アイドルの二乗。目指せ国歌斉唱ってところでしょうか。
 
 
HOUSE TOP 5
 
●CISCO www.cisco-records.co.jp
1. GTS / I Don't Want To Wait (Artimage)
2. Sound Around / Shooting Star (Roth Ent.)
3. Chieko Kinbara / Shadow, EL Caravanero (Grand Gallery)
4. Synchro & JVA Time Out (Lickin)
5. Makai / Garden EP 01 (U's Music)
 
(1)Franc Franc企画コンピに収録されたポーラ・コール名曲カヴァーが待望のカット。(2)Daishi Danceで御馴染みRoth Ent.からのニューカマー。Free Tempoリミックスを収録!(3)金原千恵子の久々の新曲はEric Kupperによる超ハウス・ミックスとスギウラムによるロッキン・エレクトロ!(4)大人気レーベルからのピアノ・ボム!
 
ABSTRACT TOP 5
 
●DISC SHOP ZERO(世田谷)03-5432-6129
1. V.A. / Basic Replay (Basic Replay)
2. V.A. / The Higherground Connection (Dub-I-Roots)
3. Akoya Afrobeat / Fela Dey (Tip Of The Iceberg)
4. Ghislain Poirier / No Ground Under (Ninja Tune)
5. Rachael Dadd / The World Outside Is In A Cupboard (Angel's Egg)

(1)当店にかかせないレーベルの集大成で殿堂入り!(2)パーティー“Dub-I-Roots”監修、関西の低音重視新鋭サウンドをばっちり紹介。(3)Fela Kutiの意志を引き継ぐNYCのアフロビート・バンド最新シングル。(4)グライム、ダブステップ、B-Moreブレイクスを凌ぐと噂の厳ついデジタル・ダンスホール。(5)既に“2008年の注目株”としてBBCなどでプッシュ中のSSW、2ndソロ。 
www.discshopzero.com 下北沢駅南口徒歩2分 通販可

RAW SINGLES from No.300

Raw Singles
Text by Takanori Ishikawa
 
1. Movado / Touch Di Road (Foota Hype)
強力なパンチライン一発で、いきなり最高頂に。既に大ヒット中のギャングスタ・チューンが遂にリリース。オリジナル "Gully Creature" 使用。派手なキーボードで豪快に迫るが、ピッチは抑え目。シンプルな打ち込みビートは“タメ”が効いている。
  
2. Munga / Never Hesitage (Foota Hype)
"Gully Creature"。シングジェイとDJを使い分けて、ほとんど一人二役。この人の特徴であるメリハリのある展開。オレはガンをブッ放す事に全然ためらいはないぜ、覚悟しておけよ、って感じのリリックス。以前よりシリアスなムードが漂っています。
 
3. Elephant Man / Wine For Me (Copper Shot)
スティール・パンが大活躍のオリジナル・ジャグリン "Set Up"。少しSoca風のナイス・トラック。パーカッシヴで小気味良し。B面収録のCharly Blacks「Black Shot Time」も共に大ヒット中(こちらはスティール・パンのかわりに、コミカルなシンセが)。このトラック、かなりいいっすよ。
 
4. Erup / Click Mi Finger (Truck Back)
シャッフル系のキャッチーなリズムが快調。グイグイとドライヴしてます。オリジナル "Gear Box"。「ギャルはみんな、オレら男と遊びたいと思ってるぜ、指をならして、道で待って(誘って)いるじゃん」って内容のリリックス。軽妙なフロウも最高。
 
5. Beenie Man / Bad Man Story (Truck Back)
ホント、この人はスキルがあるなと、再認識。緩急自在、ライミングもバッチリのBad Manリリックス。「いつでも誰とでもヤってやるぜ」と威勢がいい。B面はFamous Face「Hotta Tham Them」収録。これが又、ヤバいホット・ギャル・アンセム。文句無しです。
 
6. Charly Blacks / Buddy Buddy (VP)
超ベタなズンドコドラムにシンプルなリフレインで押しまくる。大ヒット中なのも頷ける単純明快、なサウンドとリリックス。ある意味レゲエの王道でもありますが、Soca風でもありますね。この下ネタの使い方も。
 
7. Timbar Lee & Ward 21 / Bubble Like Soup (Ward 21)
Ward 21らしいフューチャリスティックな "Rae Rae"。ハイフィー好きもこの音には喰らうでしょう。巧妙に製作された "Bad Wea-ther" (Studio 2000) リメイクでもあります。サウンドのフレッシュさの為、初めは気づかないと思いますが。ヤバイっす。
 
8. Vibez Kartel / Beatn Beatn (Ward 21)
"Rae Rae"。同トラック使用の (7) ではプログレッシヴなサウンドが強く印象に残るが(「Chiken Noodle Soap」を流用したキャッチーなフックもだけど)、KartelのDJがプラスされたこちらはスピード感倍増。実力のなせる技ですね。下ネタ全開チューン。
 
9. Beenie Man & Barbee / Give It Up (3,5,7 Records)
話題のお二人がコンビネーション。内容はストレートな「彼女とやりたい」ソング。Barbeeちゃんはお洒落な引き立て役に回ってます。ダークでヘヴィなイントロから、ダンサンブルなビートにスムーズに進行するナイス・リズム "Revenge"。
 
10. Collie Buddz & Bounty Killer / Never Snitch (Champagne)
このレーベル、ジャマイカでも独特の音作りで、いつも面白い。ギリギリ、スレスレの所で勝負してるよね(無意識なんでしょうが)。今回もアメリカのHip Hop風ながらも、実は全然違う打ち込みでオリジナリティ満点。しかもベースラインは "Tempo"。インファーマー攻撃歌。
 
11. Maxi Priest / I Just Want To Know (Birchill)
オリジナル・ミディアム・トラック "Dreams"。さすがに、Maxi。この手はお手のもの。ポップスとして優秀です。B面収録はPressureのラヴ・ソング。コテコテの“コブシ”が今回も冴えている。今度のこのトラックもヒット確実。これが軽く聞こえるのは、耳が旧世代って事になりますね。
 
12. Estelle / Come Over (Black Chiney)
John Legendのレーベルからアルバムも発売予定のこの人が、何とラヴァーズ・チューンをリリース。Box Topsのオールディーズ・カヴァー。時流を読んでいますね。骨太ながら、アレンジはしっとりとしたサウンドもピッタリとマッチしています。イケてます。
 
13. Luciano / Jah Will See Through (CDJ)
Dennis Brown名作「Slow Down」(Jammy's)リメイク。80'sダンスホールの香りをそのままに持ち込んだGoodサウンド。時折、Luciano、お声がDennisそっくりに聞こえて、ハッとしますね。良いです、かなり良い。Jahはいつも見ていてくれるというリリックス。
 
14. Adele Harley / No One (Mafia & Fluxy)
女性シンガー、勿論Alicia Keysの大ヒット曲カヴァー。UK産らしいラヴァーズ・サウンドで使い勝手が良さそう。B面はNotoのJ.Holiday「Bed」のカヴァー。このシングルはB面が売りでしょ。あのメロディをポップに演出したナイス・チューン。

ISLAND EXPRESS from No.300


"School of Vision-2"”
Text by Reiko NAGASE SMITH(協力:アイランドツアー)
 
毎週土曜日にキングストンのパピンでナイヤビンギ集会を行なうラスタファリアン「スクール・オブ・ヴィジョン」のラスタ・コミューンは、世界最上級のコーヒーで有名なブルーマウンテン山脈の中腹、Settlement(セグメント)地区を上った山の上にある。
 
パピンからアイリッシュ・タウン方面に、山道を車で約45分。アイリッシュ・タウンに入ると「カフェ・ブルー」(ローカルのコーヒー会社が経営する小粋なコーヒー・ショップ)、クリス・ブラックウェル経営のホテル「ストロベリー・ヒル」、日本のコーヒー会社UCCが所有する「クレイトン・ハウス」と、ガイドブックに載る有名スポットがあって、更にレッドライト地区までのぼる。これを越えるとジャマイカJDF軍の訓練所「ニュー・キャッスル」、スプリング・ウォーターの会社「キャサリン・ピーク」があり、セグメント地区に入る。車で行ける所まで行って、コミューンまでの山道を足でのぼっていく事になる。道は階段状になっているが傾斜が急で、足元にはキングストンで見かけない種類の高山植物が、キングストンを遥か向こうに臨む極上の眺めを、愉しむ余裕もない程の山登り状態が20分程続く。ここはキングストンとは別世界、気候も全然違って朝晩は冷え込む程。
 
今から9年ほど前に建てられたこのラスタ・コミューンは、創設者のプリーストを中心として、100人から200人程のラスタファリアンが共同生活を営んでいる。現金収入を目的としない彼らの共同生活には、それぞれ役割分担がされていて、ハリケーンで破壊されたタバナクル(礼拝堂)の復旧に勤しむ大工係、洗濯に精を出す女性、今が旬のレタスの刈り入れに忙しい人、セキュリティ担当の若い衆等、皆それぞれが能力を生かして自分達のコミューンの為に働いている。掃除も当番制だ。
 
農業とルーツワインが彼らの大切な収入源で、ねぎ、オクラ、レタス、パクチョイ、キャベツ、赤豆、にんじん、チョウチョウなどの野菜、バナナやパイナップルなどのフルーツを、パピンの市場に定期的に売りに行く。ルーツワインは小瓶で売られる手作り感覚の商品で、このところスーパー・マーケットなどでもよく見かけるタイプのもの。コンクァーリング・ライオンの絵が目印の「Priestly Order Roots」はこの山で採れる素材で調合され、コミューンで煮詰めてボトルに入れられ、キングストンやマンデヴィルまで売りに行く。
 
電気が通っているのはコミューンでも一部のみ。有名なスプリング・ウォーターの水源地に近いので、おいしい水が豊富。だが水道は通っていないので、毎日の生活は水運びが中心となる。
 
コミューンの朝は、お祈りで始まる。「スクール・オブ・ヴィジョン」では皆、北を向いてお祈りする。ボボ・シャンティ等、エチオピアのある東を向いて祈る別宗派も多いが、「スクール・オブ・ヴィジョン」が北を向くのは、ハイレ・セラシエが正座(しょうざ)で南を向いておられる為、ハイレ・セラシエに向き合って拝む為に北を向くのだそう。朝7時、正午12時と夕方6時に毎日祈りが行われる。日中は、パピンで行われる集会でのナイヤビンギを録音したテープが流れる。ラスタ・カラーは緑を上におく正統派で、ボボ・シャンティの様にマーカス・ガーヴィーを特別に崇める事はない。
 
このラスタ・コミューンでは、ラスタである事、が条件で、共同生活だから規則はあるものの、ここに住むラスタファリアンの生活は基本的に自由。カップルや家族形態のラスタファリアンも多く、他の宗派の様に結婚や仕事等の制限もない。
 
彼らは「ぶれっせ」「びがもー」と通りすがりに軽く挨拶しながら、仕事や学校、買い物等に出かけていく。「Bigga More」は、ジャマイカ人のカジュアルな挨拶言葉「Little More」(リコモと発音)が、ラスタ的に変換されたポジティヴ・ワード。傘(umbrella)もoverbrella(オーバーブレア)に変換。キングストンで床屋業を営んでいるラスタファリアンもコミューンにいる、というから可笑しい。
 
学校は幼稚園と小学校がコミューン内にあり、コミューンに住むラスタファリアンが子供達を教えている。また、キングストンのペーン・ロードにある「ハイレ・セラシエ小学校」で教鞭をとる教諭がコミューンにいる為、この小学校に通っている子供も多いとか。新月には三夜続くビンギが行われ、訪問者が参加する事もできる。ナイヤビンギは他に、ハイレ・セラシエの誕生日やエチオピアのクリスマス等、ラスタファリアンの大切な行事にこの山で行われる他、出張ナイヤビンギもしている。
 
訪問者も大歓迎するこのコミューンに、外国人が宿泊する事も可能で、自然と一体なラスタファリアン・ライフを体験しながらラスタについて学ぶ事ができる。訪問者へのゲスト・リレイションは、ラスタについての正しい知識を外部に伝える為の大切な役割であり、誠意をこめて案内してくれる。訪問者からの寄付は彼らの大切な収入源で、礼拝堂の復旧や子供達の学校運営の資金となるので、特に宿泊の際には、お礼は必ず置いていきたい。「ゲストハウス」ではなく「道場」なので、行動にはご注意を。
 
「スクール・オブ・ヴィジョン」へのアクセスは、レッドライトまで乗り合いタクシーが出ているが、本数が少ないのでチャーターのタクシー利用をお薦めする。訪問時の服装は、厳しい制限があるわけではないけれど、女性は頭を覆うものと長いスカートで、敬意を表したい。
 
「スクール・オブ・ヴィジョン」のレストラン「RASTAURANT(ラスタラン)」が、キングストンのスリーマイルにオープンする。コンテナ利用のテイクアウト弁当屋スタイルの店で、勿論、ベジタブル100%のベジレス。スリーマイルの交差点、Nova Scocia銀行の隣。オフィシャル・オープンは3月2日。
 
ぶれっせっ。Bigga Mo。

Special 'Give Tanx' to Taylor A.

PLAY IT LOUD from No.300

INNA DE YARD / MIGHTY DIAMONDS
[MAKASOUND / IDYCD9]
ルーツ・コーラス・グループの大物、遂にこのセッションに登場。ビロードの剃刀健在! ギターとパーカッションによるシンプルな楽器編成で往年の名曲達が再び歌われる。昨日や今日じゃ生まれない長年鍛え上げられた麗しのハーモニーに耳を傾けて欲しい。三本の矢は強靭だ。アコースティック・スタイルが際立つシリーズ、但し歌を輝かせる事に力を注いでいる。だから光るダイヤモンズなのさ。[輸入盤](磯野カツオ)
 
ONE PERFECT LOVE / PRINCE MALACHI
[BLAKAMIX / BLKMCD023 ]
UKに活動の拠点を移して10年程になるだろうか。同レーベルより過去にリリースされたシングル曲に新曲をプラスしたイントロ&アウトロ以外は全曲打ち込みによる作品。このレーベルはハードなデジタル・トラックと思われがちだが、本作はヴォーカルにしっくりとマッチした実に聴かせる作品となっている。歌に込められた彼からのメッセージがひしひしと伝わる一曲たりとも外しのない素晴しい出来。[輸入盤](楳原豊人)
  
ONE PERFECT LOVE / PRINCE MALACHI
[BLAKAMIX / BLKMCD023 ]
UKに活動の拠点を移して10年程になるだろうか。同レーベルより過去にリリースされたシングル曲に新曲をプラスしたイントロ&アウトロ以外は全曲打ち込みによる作品。このレーベルはハードなデジタル・トラックと思われがちだが、本作はヴォーカルにしっくりとマッチした実に聴かせる作品となっている。歌に込められた彼からのメッセージがひしひしと伝わる一曲たりとも外しのない素晴しい出来。[輸入盤](楳原豊人)
 
BORN TO LOVE / NATO
[CHARM / CRCD3185]
Ne-Yoのカヴァー曲で脚光を浴びたシンガーのデヴュー作。ゴーストも吃驚、ほぼカヴァーで占められた構成。でもね、実は癖になる秘密があるんです。感情をセーブしてスマートに歌うシルク・ヴォイスを聴いているとカヴァーが逆に武器になって親しみを感じてしまうのね。艶で勝負、R&Bタイプで大いに結構、ここまでいけば大したもんだ。知っている曲がレゲエに変身すると嬉しい快感ってありますな。[輸入盤](磯野カツオ)
 
TOO MUCH POVERTY / BARRY ISSAC
[REGGAE ON TOP / ROTCD-026 ]
プロデューサーとしての力量は勿論、第一線級アーティストとしてUKルーツ・シーンを牽引し続けるバイタリティ溢れる50年代生れの在英ジャマイカン。本作は全曲デジタル・ルーツのヴォーカル&ダブのショウケース・スタイル。ミックスは長年彼と共に制作を続けるコンシャス・スタジオのダギー・ワードロップ。UKを始めEUそして日本とルーツ・サウンドマン達は同レーベルのチューンを愛して止まない。[輸入盤](楳原豊人)
  
BEST OF EKOLU / EKOLU
[WAIEHU RECORDS / WRCD005]
ハワイを代表するレゲエ・グループ、エコルのベスト盤です。目から鱗が落ちますよ、きっと。灯台下暗し、聴けば分るさルーツ・ラヴァーズの素晴しさ。根を大事にしながら涼風をレゲエに与え美声で包み込むエコル・サウンド、カツオはもう手放せません。ぽかぽか湯たんぽみたいです。青春カム・バック、レゲエに出会った頃のフレッシュな気持ちに戻れます。グッド・ヴァイブレーション、待ってるよ。[輸入盤](磯野カツオ)
 
NO MORE FRIENDS / THE MEDITATIONS
[GREENSLEEVES / GREWCD52]
1974年に結成し、Dobby Dobsonの下、「Woman Piabba」等のヒット曲や『Wake Up』といった名アルバムをリリースしている名コーラス・グループの1983年作のリマスター盤。プロデュースはLinval Thompson、バックはRoots Radics、ミックスはSoljie Hamiltonとバックを支える面子は鉄壁で、この時代ならではの上質なダンスホール・コーラス・アルバムとなっている。タイトル曲の12"ミックス追加。[輸入盤](大場俊明)
  
DJ CLASH 3 THE HARD WAY / LITTLE HARRY, BILLY BOYO, NICODEMUS
[GREENSLEEVES / GREWCD309]
80年代によくリリースされていた2〜3人のアーティスト達による対決を模したアルバムだが、実際は各アーティストの曲が足りなくてそうなったと思われる。82〜3年に録音されたという本作は、この時期頭角を現したNicodemusに当時話題となっていた子供DJの2人、Little HarryとBilly Boyoが胸を借りるといった形のアルバム。スキルの違いは歴然だが逆にそれが面白いし、子供達のDJは実際かわいい。[輸入盤](大場俊明)
 
ホールディング・ファーム/ビジー・シグナル
[ビクター/VICP-64060]
「ここまで聴かせるDJだったとは!」と素直に驚けるのが嬉しい、アライアンス・クルー“番槍”ビジーの2nd。制作陣にDaseca、Stephen Mcgregor、DJ Karim等を迎え流行のマーチング系は勿論押さえつつ、タフな喉が奏でるたっぷりと含みのあるシング・ジェイも魅力的。アコギ一本で語る「Ghetto Youths」にいたってはその唐突な真摯さに素直に感動。間違いなく08年の顔となる作品が、早くも登場だ。(遠井なつき)
 
ゼン・アンド・ナウ/アイドニア
[ビクター/VICP-64061]
物騒ネタの尽きない、若手イチ“バッドネス”全開のこの人。このデビュー作は、彼の才能を見抜き磨きあげたCordel "Skatta" Burell(あの "Coolie Dance" prod.)との蜜月時代、04〜06年録音の曲を集めたもので、ソカっぽい超アッパーな "Inevitable" trkや、正にケルト音楽的旋律がオシャレな "Irish Dance" trk使いなど、ある意味彼の最大の魅力である“幼稚さ”と“華”がフォーカスされた抜群にノリのいい一枚。(遠井なつき)
 
エンコントロ/パサディナ
[マオ/DQC-45]
彼の作品を聴く度にこの人は本当に音楽が好きなんだなあと思う。地道に活動する音楽家による良質な作品をリリースし続けているレーベル、maoを主宰するイシモトサトシによるギター・インスト・ユニットの3年振りとなる3rdアルバム。本作も冒頭の文章通り、昔から大好きだった音楽とシンクロする自分の体内に流れているリズムを極々自然な形で音で表現している。一聴するとチルだけどタフでもあります。(大場俊明)
 
ライフ・ミュージック/KGM
[リーズ/LEIA-2003]
仙台を拠点に活動するシンガー・ソング・ライターKGMの1stミニ・アルバム。すでに地元のDate FMの番組では本作にも収録されている2曲が使われているそうなので地元の方にはご存知のアーティストなのだろう。どれもアコースティック・ギター1本で作ったようなフォーキーな曲だが、ぽっかりした歌い方やリズムの取り方はかなりレゲエ的。肩肘を張らない歌詞も含め自分の色をよく知っていると思う。(大場俊明)
 
ザ・メイキングス・オブ・ア・マン/ジャヒーム
[ワーナー/WPCR-12819]
2年ぶりの4作目。レコード会社を移籍し、自らプロダクションを興しての新作だが、従前からのファンを裏切らないどころか、今回も堂々たるパフォーマンスの連続でシンガーとしての格の違いをみせつける。ソウルネタをふんだんに配したトラック上を、その苦みばしったようなヴォーカルで縦横無尽に駆け巡る様は、まさにルーサーやジェラルド亡き後の“男歌界”を背負って立つにふさわしい貫禄を伴うものだ。(石澤伸行)
 
ラヴ・ビハインド・ザ・メロディ/ラヒーム・デヴォーン
[BMG/BVCP-21574]
2年半ぶりとなるセカンド作。デビュー時にお披露目されたユニークな音楽性は、本作で調和を伴いつつカラフルな光を放つ。サウンド・プロダクションについては、ケニー・ドープ、チャッキー・トンプソン、スコット・ストーチといった幅広な人選も手伝って、クラシカルな手触りから進取の精神に富んだものまで様々だが、当人の声が紡ぐメロディックな楽曲は、どこか人懐っこい表情で語りかけてくるかのよう。(石澤伸行)
 
ラヴ・レヴォリューション/レニー・クラヴィッツ
[EMI/TOCP-66760]
4年ぶりとなる8作目。一時期はジェイ・Zらヒップホップ勢への接近も見せていた彼だが、某邦画の主題曲となった「I'll Be Waiting」同様、アルバムで展開される世界観は、さながら原点回帰といった趣の純正ロック道。ギターとドラムが疾走するアップ・ナンバーは、ワイルドでありながらキラキラ感を含んでいるし、情感たっぷりに歌い上げられるミッド〜スロウ曲も、期待通り胸をキュンと締め付けてくれる。(石澤伸行)
 
トミィ/トミィ
[トイズ・ファクトリー/TFCK-87425]
スロヴァキア出身、シカゴ在住のシンガー・ソングライターによるデビュー作。生音をしなやかに駆使しつつ、クールな佇まいの中に甘さも潜ませた喉使いで旋律を辿る様は、90年代から連綿と続くネオ・ソウルの系譜。ジル・スコットやタイリース等との仕事を含むという彼の確かなキャリアは、小気味良い音作りや好事家のツボ付き捲りの楽曲構成にも、しっかりと反映されている。食わず嫌い厳禁!の好盤なり。(石澤伸行)
  
デプス・オブ・ファンク:キープ・リーチン・アップ:リミックスド/ニコル・ウィリス&ザ・ソウル・インヴェスティゲイターズ
[Pヴァイン/PCD-93054]
元リパーカッションズのニコルをフロントに据え、目下ディープ・ファンク・シーンを牽引中のバンドがリミックス・アルバムを発表。オリジナル作品群が湛えていたゴロゴロとしたファンキネスは、ヒップホップのみならず、ボサやレゲエの風味が加わることで、俄然フロアへの訴求力を増している。ニコルのヴォーカルも、相変わらず力強くも妖しい魅力を放つが、その響きたるや原盤では味わえなかった類のものに。(石澤伸行)
 
ヒア&ナウ/リトル・ルイ・ヴェガ
[KSR/KCCD-294]

新曲や未発表曲を含むベスト盤。マスターズ・アット・ワークやニューヨリカン・ソウル名義での作品のみならず、ソロで臨んだ他アーティストのリミックス仕事含め、彼の足跡をこうして一望出来るのは初の試みだが、改めて圧倒されるのがその豊かな音楽性。ハウスを触媒に、ヒップホップ、ジャズ、ラテンを煮込んで、パワフルかつエレガントにフロアを揺らす手管は、正に世界中のクラブ・ピープルの救いだ。(石澤伸行)
 
SOUL OF AFRICA / HAL SINGER & JEF GILSON
[KINDRED SPIRITS / KSRE 3 CD]
マッシュルーム・カットのジャズマン……てだけでタダ者ではない感満点のピアニストJef Gilsonが60年代に残した自主制作レア音源をオランダの名レーベルが再発。彼のコンボと、テナー奏者Hal Signer、バラフォン奏者Lloyd Millerとの共演を収録。聴きながら様々な巨人達の姿が目に浮かぶものの、そのどれでもないフラフラした危うさが強力なオリジナリティに。現代でいうならEdgar Jones的センスか。[輸入盤](飯島直樹)
 
KRULLE BOL / THIS IS THE KIT
[MICROBE / ***]
レイチェル・ダッドとユニットを組み、数々のフェスで人気を集める、パリ在住SSWの正式デビュー・アルバム。PJハーヴェイとの作品で知られるジョン・パリッシュをプロデューサーに迎えつつも、最小限の装飾によって逆にむき出しになったインナー・ソウル吐露。こぶしのようにゆらゆらと揺れる歌声と瞑想を誘うように爪弾かれるバンジョーの響きが、ただ“イイ感じ”だけに終わらないところが流石。[輸入盤](飯島直樹)
 
バッド・マウス/コンジュア
[イーストワークス / EWAC 1052/53]
奇才キップ・ハンラハンとアフロ・アメリカンの作家イシュメール・リードとのプロジェクトによる日本制作の05年作。デビッド・マレイのサックスを筆頭にした熟練のソロ陣に、2ドラム、2コンガ、2ベースがニューヨーク/ニューオーリンズ/デトロイト/ハバナのストリートの鼓動脈打つアスファルト・グルーヴを生み出している。昨今人気のNYワンダーホイール一派の根にはこんなタフな坩堝サウンドがある事を再確認。(飯島直樹)
 
ワールド・アウトサイド・イズ・イン・ア・カップボード/レイチェル・ダッド
[エンジェルズ・エッグ / AECD049D]
現在来日中で5月まで全国20カ所以上のツアーを行なうSSWフロム・ブリストルの、フルとしては2枚目のアルバム。英国ならではの曇り空サウンドに、ジョニ・ミッチェルを連想させる澄みつつ芯のある歌声は前作同様ながら、本作では彼女の刺繍の様に繊細で自由に編まれたアンサンブルの波間を、よりインナーなオウン・ワールドに向け遊泳しているかの様なメロディと言葉が上品なサイケデリックを表現している。(飯島直樹)
 
ファット・ループ VOL.2/V.A.
[DIMID / DMDCD-0011]
ヒップホップ・クラシックのインストゥルメンタル・カヴァー・シリーズ第2弾。デジタル化社会の中で敢えて演奏の“味”を重視した、ソウルやファンクとも取れるイイ演奏が満載。Super Butter Dog、犬式a.k.a. Dogggystyle、diyTokion等のメンバーやソロ・アーティストのバックを支えてきた影の立役者達が集まった流動的な演奏者による形式も、商業的な思惑の入り込む余地が少なく本来の音楽愛に満ちていて好感度大。(飯島直樹)
  
ザ・ハイヤーグラウンド・コネクション/V.A.
[ダブ・アイ・ルーツ/ MOPR-0017 CD]
大阪を拠点とする低音重視パーティ、Dub-I-Roots監修のコンピレーション。重鎮Hav(Soul Fire)から監修人Sak"Dub"-Iまで、知る人ぞ知る活動的で現場主義の13組フロム関西地方を収録。お世辞ではなく、本来の自由度あるダブの解釈を保ちながら、かつ決して1点に立ち止まらないオリジナリティ溢れる楽曲が揃い踏み。安易に“ダブ”をテーマに掲げた作品にがっかりした事がある人にこそ聴いて欲しい充実の逸品。(飯島直樹)

RECORDS & TAPES from No.300

Review by TAKASHI FUTATSUGI
 
 
MIX CD
 
1. Q-Tip / Abstract Innovations (Bulldogkid)
ソロ第2作の公開が待たれるカマール/アブストラクトことQティップの(“本人”が流したと思われる)ストリート・アルバム。バスタ・ライムスをフィーチュアした例のシングル曲「For The Nasty」のリミックスに始まり、アンドレ3000、へヴィ・D、ロイス・ザ・5・9、ディアンジェロ、エリカ・バドゥといったゲスト絡みの楽曲が多いのも特徴だが、結局“お蔵入り”となった生音(バンド・サウンド)主体のカマールのプロジェクトから、来る新作までの心境の変化がなんとなく伝わってくる“流石”な曲多し
 
ALBUM
 
2. Snoop Dogg / Ego Trippin' (Geffen)
「スヌープが遂にシングル曲でも歌ってしまった」と話題沸騰の「Sexual Eruption」の大ヒットで、当初の予定より約2ヶ月の前倒しリリースとなった9作目のソロ最新作。初のお披露目となるDJクイック、テディ・ライリー(!)との新ユニット(?)QDTミュージックが指揮を執り、ラファエル・サディークからケイオまで様々なトラックメイカーが関わった本作は、“自己陶酔”というタイトル通りの一人相撲中心の“新しいスヌープ像”を示す、音楽的にもディープなファンク・アルバムに。しかし、この低音、ヤバイ!
 
3. Fat Joe / The Elephant In The Room (EMI)
死ぬ気で作ったハーコーな前作が好調で、またパーティ・シット“派手な作りのギャングスタ路線”に戻った彼のソロ8作目。一部テラー・スクワッドの絶好調男=DJキャレドのコーディネイトも効いたと思しきサウス寄りの制作陣(クール&ドレ〜デンジャ)と、リル・ウェィンからJ.ホリディ、KRSワンまで、と豪華ゲストが出入りするジョーらしい懐の深い内容となっているのは言うまでもないが、古くからのファンはやはりKRSとの掛け合いや、DJプレミアとの久々のジョイントにグッとくるのでは?これぞ横綱相撲?
 
4. Raashan Ahmad / The Push (P-Vine)
西の人気ヒップホップ・バンド=クラウン・シティ・ロッカーズのフロントマンが満を持してソロ・デヴュー。ユーモアたっぷりの人間性を含めて“生粋のB-Boy”と呼べる彼だけに、オールドスクール・ライムやワードの引用も効いた変幻自在のアプローチは勿論のこと、サウンド面でもクラウンシティ調のファンキーな生グルーヴから、シンプルなブレイクビーツものまで、様々な角度から自分にとってのヒップホップを展開・追求している。ヘッドノディックから、ジャズリヴェレイターズ、ケロ・ワンらのビートもバッチリだ。
 
5. Dday One / Heavy Migration (P-Vine)
毎月のように世界各地の良質な作品を紹介しているP-ヴァインのニュー・ライン=インスト・ヒップホップ専科“ドーン”。その第一弾となるのが、このディーディ・ワンと、プロジェクト・ブロウド出身のラス・Gの2タイトルだ。ここではその前者の2ndを取り上げたい(どちらも好盤)。同じLAのカット・ケミストも絶賛した『Loop Extensions』も十分秀作だったが、よりレイヤーも複雑になった印象の今作の方が数段良い。“サンプリスト”を自認するだけあって、その使い方、活かし方にもいちいち愛を感じてしまう。
 
6. Michita / One (Libyus)
北の大地が生んだ、琴線に触れるループを繰り出すサウンド・プロヴァイダー=Michita a.k.a. Gipsy MZK Tripps 。1988年からDJを始め、マイクジャックプロダクションのJFKとA.I.N.P.を組織したり、北海道シーンで名の知れていた彼が、リバイアスのコンピに提供した「Metronome」に続いて同レーベルから発表した今作は、スウェーデンの女性シンガー=Kissey Asplundを迎えた1曲を除く10曲がインストとなる。ピアノ使いを特徴とする、遠鳴りのような神秘的サウンドは癖になる。次作はラッパー参加作、だそうだ。
 
7. Steruss / 円鋭 (Lockstock)
前作が高い評価を受けた横浜(184045)の詩情溢れる2MC+1DJグループ=Sterusの2nd。Belama 2、Crime 6、という声、スタイルは違えど、ベクトルは同じMCがそれぞれ“3つ目で見つけたフレーズ(B-BOYブンガク)”の数々は、より耳に体に染み込む様になり、全てのビートを担当するDJ Kazz-Kが繰り出す“サンプリング哲学”が物を言うサウンドもより確信に満ちた物となった。大物ジャズ・ミュージシャン、鈴木勲、スガダイローとのセッションもある種の必然性を感じさせる。円鋭の心ここにあり。
 
8. Astro / Virus Of Irony (Rovelab)
MidicronicaとImajinionのMC陣4人と渋谷Familyの看板イヴェント「神の足元」レジデンツDJ2人、そしてサウンド・プロデューサーの計7人からなるクロスオーヴァー・ラップ・グループ=Astroの1stフル・アルバム。ニュー・レイヴ、ダンス・ロック、エレクトロ・ハウスといったイディオムをわざとらしくなく取り込み、メッセージのあるキャッチーなラップの絡みで聴かせる彼らの提示する世界観は、身近な宇宙空間そのもの(?)。メロディー・センスや、トピックの妙でも確実にロックさせる期待の星。
 
9. Dazzle 4 Life / Never Give Up (Village Again)
以前紹介したDJ PMXの労作ミックスCD『LoocoHAMA CRUISING』にもフィーチュアされていた「Play 4 All G'z」を含む、伊勢のウェッサイ・デュオのデビュー・アルバムが、DS455、Big Ronでお馴染みのHood Soundより登場。メロウな風を運ぶラッパーのCMDと、トーク・ボックス及びサウンド・プロデュースを担当するT-Trippin'のコンビネーションのタイトさは、その真価を問われる本作で見事に証明されている。DS455を迎えた「Amateras Pt-2」のみならず良曲揃いの新世代ならではの一枚。
 
10. バラガキ from Yellow Diamond Crew / Mic & Roses (Kix)
平均年齢19.5歳の世田谷三茶を根城とするYellow Diamond Crewのバラガキがアルバム・デビュー。フリー・スタイラーとして鳴らしてきた彼は、若手ながらこの茨の道を行く上で何が必要か、十分に分っているようだ。通りのいい声と、柔軟なフロウ、そして「火達磨になるか雪ダルマになるか」と己に問うストリート哲学が映し出されたリリックを武器にサヴァイヴしてきた彼や、同世代のラッパーたちのハングリーな歌がD-OriginuやZipsies、Y.G.S.P.らの多彩な音の上で狂い咲く様は実に頼もしい。

SINGLE
 
11. OKI from Geek / About (KSR)
『Concreat Green』シリーズで全国規模で名を上げ、昨年アルバムをリリースしたGreekよりMC=OKIが初のソロ昨をドロップ。映像/光景が目に浮かぶような描写力とヒネリのあるリリカル・ワールドにそれをストレートに届けるフロウの格好良さは、1つ1つにドラマ性のあるアルバムというフォーマットでより見えやすくなった。Bach Logic、I-DeA、Greek(=DJ Taiki)、Sui、Zipsies、Nao the Laizaら精鋭陣のビートへのアクションもかなりのモノ。そう、先のGreekやMr.O.K.Iの参加も洒落に終わってない。
   
12. Zeebra / Bushido (Pony Canyon)
『Conc
先月号のインタビューにもあったように、今年で“ラッパー生活20周年”となるZeebraの2008年最初の一撃。人気ゲーム『龍が如く』の最新作のオープニング・テーマとなる表題曲は、D-Originu作の斬れの良いハードなトラックに乗せて、劇中の主人公=宮本武蔵よろしく“韻の刀”を振りかざす、ある意味「Street Dreams」のサムライ版とも言える揮身の一曲に。併録は前作収録のラガマフィン・ラップ・チューン「Lrycal Gunman」の、Chappa Ranks、Rudebwoy Faceを新たに加えたリミックス。

UK REPORT from No.300

Photo & Text by SIMON "MAVERICK" BUCKLAND

Buju Banton
 
Greetings Friends,
 
●ロックステディのゴットファーザー、Alton Ellisの病状をようやく確認することができた。様々な憶測が飛び交っていたので、長い間彼の家族にコンタクトを試みていたのだ。家族によれば、2007年12月に、リンパ線癌の治療のためロンドンの病院に入院したという。この原稿執筆時点では、化学療法を受けているということだった。彼はジャマイカが生んだ最も素晴らしいシンガーの一人であり、膨大な数のレコーディングがある。早く回復することを祈りたい。
 
●これまで数々のヒップホップやR&Bスターと共演してきたJunior Reidが、1980年代後期「One Blood」以来の人気を博している。かつてBlack Uhuruのヴォーカリスト(Michael Roseが脱退後に加入した)として活躍した男は、Alicia Keysのヒット「No One」のリミックスでKeysと共演しているのだ。この曲はかつてないほどの反響を呼び、ジャマイカのウェブサイト「yardflex」が、Reidのことを「現在、世界で最も注目を浴びているシンガー」だと報じたぐらいなのだ。これは少し表現がすぎているかもしれないが、このリミックスにより彼が新たなファンを獲得することは間違いないだろう。Juniorに幸運を祈る。
 
●Earl 'Chinna' SmithのプロジェクトでフランスのMakasoundがリリースしている、“Inna De Yard”(ジャマイカ版アンプラグド)シリーズの最新作を聴いた。Mighty Diamondsによるアルバムは、彼らのChannel One時代の名曲を並べたもので、今でも新鮮さと純粋さを保っている。彼らの音楽は、以前と変わらぬチャーミングさと美しさに満ち、アコースティックでシンプルなサウンドがより彼らのヴォーカルを際立たせているのだ。是非オススメしたい。
 
●Albert Griffithsの息子でドラマーのAlは、病気により引退を余儀なくされた父の代わりにThe Gladiatorsでヴォーカルを務めるようになった。同じような道を故Jospeh Hillの息子Kenyatta Hillも歩き始めている。亡き父の跡を継ぎ、長き歴史を誇るCultureのヴォーカリストの座を守っているのだ。Kenyattaは、ドイツでのツアー中に彼の母親とバスで何気のない話をしている時、父の呼吸が前触れもなしに止まったと話している。Cultureの新しいアルバムは制作途中であり、彼名義のソロ・プロジェクトもリリースされるらしい。Jospeh Hillのような偉大なシンガーの代わりを見つけるのは不可能だが、Kenyattaの声が父と区別がつかないほど似ていると言われている。早く、新生Cultureのライヴで観てみたい。きっとKenyattaは、Joesph Hillがルーツの真のスターであったことを証明するようなステージをみせてくれるだろう。
 
●Buju Bantonの『Inna Heights』(このアルバムによって彼がBob Marleyの跡を継ぐ者と騒がれた)が今年で発売10周年を迎える。これを記念して、VPがボーナス・トラックとDVD付きの豪華なアニバーサリー・エディションを発売した。僕はBujuの作品の中で本作を特に好きなわけではない。なぜ、このアルバムだけが特別扱いを受けるのだか理解に苦しむ。だが、デラックスなパッケージはファンにとってはうれしいのだろう。

Alton Ellis
 

●6月にはJah Cure、Beres Hammond、Luciano、Queen Ifrica、Taurus Riley、Dean Fraserの大規模なヨーロピアン・ツアーがある。絶対に見逃すことができない、素晴らしいラインナップだと思う。
 
●Virgin Atlantic航空のUK〜ジャマイカ路線の開通を祝って、Virginの社長、Richard BransonがBob Marley「One Love」のニュー・ヴァージョンを自らレコーディングしたらしい。Stephen Marleyがプロデュースを、I-Threesがバッキング・ヴォーカルを務めた。録音はなんとTuff Gongスタジオで行われたようだ。一体誰がこんな無意味なことを考えたのだろうか? Bransonは億万長者であるが、歌に才能があるわけではないのだ。結果にはあまり期待しないほうがいいと思う。
 
●1970後半〜80年代前半にかけて、True Persuadersという3人組がソリッドなルーツ・ミュージックを7インチでこっそりとリリースしていた。当時、僕らのような人間がそれらを熱心に買い集めていた。実のところ、彼らについて僕は全く知識がなく、グループもいつのまにかどこかへ消えてしまった。彼らの名が再び浮上したのは4〜5年ほど前。ニューヨークでDuplex MusicスタジオのDavid Ondrickが前述のグループ・リーダー、P-Tah Kruudに、彼らのダブ・アルバムの話を持ちかけたのだ。Ondrickはサックスの名手で、Coxsone DoddとRoland Alphonsoとニューヨークでレコーディングしたこともある。メロディカをP-Tahが担当し、Ondrickはサックスを吹き、ダブ・ミックスを完成させた。この結果が2004年リリースの『Old Dub Box』だ。限定発売だったが、そのVol.2も翌年リリースされた。この2作を合わせた『True Persuaders meet David and P-Tah; Old Dub Box』が現在、ウェブサイト、duplexmusic.comで発売中だ。ルーツ・ダブ系が好きなリスナーにはなかなか魅力的なアルバムだろう。
 Till Next Time................
 
(訳/Masaaki Otsuka)

What the deal is from No.300

(U KNOW)What the deal is
 
前号で、ヒラリーが勝つのではという、悲観的な事を書いていたが、情勢が変わって来た。もう一つの有力、民主党候補、バラク・オバマ氏が浮遊層の支持を勝ち取り、予備選後半で、ヒラリーを大幅に破り、党のノミネーションを勝ち取りそうだ。カラフルなセレブのサポーター達の後押しもあり、明らかに共和党とは違った、新しいアメリカのイメージを持てそうなオバマ候補だが、メイジャー・リーグ初の黒人選手、ジャッキー・ロビンソンと比較されがちである。女性候補と非白人候補という、保守派が多いアメリカには、難しい選択だが、現状をどうしても打破出来ない現政権に疲れているのは、確か?
 
●今月のムーヴメント
2月のアメリカはブラック・ヒストリー月間だったのだが、88年にKRS1を発起人としてはじまった"ストップ・ザ・ヴァイオレンス"が、20周年を迎えた。その原点は、ブラックによるブラックの暴力を無くし、ヒップホップをポジティヴなものとして残して行こうというものだったが、現在では何発の銃弾を撃ち込んでやったとか、被弾したとかが、普通にライムに登場するのが普通となってしまった。されど、その灯を点し続けるKRS一派のチャンネル・ライヴなどが、2月2日、マンハッタンはマディソンでライヴを行い、コミュニティ内の意識改善を呼びかけた?
 
●今月のトリビュート
初期のラップのルーツの一つとされる、ブラック・ポエトリーのパイオニアの1グループ、ハーレム出身のラスト・ポエッツのトリビュートが、市立大学のブルックリン校で2/10に行われた。オリジナル・メンバーの3人の他、ライトニング・ロッドなども参加、彼等に影響されたとされる現代の詩人達もその源流を汲んだパフォーマンスを見せた。残念ながら、ヒップホップ界からのコメントは皆無?
 
●今月のスポークン・ワード
同様なイヴェントが、1/25にブロンクスのアート・ミュージアムで行われた。こちらは、よりヒップホップを意識した趣旨で、グランドマスター・キャズ、ポイズン・ペン、パティ・デュークス、イモータル・テクニックスなどが、出演。よりアカデミックなイヴェントとなった?
 
●今月のお引っ越し
そもそも、50セントのレーベルに落ちついたというニュース自体がショッキングだったMOPが、結局一枚のアルバムもリリースせず、Gユニットを離れた。去年の10月にGユニットからニュー・アルバムをドロップするという発表があったが、結局、音楽やマーケッティングの方向性がグループとレーベルで折り合わなかったと、長年のマネージャー、レイジー・Eが語った。しかし、悪い事ばかりではなかったらしく、長年のグループの経済的な負担が、Gユニットとの3年あまりの関係で軽減されたとのこと?
 
●今月のプロモーション・アイディア
昨年、次のアルバムのタイトルが『Nigger』となると発表し、物議をかもしたナズだが、『Hip Hop Is Dead』のグラミーのノミネーションで、授賞式に"Nigger"とかかれたTシャツを来て、TV中継から完全に削除されてしまった。唯一、彼のインタヴューを放映したCNNでは、「俺がこのTシャツを着ている意味をアメリカに考えてほしい」と本人が語っている?
 
●今月の入所
銃の不法所持で逮捕されていたモブ・ディープのプロディジーが、2/20から、予定より一週間遅れ、入所する。カマ状細胞症候群を持病と公言していた彼だが、入所前に精密検査を行うというのが、理由?

   
沼田 充司
DJ/プロデューサー。 レーベル<ブダフェスト>主宰。 雑誌『ブラスト』でも執筆中。 ニューヨーク在住。 [Photo by Tiger]

DUBWISE REVOLUTION

Dubwise Revolution

 
Text by Kentaro Takahashi
 

KING TUBBY Photo by Shizuo "EC" Ishii 
 

 世界中のアンダーグラウンドな現場で日々生まれては消えて行くストリート・ミュージックの根底には、今なおキング・タビーが発明したDUBの手法が流れている。さて、そのDUBの魅力とは何なのか? そしてキング・タビーとは? 音楽評論家の高橋健太郎がひも解く。
 
 二十世紀を代表する音楽家を五人挙げろ、と言われたら、あなたは誰を選ぶだろうか? たぶん、答えは十人十色。あっという間にクラシックからジャズからロックから、偉大なる音楽家達の名前が上がって、膨大なリストが出来るのではないかと思う。
 
 だが、五人の中にキング・タビーを含める人はどれほどいるだろうか。たぶん、上位百位や二百位の中にも、タビーの名前を見つけるのは難しいだろう。それ以前に、そもそも彼は音楽家とは言えないのかもしれないし。
 
 しかし、二十世紀の音楽を変えた人間の一人としてなら、キング・タビーの名前は決して忘れることができない。なにしろ、1980年代以降のダンス・ミュージックやクラブ・ミュージックのほとんどすべては、キング・タビーの影響下にあると言ってもいいのだから。

 かつて、そのことを僕に雄弁に語って聞かせたのはノーマン・クックだった。ファットボーイ・スリムの、ではない。彼がビーツ・インターナショナルとして最初のアルバムを発表した直後の1990年、コールドカットとともにDJとして初来日した時のことだ。もう18年も前になるが、その後の音楽史を見れば、キング・タビーの影響力は今なお、日に日に増すばかりなのが分かる。
 
 キング・タビーはその前年の1989年の2月6日、キングストンの路上で何者かに射殺されて、48年の生涯を閉じている。事件は物盗りの犯行だろうと言われている。
 「今の音楽はみんなキング・タビーが始めたことの影響を受けている。なのに、彼はずっとゲットーで暮らしていて、25ドルかそこらのために殺されてしまった。そんなひどいことってあるかい?」
 ノーマン・クックはそう言った。

 キング・タビーがダブを発明したのは60年代半ば。レゲエという言葉がまだ生まれる以前、ロック・ステディの時代だった。
 
 1941年1月28日生まれのキング・タビーことオズボーン・ルドックは、小さい頃から手先が器用で、十代の頃にはもうハンダごてを握り、ゲットーでラジオやテレビの修理をしていたらしい。その後、デューク・リードに雇われて、レコードのカッティング・エンジニアに。また、自分自身でホームタウン・ハイファイというサウンド・システムを始める。
 
 当時、ジャマイカではシングル盤のB面にヴァージョンと呼ばれるカラオケを収録することが多くなっていた。ヴァージョンを作るには、ヴォーカル入りのトラックからヴォーカルを抜く。が、途中で逆に、オケを抜いてみたらどうだろう? タビーはそう考えたのかもしれない。
 
 カッティングのスタジオには、2トラックのレコーダーしかなかった。だが、曲の途中でヴォーカルが抜けたり、逆にヴォーカルだけが残って、オケが消えたり。そこにエコーやリヴァーブを加えてみたり。カッティングの合間に、タビーはそんなことをして遊んでいたのだろう。
 
 ある日、そうやって作ったダブ・プレイトをサウンド・システムでプレイしてみると、人々は強烈な反応を示した。当時は、それをダブ・プレイトと呼んだかどうかは定かではないが。
 
 タビーのホームタウン・ハイファイには、DJとしてU・ロイがいた。ほどなく、U・ロイはそのダブ・プレートに乗せて、サウンド・システムで喋り始める。言うまでもなく、それが後のダンスホール・レゲエ、ラップ〜ヒップホップへと連なるMC文化の発祥でもある。
 
 
LEE PERRY Photo by Sonny Ochiai 
 
60年代の終わり頃には、タビーはバーニー・リーのもとで、アグロヴェイターズと組んで、たくさんのダブ・レコードを作り始める。以後のキングの快進撃はレゲエ・ファンならば、よく知るところだろう。70年代以後は自らのスタジオを拠点に、リー・ペリーとタッグを組んだ『BLACKBOARD JUNGLE DUB』や、熱帯の夜空も凍るような美しさを持つダブ・アルバムの金字塔、『KING TUBBY MEETS ROCKERS UPTOWN』(オーガスタス・パブロ)などなど、数多くの名作を残して、ジャマイカのみならず、世界の音楽シーンに衝撃を与えていく。

 ノーマン・クックの証言にあるように、タビーの発明したダブの手法は、ヒップホップ、ハウス、テクノ、ブレイクビーツ、ジャングル、ドラムンベース、エレクトロニカなどなどに通底するアイデアとなって、80年代、90年代、そして、この2000年代に至るまで、ダンス・ミュージックの世界を席巻し続けてきた。ロック・シーンにおいても、ニューウェイヴ時期のクラッシュやポップ・グループから昨今のビョークやポーティスヘッドなどに至るまで、ダブに影響を受けながら、アブストラクトな音像を生み出しているアーティストは枚挙のいとまがない。
 
 しかし、それほどまでに巨大な音楽の革命を引き起こしたにもかかわらず、キング・タビーは町工場のおっちゃん然とした、スター性とは無縁の人間だった。タビーはダブの哲学を声高に語ったりするような人間でもなかっただろう。ただ、機械いじりが好きで、音で遊ぶのが好きで、そして、人々を踊らすのが生き甲斐のオヤジだったに違いない。

 思うに、音楽家と呼ばれる人々は、この世になかったようなメロディーやコードやリズムを生み出そうとする人々であるかもしれない。キング・タビーにはそういう音楽家としての志はなかった。だが、ひょっとすると、彼は知っていたのかもしれない。この世になかったようなメロディーやコードやリズムを作り出そうとする音楽家の限界を。僕はそんな風に思うこともある。
 
 ダブとは何だろう? ダブの強さとは何だろう? 僕がそれを深く考えるようになったのは、ちょうど、タビーの死の前後だった。1990年に僕は『音楽の未来に蘇るもの』という本を書き上げた。それは主に僕の80年代の音楽体験から導き出されたものだった。パンク、ニューウェイヴ、ヒップホップ、ハウス、アフロ、ラテンなどなど。だが、一番最後の章を僕はキング・タビーに捧げている。
 
 ダブは新しい何かを付け足していくことよりも、すでにある何かを削っていくことから生まれた。反復するはずのベースラインが消える。ドラムのビートが消える。だが、聞こえるはずのものが聞こえなくなったその瞬間に、人はそのベースラインやドラム・ビートがそこにあったことをより強く感じるのだ。ダブはそういう意味では、記憶ということと深く結びついた音楽手法だとも言える。
 
 そういえば、こんな話がある。喫茶店で小さな音でBGMがかかっている。話に夢中で、あなたは何がかかっているかなど全然、意識していない。だが、BGMが一周して、同じ曲が二回目にかかった瞬間に、ああ、さっきもこの曲がかかった、と気づくことがないだろうか。一回目は意識にも昇らない。が、二回目にはハッとする。どうやら、人間はそんな風に音楽を聞いているらしい。

NORMAN COOK (BEATS INTERNATIONAL) Tokyo 1992.7.4 Photo by Ishida Masataka 
 
 過去の記憶と照らし合わせた時にスパークする何か。音楽というのは、それを巧みに使って、人々を高揚させるのかもしれない。ダブはそこをピンポイントで突いてくる。新しいメロディーやコードやリズムを生み出すことよりも、記憶を揺さぶることの方が、より深いグルーヴの中に人を誘いこむ力を持つということをタビーは誰よりもよく知っていたのではないか。

 皮肉なことに、キング・タビー、その人についてもまた、ふっと消えてしまってから、人々はその存在の大きさを強く意識するようになった。たいした量の写真も残っていなければ、まともなインタヴューも残っているのかどうか。
 
 だが、彼のレコードは残っている。これほどまでにダブの手法が世界中の音楽シーンに浸透した今も、それらはインパクトを失うことがない。
 
 現代のダブ・ミックスはほとんどすべて、コンピューターライズドだ。オンオフのポイントも、エフェクトのセンドリターンも、フェーダー操作もすべてデジタルで正確に制御される。それに比べたら、タビーが始めた頃のダブは、恐ろしくプリミティヴなシステムで作られたものだった。トラックから8トラック程度のミキシング・デスクに向って、その場のイマジネーションで、手作業で即興的にミックスしていた。あたかも、ジャズ・ミュージシャンのインプロヴィゼーションのように。
 
 もしも、現代のコンピューターライズドのダブしか知らない人がいたら、一度、そんな70年代のキング・タビーのダブを聞いてみるといい。ゲットーのスタジオのおっちゃんであり続けた天才の、音楽の限界を超えようとした大胆さと繊細さが伝わるはずだ。
 

「音楽の未来に蘇るもの—ポップ・ミュージックの進化と深化」
(太田出版)
高橋健太郎 著


浪花男 / That's Entertainment

浪花男
That's Entertainment
 
Interview by Takashi Futatsugi / Photo by Hiroto Sakaguchi
 

稀代のエンターテイナー、浪花男が、意外にも初めてプロデューサーとして制作したコンピレーション・アルバム『ジ・エンターテイナー』が完成。ばっちりなサウンドながらも他では味わえないクスクス感を微妙にまぶした本作、早速浪花男にインタヴュー。
 
●今回“NIN-REC”としてレーベルを再始動させた理由を教えて下さい。また“GEININ”レーベルとの明確な違いがあれば。
浪花男:レーベルを再始動させたのは、広がっていくジャパレゲ・シーンに必要とされたからです。お笑いとレゲエのクロスオーヴァー地点。その場所は私が古くから着陸している場所ですが、近頃ではブームによって大変多くの人を見かける様になり、それと同時に「なんでもあり」の時代に突入し、とても混乱しています。そこでもう少し音楽寄りに軌道修正できればと思い再びレーベルを始める事にしました。GEININとの違いは、GEI(芸)だけにとらわれずNIN(人)としての器で勝負したいと思ったからです。実際にGEININだとそういったお笑いのDee Jay達と同じにされて録音したがらないアーティストも多いので、これを機に変更させてもらいました。
 
●参加アーティストの選択基準について、何人か例を挙げて教えて下さい。
浪花男:どのアーティストも以前から目を付けていた方々で、今正に伸び盛りのDaisenやKing-K等を収録出来たのはツイてるなと。あとテポドン級のChop StickやHibikilla等も喜んで曲を投げてくれたのには涙が出そうで……リスペクト! (参加が決まった順は)GoroやEl Amazonが早い方やった様な……あとプリティー(・ランクス)も。プリティーはDUB上がり。まずうちのサウンド、Sound NaniwaのDUBを録ってそれが本チャンに…。祭華Unitedは街で拾ったし。その後、制作は都内に移って皆集めてドドーっと!!!
 
●プロデューサー浪速男として心がけた事は?
浪花男:強いて言えば今回“完全プロデュース”でやったんで、異常に細かい事まで確認しなきゃならず、ちょっと面倒くさいな〜、もうやめよと思った位ですかねえ。
 
●収録された13人の曲を連続で聴いてみて、改めてスタイルの多彩さ、リリックの面白さと言う部分でのそれぞれの“エンターテイナー”ぶりを感じたのですが、ご自身では本作の特性をどう捉えられてますか? 出来上がった時の感想を。
浪花男:日頃からリリースに関係なくレコーディングをしているのであまり完成感はなかったんですが、これを機に皆さんにまた搾り出してもらって、この調子で次回作をと…。という訳で全国からアーティストを募集してます。
 
●収録曲の中で特にぶっとばされたフレーズ、リリックを幾つか挙げて下さい。
浪花男:やっぱり「かんけね〜(ゴッパッピー)」でしょう。電話で話して何回も止めたんですよ、Gokiに……「絶対通らないから」って。でも実際はすんなりいっちゃた。わからんね〜世の中は…。
 
●レコーディング秘話、笑える、もしくは泣けるエピソードがあれば教えて下さい。
浪花男:色々ありましたが、その中でも一番の出来事は、私の隠し玉でもあった大車輪の二人組みが失踪してしまった事です…。一体彼らに何があり、何処へ行ってしまったんでしょう。どなたか、彼らを見かけたら是非ご一報下さい。
 
●浪花さんらしいラヴ・ソングの「今でも…」は “Far East” リズムと歌詞のどちらが先に出来たものだったのですか?
浪花男:リズムです。私はいつもリズムが先なんです。因みにこの詞は、私の中で「Sing」と呼ばれている技法(歌い方)です。
 
●最後に今のシーンには何が足りないと思いますか?
浪花男: 魂、Rebelなもの……じゃないでしょうか。
 

""The Entertainer"
浪花男
[Universal / UPCH-1582]

Rickie-G / Everybody Needs Love & Harmony

Rickie-G
Everybody Needs Love & Harmony
 
Interview by Eiko / Photo by i-Gac
 

伸びやかで力強くソウルフルな歌声、時に甘く、時に強く自らの想いを歌い上げるシンガー、Rickie-G。待望のファースト・アルバムをリリース! 彼ならではの優しさから生まれた物語『am 08:59』に感嘆。プロローグからあとがきまで、その読後感に大満足♪
 
宅配便の手違いによりインタヴュー当日の午前に届いたCDを慌ただしくプレイヤーへ。スピーカーから流れるは……その演出が実に印象的な1曲目がプロローグとしてこの『am 08:59』という物語の主題を示唆させつつスタートした。
 
「8:59は僕の生まれた時間でもあるんですけど、人生が24時間だとしたら今だいたい9時位かなって。1stアルバムで、スタートだし、生まれた時間で、8:59が良いかなと」
 
これ迄のリリース曲のアルバム・ヴァージョンを含む全11トラック。中でもひと際輝きをみせる「No Peace No Life」。本作唯一のフィーチャリング・ディージェイ、Chozen Leeと共同制作したというこの熱きメッセージは既に巷で話題になっているようだ。軽快なダンス・トラックに乗る明確なリリックに納得し、次世代に勇気づけられる。どうしたってアゲられてしまう名曲が誕生した。
 
「平和について歌いたいっていうのがあって、平和のシンボル的な歌があったらいいなって。そしたらChozen君しかいないなって。昔から好きで、ダンスホールを聴かない人でもくると思うんですよ、あの人の言葉」
 
「ピースってスゴい深い言葉だと思うんですよ。同じ響きで欠片(Piece)と平和(Paece)。一人一人っていうPieceがあって、みんなの平和に繋がってるって」
 
プロローグから一貫したイメージのこの物語は中盤の変化球「スターオアダスト」で刺激される。仮想ビッグスター☆Mr.ナルシスター(笑)のストーリーがシニカルに語られる。興味を引くリリックの作りやギター&オルガンのうねり満載な黒きグルーヴィ・サウンドが非常に楽しませてくれる。
 
「今回のプロデュースはYozo(Rickie-G Band)と僕。だいたいこうなるだろうっていう予測がつく人が一人いてくれるって凄い作り易かったし、新しいものが出来たと思う」
 
同様のテーマを持ちながらも前出「No Peace 〜」と対照的なアプローチのリリック「Game」では辛口直球メッセージを投げながらも忘れがちな表現の自由に感謝。本作タイトルにも影響した“一日一生”という言葉や輪廻、そして物語の主題を深く考えさせてくれるカヴァー曲(原曲はサヨコ&D・ボーヴェル)「Born Again」でみせた新しい顔は実にアジア的だ。
 
「童謡っぽいのが好きなんですよね。日本の小・中学校に通っていたから、どっかで、音楽の授業とかで、好きなのって。簡単なああいうメロディってどっか残っていて、それに近いな」
 
タイトル曲「am 8:59」によりその物語は幕を閉じる。エピローグ的エンディング、見事なインスト「Close Your Eyes」の後、部屋には静寂が訪れていた。最高の演出ではないだろうか。巻末のあとがきを読むが如く、その読後感に浸り、作者の思いを考察する時間を持つ事ができる。というか、持たされる。なんて心地良いのだろう。
 
「自分から最初に出てきたモノはこれだから。思って来た何か、こう、気持ちであったり考え方や思想であったりとか、汚い部分も綺麗な部分も苦しみとかも全部、とりあえず出し切ってみました」
 
Rickieの歌の上手さは周知の事実だが、イケメン(?)シンガーの1stアルバム、どうせ甘ったるいんだろう、なんて高を括った自己を反省。そして感嘆、感謝。一つの作品としての完成度の高さ、そのサウンド、メッセージ、ヴァイブス…何をとっても極上ぢゃあないですか。am 8:59の人生観、彼ならではの優しさの詰まった物語。一冊の小説を読み終えたような、何かが心に残っている。Rickie物語、続編を心待ち♪
 

"am 08:59"
Rickie-G
[Riddim Zone / RZCD-45813]

Rankin Taxi / Rankin's Last Will !?

Rankin Taxi
Rankin's Last Will !?
 
Interview by Norie Okabe / Photo by Kobayashi Taxi
 

「人間の生きてる感じ、命そのものが音楽になってる——」。レゲエの素晴らしさについてそう語っていたRankin Taxi。初渡JAから四半世紀、レゲエ歴25周年に完成させた本アルバムは、正にその“命そのもの”を痛感させられる衝撃作だ。心が震えるというのは、こういう音楽のことだろう。
 
●まず「死ぬまで生きる」というタイトルが衝撃的でした。
Rankin Taxi(以下R):ここ数年、頭の中から死が離れないんですよ。6年前に事故で、去年は心臓の病気で死にかけてるわけだから。「死ぬまで生きてろ」っていうフレーズもあるけど、決意表明的にするには「死ぬまで生きる」だな、と思いまして。人の生き死にを考えるんじゃなく、自分の生き死にを考えるってことで、こうなりました、はい。
 
●サウンド面ではロックあり、ブルースありと変化球も多くて。またそれを見事にランキン節で持っていくところが心底スゴイな、と。
R:若い人たちがやり始める前に、いろいろやって全部潰しておこうと思って(笑)。ブルースで歌謡曲でロックステディな「悲しき工作員」なんて、新境地ですね。今までは、ほぼ来たトラックに対応するっていう形だったんだけど、今回は自分からこういうトラックを作ってほしいって注文を出したものがあるんですよ。Home Gと多麻連者に2曲ずつ。リー・ペリーのアップセッターズのリズムをやりたいだとか、“Mud Up”のリズムはラテンっぽいから、サルサでやりたいとか。あと、ジミヘンのウッドストックにおけるギターのフレーズは、なんとも哀愁の演歌な感じだったんで、それで演歌やりたいな、とか。「ギミサム・スレンテン」については、もともとカシオ・トーンにプリセットされた"Rock"(多分「Anarchy In The U.K」)から生まれたリズムってことで、それをまたロックに戻したい、とか。前からあったアイデアが実現したという感じかな。まあ、でも何をやってもランキン・タクシーですから。音楽全般が好きなわけだし、俺が今のダンスホールに固執する必要はないでしょ。“彼女は艶かしすぎる”とか歌うのは、若い人にお任せして。私は私なりの世界観なり、訴えなきゃいけないことを歌えばいいよな、と。だから、ダンスホール・ビートで歌うテーマが“人身事故”になっちゃってるんです。
 
●その「人身事故」もそうですけど、「職質246」とか、みんながおかしいって思ってることを突くのはランキンさんならでは、というか。
R:よくぞ言ってくれたっていう声が聞こえてくるような曲にしたかったんですね。共感、共感。偉そうにしないで、みんなの共感を得るためです。説教くさくなるのもどうしようもねえなって思うから。
 
●苦しみ、悲しみを感じさせる曲が多くて、いろいろ考えさせられました。
R:アニキ〜」と「One Love Punch」は明るい歌だけどね。苦労している人たちに自分を添い寝させて、こういう気持ちなんだろうなって想像力だけで作った感じですよね。自分勝手な妄想で書いてる。でも、人の苦しみをどういうふうに捉えるかっていうのは大事でしょ。それを表現のためにどういうふうに利用するのか、自分の中でのプロセスを考えながら作っていったら、こうなったという感じ。殺人を犯してしまった奴は一体どういう心持なんだろうかと考えつつ、犬や猫の命のことを思いやりつつ、命は皆等しく大切なものなんだよねって思いつつ、みんなで調和のとれた生き方ができないものかなと考えつつ、こういう曲ができてくるんだよ。最近、年寄りになったなと思うけどテレビ見てても、すぐ感情移入しちゃう。みんなそれぞれ大変だよねってことです。
 
●人の立場になって考える、という。
R:そう。「非暴力で行けるかい?」って歌ってるけど、非暴力でいくためには慈悲の心を持ち、相手を同胞であるという捉え方で、戦いがなくなるように持って行かなくちゃいけない。理想的な話だけど、どういうふうにみんなが意識改革をしていけば、そこに辿り着くのか、または辿り着けないのか。それを考えなくてはいけないよね。でも考える人が増えてくことでしか変えられないわけだから、そのためには、いい歌を残してくっていうのも大切なのかなと思う。日本ではあまり使い回されていないリアリティという隙間をもっと広げてもいいんじゃないかと思いますよ。
 
●リアリティを歌え、と。
R:レゲエのおかげでだんだん増えてると思うけど、まだまだ少ないでしょ。それにしても最近のチャラいレゲエは早く消えてほしいですねぇ。このアルバムは、その“チャラレゲ”をよりチャラく際立たせるために作ったんです。結果、暗いアルバムになってしまいましたけど(笑)。だからこそ、みんながどういうふうに感じてくれるのか、すごく楽しみなところではありますね。
 

"死ぬまで生きる"
Rankin Taxi
[Riddim Zone / Rhythm Of Life / RZCD-45811]

Ryo the Skywalker / United Front With

Ryo the Skywalker
United Front With
 
Interview by Toshiaki Ohba / Photo by Kurofin
 

2008年のシーンを先頭に立って走り抜いたRyo the Skywalkerが、外仕事=フィーチャリング・ワークスをメインに、コンピ盤への提供曲、再録音曲、そして新曲までぶちこんだ『United Front』をリリース。過去の自分にきっちりと区切りを付ける節目となる作品だ。
 
●昨年7月に4thアルバム『ONE-DER LAND』をリリースして、10月にはベスト盤やワンマン・ライヴもあって……その勢いそのままにこのワークス集ですが、新曲も入ってるし、昔の曲は録り直しだし、やり過ぎではありませんか?(笑)
Ryo(以下R):結構間隔、狭くきてますね(笑)。更にこの間にはBurn Downに「Ready Now」を提供してるし(『South Yaad Muzik Compilation Vol.2』収録)、マボロシの「あのコどこのコ」にも参加してるし(『ラブシック』収録)。この『United Front』は基本的には外仕事集なんですけど、実は『Come Home』(05年)の後に作りたかったんですよ。三部作が終っての区切りとして。でも『Come Home』の後にフィールド(=レコード会社)が変わったんで、そのタイミングとしては新しいものを見せたかったですからね。やっと今、順番が回って来ました。
 
● 分類してみると、新曲、セルフカヴァー、他アーティスト作品に参加した曲、そしてコンピ盤に提供した曲、ですね。まず新曲「Pon De Floor」の話から。
R:シングルだとミディアムが続いたんで、今回シングルじゃないけど新曲だからイケイケで行きたいなと。しかも昭和の匂いと言うかディスコチックなものを。だからミラーボールやシャンパンみたいなキラキラ感を出してるんだけど、内容はレゲエなんでちょい下品みたいな(笑)。PVも作ったんで見て下さい。
 
●ではセルフカヴァーの話を。オケも歌も録り直したとは言え「とんでけ」や「現場至上主義」を聴くと大阪パワーを目の当りにした10年前を思い出しますね。
R:がむしゃらな時期の曲ですからね。どっちの曲もトラックはChristopher Birchに作り直してもらいました。原曲のイメージを残しつつ現代版にしたかったんですよ。どっちも今でも歌ってる曲なんで歌入れは「ダブかよ!」って位すぐ終りました(笑)。これでやっと完成形をお見せできます。
 
●Papa BがPapa Bon名義で出した『Sword Man』(98年)からの「あべこべ」の再録も嬉しかった。
R:この曲のオリジナルは「現場至上主義」を録った直後、ジャマイカに修行しに行った時に録ったんですよ。今回Bon君にも歌い直してもらって。この歌詞って今の世の中の方が突き刺さる部分が多いんじゃないですかねえ? 「Journey」はBredrenの『Forward To Roots』(05年)に参加した時の曲ですね。この時期に丁度いいかなあってのもあったし。
 
● コンピ盤参加作品はガッチリとプロデューサーと組んだ感が出てますね。
R:Junior(Red Spider)の『Rock City』に参加した曲が幾つか入ってて。その当時、ジャマイカで流行ってるリズムをそのまま使って作品に出来るのが嬉しくてね。どの曲もそのテンションが出てますね。
 
●他のアーティスト作品に参加した曲となると、基本的には「こんな感じで」って指示があるんですか?
R:一から作り込む場合もあるので、その時は僕の意見も半分入ります。Mighty Jam Rockとの「オレラ〜Still」はそうですね。他のは…そうでもないか(笑)。
 
Sugar Soulとの「Ho-oh〜女神のうた」はメジャーでの一発目の仕事やったんで相当気合い入れて。DJとして学んだ事って人より前に出て声を出して目立つって事なんで、デモテープにイントロから歌い出しの最初のヴァースまで自分の声を入れたんですけど、結果それが採用されてやったった感がありました(笑)。で、その時のディレクターがRam Jam Worldも担当してたので朝本(浩文)さんと繋がって。で、朝本さんがやってた様なジャングルとかを色々と聴いたら凄くレゲエで。僕はレゲエ人としての筋を通したかったから、そこは重要な事でした。
 
Moominとの「悲しみにさよなら」はカヴァー・アルバムというコンセプトの下、参加した安全地帯の曲です(『Adapt』収録)。レゲエって米国のR&Bのヒット曲をすぐカヴァーしちゃうじゃないですか? そこにDJ入れたりして(笑)。そろそろ日本でも、もっとそういう遊びをやっていければ面白いんですけどね。
 
● こういう作品を出せるって事はレゲエDJというのもあるだろうけど、実際、大物になった証しだとも言えますよね?
R:いえいえ(笑)。でも実際、色んなタイプの曲が入っているけど、それはある意味、そのまま日本のダンスホールの歩みと重なっている部分もあるんだろうなって思いますけどね。
 
● 今年のプランは?
R:これで今までのものを全部出し尽くしちゃったんで、「何かちゃうぞ」ってものを一から作りたいとモガいてます。実際僕はレゲエ人としてのポジティヴな思想もあって「生み出してなんぼ」って思いが強いんですよ。DJの新曲のサイクルってめっちゃ早いじゃないですか。幾らヒット曲を持ってるDJでもその日イケてなかったらブーイングって言うね。常にシビアに闘って来た者でしか通用しない世界。それって凄く生き方に通じる話なんです。
 
ホンマ今年、来年でレゲエを何とかせんといかんなって思ってます。日本のレゲエに対して自分が出来る事を吐き出したいからこそ、今、レゲエを根本から見つめ直しているところです。
 

"United Front〜works best〜"
Ryo the Skywalker
[Riddim Zone / RZCD-45836]

2008年2月28日

DUBWISE REVOLUTION 5

Dubwise Revolution
Riddim 300th Issue presents MUTE BEAT ONE NIGHT LIVE

 
Text by Shizuo "EC" Ishii
 
 
 

 長くやってればいいわけでもない。いや、Riddimのことです。今年で25年、今月で300号になってしまった。ここはひとつ身を引き締める為にも何かイベントでもやらないとな。1年も前からあれこれ考えていたのだが、良い案が出ないまま今年になり、遂に2月になり「もうやめようぜ!」ということになってきていた。なぜならどんなビッグ・アーティストのコンサートをやろうとも、我々はプロモーターを目指しているわけではないから、大した意味がない。個人的には初めてブレークビーツをプレイしたというジャマイカ系のクール・ハークを招聘してレゲエ&HIP HOPのパーティでもいいかなと思っていたが、もはやビザだって取れやしない。
 
 そんな時、北中正和さんが書いた『Jポップを創ったアルバム』という本が平凡社から届いた。その本は1966〜1995年までの30年間の膨大なアルバムの中から69枚のアルバムをピックアップしたものだったが、その中にMUTE BEATの『FLOWER』が取り上げられていた。とても良く書かれたその紹介文に気を良くし、早速こだま君に電話をした。
 
 次の週になると、こだま君が「たまには行かないと道を忘れるよ」と缶ビールで喉を湿らせつつOVERHEATに現れ、話を聞いたのが前ページのインタビューである。話し終わって、軽い気持ちでRiddim300号イベントの話しついでに「どう?MUTE BEATでライブをやってくれない?」と聞いてみた。計算してこんな事を聞けるわけがない。すると、「ええっ、」としばらく絶句した後、「う〜〜〜ん、いいですよ」と言ってくれたのだ。聞いた本人がビックリだ。正直なところ、この時点ではやれると思っていないから、その日は誰にも電話していない。
 
 翌日の夕方になってようやく六本木インクスティック時代のMUTE BEATのメンバー、つまり松永孝義、増井朗人、朝本浩文、DMX宮崎に電話をした。驚くべき事にここまでの5人の答えが「いいですよ」だった。こうなるとずっと電話がつながらなかった一番最後の豪太の返事が聞きたくてマジでドキドキ。だが豪太も「おめでとうございます、いいですよ」だった。しかしだ、返事と現実的にやれるってことは違う。MUTE BEATの全員が現役ミュージシャン。しかもそれぞれがポリシィあるプロジェクトを抱えている忙しい連中だ。『Riddim』がやりたいのは3月。もう1ヶ月しかない。そんなアホなのである。そこいらのイベントと違うのはバカでも分かるが、やりたいと声をかけて、全員OKなのだから一度OVERHEATに集まってもらって本当に実現できるのか先ず顔合わせをするしかない。この時DMXからも「1回集まったほうがいいよ」と電話あり。しかし最初のミーティングの時間調整だけで1週間が必要だった。

 その日は2月13日。時間は昼12時。この日のこの時間しかスケジュールが合わなかったのだ。次々に現れた6人のサムライ。全員が顔を合わせるのは89年以来だから20年ぶり。いや豪太は86年にロンドンに渡っているはずだから23年なのか?
 
 久しぶりの戦友との再会は少しばかりの照れもある。あの頃ビシッと気合いを入れあった様々な思い出もある。「みんな変わってないね」と笑顔が出る。記憶力が無くなったはずの頭の中にグワーっとフラッシュバック。DMXが原宿にあったモンクベリーズでHIP HOPやトラブル・ファンクを廻していたシーン、、、レコーディング中にいなくなったワーカホリックの朝本を探したらトイレの中で爆睡していた、、、S-KEN、じゃがたら、トマトス達との東京ソイソース、スパイラル・ホールでのGladdy、クアトロ・オープン記念でのローランド・アルフォンソとの共演、渋谷公会堂ワンマン、パブロとのレコーディング、六本木インクスティックのライブを見ているオーナー松山勲さんの顔、SF、LA、 NYにもツアーしたっけ。

 さあ本当にやるのかやれるのか? 20年のブランクでお客は来るのか? だって30歳以下の人達はナマを見た事が無いんだぜ。宣伝する時間だってない。そんな問題もある。それより何より「みんなちゃんとミュージシャンをやってるんだから、今さら中途半端な再結成なんてイヤだ」と宮崎の正論。それはオレだって最初から分かりきっているが「Riddim300号のために一晩だけ集結して欲しい。イメージはMUTE BEATワンナイト・ライブ、事実オレもまたあの音を今聞きたい。300号記念には他のどんなアイディアもかすんでしまう」と食い下がる。こだま君が「石井がやって欲しいと言ってるからやるんだ」と言ってくれて殆どの人が納得してくれたようだった。そして、突然こだま君が当日のソング・リストのアイディアを書いた紙を差し出す。そうだ、いつもこだま君がライブ直前の楽屋でその夜の雰囲気で手書きしていたリストと同じもの。それもオープニングの曲はこれで、この曲とこの曲はフィルを入れて繋ぐなどというとてもリアルなリスト。それを見たみんなが一気に20年前にタイムスリップ。宮崎がイントロを口ずさむ。「リハなんていらない」と誰かが言う。現実になった瞬間だ。こいつらはガンコものでプロ。筋金入りのプロ中のプロ。分かっちゃいたが軽い気持ちじゃできねえ。
 
 気持ちはひとつになったが、3月に音が良いクラブで空いてる所があるか。スケジュールが合うのか。全員のスケジュールに加えハコのスケジュールだ。いくら楽天家のオレといえども心の中が重くなってきた。その時ポケットのケイタイが鳴り、3月こそ無理だったが4月2日にリキッドルームが取れて全員のスケジュールもピッタリ。もちろんリハのスケジュールも取れた。コレが最初の奇跡だ。

 彼らの曲をメンバー以外だったら多分オレが一番多く聞いているはずだ。音を出す才能に恵まれてはいても、そこには出す理由が必要な一筋縄ではいかない男達がMUTE BEAT。昔の曲をセルフカヴァーして喜ぶような単純な奴らではない。そしてハッキリ言わせてもらう。一番見たいのはオレだ。もうひとつの奇跡を起こしてもらおう。
 

 
【Riddim Presents MUTE BEAT ONE NIGHT LIVE】
[出演]MUTE BEAT(こだま和文/増井朗人/朝本浩文/
    松永孝義/宮崎 "DUB MASTER X" 泉/屋敷豪太)
[日時]2008年4月2日(水)OPEN 19時/LIVE START 21時
[会場]LIQUIDROOM

 
 


 
1. "Mute Beat" [Pithecan / 8" Analog / 1983年] Gotaが歌う「Butterfly」とこだまの名曲「Still Echo」をカップリングで収録。
 
2. "Mute Beat TRA Special" [TRA Project / Cassette / 1985年] 豪華な木箱に入ったカセット。後に『No.0 Virgin Dub』と題してCD&LP化された。
 
3. "Japanese Dub" [Roir / Cassette / 1986年]「TRA Special」と同内容。アメリカのカセット専門レーベルから発売された。
 
4. "Mute Beat" [Overheat / 12" Analog / 1986年10月]「Coffia」「Summertime〜Frozen Sun」など初期の人気曲を収録した12"シングル。

5. "Still Echo" [Overheat / 12" Analog / 1986年12月]名曲再録。タイトル曲にAugustus Pabloが参加した貴重なヴァージョンも収録。
 
6. "Organ's Melody" [Overheat / 12" Analog / 1987年3月] タイトル曲と朝本浩文作「After The Rain」、ヤン富田が参加した「No Problem」も。
 
7. "Still Echo" [Overheat / CD & LP / 1987年5月] 上記12"シングル3枚をまとめた初のCD作品。当時ワッキーズからLPもリリースされた。
 
8. "Flower" [Overheat / LP & CD / 1987年6月]「Metro」「Whisky Bar」「Beat Away」といった名曲が詰まっている。
 
9. "Hat Dance" [Overheat / 7" Analog / 1997年7月]「Hat Dance」はカンタスオーストラリア航空のCMに使われた。「Pain」をB面に併録。
 
10. "Sunny Side Walk" [Overheat / 12" Analog / 1988年3月] 軽快なタイトル曲とブレイクビーツ、増井朗人作「A Stairwell」を収録。全曲未CD化。
 
11. "Lover's Rock"[Overheat / LP & CD / 1988年6月]「Kiyev No Sora」他、名曲/名演揃い。メッセージ性の強いジャケもインパクト大。
 
12. "Mute Beat Dub Wise" [Overheat / CD & LP / 1989年5月] DUBの巨頭2人とDub Master Xによる日本初のDUBアルバム。ジャケはナンシー関。
 
13. "March" [Overheat / CD / 1989年7月] ギターに内藤幸也、キーボードに北村賢治を迎えた最後のスタジオ・アルバム。
 
14. "Mute Beat Live" [Overheat / CD / 1989年11月] ライヴの評価が高かった彼らの88〜89年のライヴ音源集。グラディとの「Tear Up」も。


Don Corleon / Dancehall

Don Corleon
Dancehall
 
Interview by Rockers Island / Edited by Riddim
 

"Drop Leaf" に代表されるワン・ドロップ・リディムから "Jonkanoo" といったグルーヴィなダンスホール・リディムまで、レゲエのツボを知り尽くしている間違いなく現在のトップ・プロデューサーの一人、Don Corleon。彼が近年制作したヒット曲やヒット・リディムをまとめたベスト盤『Reggae Kingdom』と最新リディム・アルバム『Love Potion & Far Away』が同時リリース。キングストンのスタジオにいた彼を直撃。
 
●まず自己紹介からお願い致します。
Don Corleon(以下D):俺はDonovan Bennett(ドノヴァン・ベネット) a.k.a. Don Corleon(ダン・カーレオン)。出身はセント・エリザベスとウエスト・モアランドの間。1978年生まれの29歳。ジャマイカのトップ・プロデューサーの一人だ。
 
●トラック制作をスタートさせたのはいつ頃ですか?
D:2001〜02年頃だね。俺は当時Vendettaってサウンド・システムをやっていて、ミックス・テープを作ったり、Fully Loadedやアップ・タウンで回してたんだ。友達から「ダブ用にオリジナル・トラックを作ってレコーディングしろよ」って言われてたんだけど、俺はサウンド・マンだったから断り続けていたんだ。でもある時、作る事に決めたんだ。それからさ。
 
●レーベル設立の2002年からヒット曲を絶えず出し続けていますが、その秘訣と言うと?
D:秘訣なんて何もないよ。でも、腕の良いセレクターやサウンドって人を盛り上げる良い曲を知っているだろ? 俺は元々セレクターだったから、その知識を制作に注ぎ込んでいるんだ。だからヒット曲が生まれているのかもしれないね。
 
●Sean PaulやRihannaなど、ワールドワイドなアーティストからも引っ張りだこだけど、彼らとは元々どんな関係だったの?
D:Sean Paulは元々姉と従兄弟の友達で、一緒に学校へ行っていたんだ。俺がサウンドを組んだ時に「ダブを録らせてくれよ」って電話して、Arrowsで5曲録って。俺がプロデューサーになってからもずっとやり取りしているよ。彼のアルバムに参加するきっかけになったのは、ファースト・アルバムを聴いてセカンドの制作に携わりたくなったからなんだ。「レゲエ・ミュージックのためにもっとデカいことをやらかしたいんだ!」ってSeanに伝えてね。
 
Rihannaは、Sean Paulが家に連れて来たんだよ。そこで2人のコンビネーションの話が出たんで、その場で "High Altitude" リディム(※2006年リリース)を聴かせたら、気に入ってくれてって感じさ。
 
●あなたのスタジオにはどんなアーティストがよく出入りしていますか?
D:頻繁に来るのは、Vybz Kartel、Munga、Alaine、Pressure、Bling Dawg、T.O.K.、Morigan Heritage、Tarrus Riley、Sean Paul……。あとは大体……ま、ほとんどのアーティストが来るかな。
 
●今も名前が出たDon Corleon Recordsファミリーの3人、つまりMunga、Alaine、Pressureですが、それぞれの魅力と言えば。
D:3人とも類の無い才能を持っているよ。Pressureは純粋なワン・ドロップ系で、ハードコアかつ、ラヴァーズ・ロックなアーティストだ。俺のヴァイブスをかなり、あげてくれる(笑)。
 
Mungaはダンスホールだけど、ワン・ドロップの才能もあるバランスの取れた歌い手。今はダンスホールに集中しているんだけど、俺自身、彼にはその方向性を見出しているよ。
 
Alaineはセンセーションを起こしたフィメール・シンガーだ。ワン・ドロップ、R&B、ダンスホール、ハードコア……全てのテイストにマッチする。女性で、ルーツもいけて、ダンスホールもOK。これ以上な人材はいないだろ?
 
●他にマイ・アーティストと思える人はいますか?
D:もちろん、いるよ! 将来性があるのはWaspだね。
 
●リディムのアイデアはどこから得るのですか?
D:ヴァイブスからだね。上がったり下がったりに従って、その時々のヴァイブスに因るよ。何か法則に則ってというのではないよ。実際の制作時だって特に何かを意識しているわけじゃないんだ。ただビートを作っているだけ。それにベースライン、ドラムと色んな音を重ねていく。その時の流行を考えずに作り溜めて、ダンスホールに合うものはダンスホールに、インターナショナルに合うものはインターナショナルに、と出し分けるんだ。でも思いがけない結果もあるよ。例えば "High Altitude" リディムなんかは、ダンスホールをマッシュ・アップさせるだろうなって思って出したら、国際的にヒットしちゃったからね。
 
●でも、ずっとインディペンデントなスタイルにこだわってますよね?
D:そうだね。俺みたいな細かい人間は、仕事の初めから最後まで気になるんだ。見渡してみれば、自らの手元に権利が何も無いプロデューサーって沢山いるんだよ。だから慎重にインディペンデントで活動する事にしたんだ。最初は「そんなので稼げるのか?」って笑われたけど、自分の夢を大きくしていくためにはどこかでリスクを背負わなくてはならないだろ? だから俺はDon Corleonという権利を自ら持つ事にしたのさ。
 
●ジャマイカのダンスホール・ミュージックを更に世界に向けて発信していく事は、あなたの肩に掛かってると思うのですが、その気はありますか?
D:勿論だよ。俺はもっと活動範囲を広げたいんだ。情報を掴んでセレクトし、色んなマーケットで展開したいんだ。クリエイティヴな事は色々やっていきたいよ。そして、いつかは尊敬しているSly & RobbieやSteely & Clevieの様にレゲエをもっと広げ、歴史に足跡を刻みたい。
 
●今回日本で "Love Potion" と "Far Away" の2ウェイ・アルバム『Love Potion & Far Away』が発売されますが、まず、本国でのこの2つのリズムも反響はいかがですか?
D:ジャマイカでも良い具合にプレイされているね。フロリダのチャートではPressureの曲が入ってるし、Alaine「Sincerely」、Tarrus Riley「Back Biter」もチャート・インし続けているよ。俺の作品っていうのは突然出てきて、ハイプする物、いわゆる一発ものなんかじゃないんだ。聴いてくれる人々に染み渡った頃に「ヤバい!」って言ってもらえる事が多いんだ。結果、良い具合に現場でプレイしてもらえる。チャート・インするのは、本当、みんなの支持があってのものだよ。
 
●"Drop Leaf"、"Sasons"、"Heavenly" に続くミディアムのリディムですが、過去の自分の作品に勝てそう?
D:あはは、自分のリディムを比べたりしないよ(笑)。「このリディムはヤバい、これ以上のものは作れない」って思ったとしても、すぐに作れちゃうし。
 
●Beres HammondやTarrus Riley等、Done Corleonものとしては新しいメンツも参加しているけど、いきさつは?
D:Tarrus RileyはBling Dawgが「Donの所でレコーディングをした方がいい」と言ってくれて紹介してくれたよ。俺も是非録りたかった一人だ。それで、実際レコーディングしてみたら、思いがけない結果が生まれたんだ。非常に素晴らしい曲を2つも歌ってくれたんだよ。それが、"Love Potion"と "Far Away" リディムの2曲さ。
 
Beres Hammondはもう何年も……そう、4年ぐらい口説いてたんだ。彼のスタジオに顔を出したり、俺の曲を聴かせたり、なぜレコーディングさせてくれないかダメな理由を聞いたりね。そしたらある日「Don、レコーディングしよう。オケを持って来てくれ」って言われてさ! 喜んで持って行ったのさ。
 
●同時発売のベスト・ワーク集『Reggae Kingdom』では、"Good To Go" や "Trifecta"、"Jonkanoo"、"Seasons" 等、ヒット・リディムとヒット曲が沢山収録されていますが、あなた名義のベスト盤が日本で出る事をどう思う?
D:凄く嬉しい事だよ! 例えばハイプするためにデカい会社からリリースする事も出来たけどさ。でも、レゲエに対して理解があり、日本とジャマイカのレゲエに対して先を見るヴィジョンを持ち、尚且つ市場にアプローチする能力がある所を探してたんだ。この先もっともっとリリースされるよ、日本の皆には本当に楽しみにしていてほしいな!
 
●日本の印象はどうでした?
D:大阪では、道を歩いているとどこの店でもレゲエがかかっていて驚いたよ。日本の人達を本当にリスペクトした瞬間だったね。ジャマイカ人には、確かに日本人をリスペクトしていない奴もいるかもしれないけど、こんなにも俺らの音楽を愛し、喜んでくれている日本の人々に俺は感謝しているよ。
 
●日本のアーティストやレーベルからもオファーが来ると思いますが、今までは誰と仕事を?
D:Pushim、Fire Ball、Mighty Jam Rock、Ryo the Skywalker……全員の名前は思い出せないけど、たくさんだよ。
 
●日本のアーティストともガッチリ仕事をしてみたいと思いますか?
D:もちろん! Pushimとはぜひやってみたいんだ。
 
●今はどんなプロジェクトを進行中?
D:Alaineのセカンド・アルバムを手がけているよ。Mungaのアルバムも4月には出るかな。Sean Paulの新しいアルバムにも取り組み中。やるべき事を着実にやっているよ。
 

"Reggae Kingdom"
V.A.
[Koyashi / KHCD-005]



"Love Potion & Far Away"
V.A.
[Koyashi / KHCD-004]


 
 
Artist from Don Corleon Family
Pressure
 
Interview by Minako Ikeshiro
 

 ドン・コルレオーニ・チームのラスタ部隊、プレッシャーの最新作はチェック済みだろうか。世界的なヒットとなった「Love and Affection」と同タイトルのアルバムでシンガーとしての堂々たる力量を示した彼に、真冬のNYで話を聞いた。
 
 すっきりした顔立ちとおっとりとして物腰のプレッシャーは、USヴァージン諸島の出身で、アメリカでの生活経験もあると言う。「2000年前後にジョージア州に2年ほど住んでいた。99年にアポロ・シアターのアマチュア・ナイトに出たことがあるよ。半分バウンティ・キラーのマネで、半分オリジナルだった(笑)。まず、地元のタレント・ショウで優勝したから出場できたんだけど、ダンスホールだったのに観客の反応は凄かったよ」。現在、比較的新顔のラスタ系シンガーの中で頭一つ出ている彼だが、高校生までは、「プレッシャーではなくデラーノで、ラスタでもなかった」そう。「アメリカで叔父と住むようになって、それまで演奏していたドラムやトランペットができなくなって、独学で聖書やラスタファリズムを学ぶようになり、魚と野菜だけ食べるようになった。家の中でベジタリアンは俺だけだったから、食べられる物がない日もあったよ。同時に、ケイプルトンやシズラ、アンソニー・Bやジャー・キュアーといったアーティストを聴くようになった。自然にその手のレゲエを歌うようになって、島の友達に曲を送ったら、みんなに“サポートするから頑張って続けろ”って励まされた。それから、島に帰ったんだけど、両親が別れちゃってさ。母が住むところは与えてくれたけど、自分で稼がなくちゃいけなくて高校生でハスリングの生活をするようになった。それが今の強みになっているね。そのプレッシャーに負けなかったから、名前もプレッシャーにしたんだ」と、一気に「プレッシャーが出来るまで」を語った。
 
“Love and Affection”では曲の良さもさることながら、彼の歌唱力に驚いた人も多いはず。「小学校の時はクワイヤーで歌っていたけれど、ドラムとトランペットの方が熱心にやっていたね」とのこと。では、ドン・コルレオーニとの関係を確認しよう。「ダンは俺のマネージャーであり、メンターでもある。ヴァージン・アイランドでアルバムを作った時のプロデューサーが、マイアミの楽器店で働いていて、ダンがそこのお客さんだったんだ。彼がダンにCDを渡して、それを気に入ったダンが俺をジャマイカに呼んで最初にレコーディングしたのが“Love and Affection”だった」。そのあとの活躍はご存知の通り。カリブでは「レゲエと言えばジャマイカ」というイメージがあるが、「ヴァージン・アイランド出身でも問題ないよ」と言い切る。「大切なのは才能であって、出身地ではないから」。確かに。最近のラスタ・シンガー同様、彼のリリックもジャー讃歌で終始しない。「やっぱりリアリティを歌うのが大事だ。みんな、説教やファンタジーより、現実的な内容を聞きたがっているし、俺はスピリチュアリティとリアリティは共存すると思う。精神面を大事にしながら、現実を生きてかないといけないのだから」。最後に、アルバムのコンセプトを尋ねた。「愛、だね。平等、正義、エンプレス(女性)や親に対する敬意、そして神様に感謝を捧げることに大切さも歌っている。神に祈りを捧げれば、ジャーはきちんと観ていることや、アフリカ回帰などいろいろなテーマを扱っているから、誰でも楽しめると思うよ」
 

"Love And Affection"
Pressure
[Don Coleon]


DUBWISE REVOLUTION 2

Dubwise Revolution
Yann Tomita

 
Text by Shizuo "EC" Ishii
 
 
 

 ヤン富田が作り出す音楽の魅力は、『Music For Astro Age』を始めとする本人名義やドゥーピーズ名義の作品、そしていとうせいこう『MESS/AGE』やToruman『友情』といった彼がプロデュースしたりミュージシャンとして関わった作品を聴けば確認出来る。そんなあらゆる音楽を広い視野で捉えた上で自己表現を続ける稀代の音楽家ならではの視点でDUBを語る。
 
 まずは、『Riddim』25周年、通算300号おめでとうございます!
 
 92年に『Music For Astro Age』を出した時に、『Riddim』で3回連続で特集をやって頂いたんですよ[※編集部註/92年12月〜93年2月にかけて掲載。現在は06年にアスペクトから出版されたヤン富田の書籍『フォーエバー・ヤン ミュージック・ミーム1』にて全文を読むことが出来る]。当時、確か脱サラしたばかりの工藤(晴康)氏がインタビューして下すって。その時にキング・タビーの話になってね、その流れでライヴ・エレクトロニクス・ミュージックのことを述べたんです。DUBのルーツとしてライヴ・エレクトロニクス・ミュージックを関連づけて語った人は多分、それまでいなかったと思うんです。現代音楽の作家でジョン・ケージだとか(カールハインツ・)シュトックハウゼンとかの流れが40年代前半からあって、その潮流の中にライヴ・エレクトロニクス・ミュージックがあって…。 
 
 レゲエやDUBといったジャマイカの音楽がヒップホップのルーツだからとか、多くの音楽のルーツみたいなことを言う人もいるじゃない? ジャマイカ音楽の熱狂的なファンが、そういう風に言いたがる気持ちは分るけど、でもちょっと言わせてもらうと、必ずしもそうではないんだよね。そういう見方をしちゃうと凄く通り一遍のつまんないことになっちゃうと思うんだ。じゃあ、それらの話をする前にまずは電子音楽から説明しとこうかな。
 
 僕は、電子音楽というのは、電気を使って新しい音楽を創造する“姿勢”を持った音楽のことと位置づけてます。一方で、電気を使えば、例えばシンセサイザーとかを使って作った音楽だったら何でも電子音楽になるのかって言ったらそうではなくて、電気をただ単に使った音楽は正確には「電気音楽」というふうに位置づけてます。つまり電気を使って、今までに無い音楽表現を模索すると言うか追求する“姿勢”を持っているかいないかで「電子音楽」(ELECTRONIC MUSIC)になるか「電気音楽」(ELECTRIC MUSIC)になるかなんです。どちらが優れているのか、といったことではなくてね。電子音楽とは、そういうことで、ストリートやクラブから派生した音楽、DUBに限らずヒップホップやテクノ、ハウス等々も電子音楽の体系の中で位置づけることができるんです。そういった体系の中で、例えばDUBに接すると、いままでとは違った音が、或は気づかなかった音を発見できるかも知れません。そういったことで可能性は新たに広がっていくんだと思います。
 
 それで、ライヴ・エレクトロニクス・ミュージックと言うのは、電子音楽の生演奏ということです。
 
 例えばブラス・クインテットの編成にマイクを立てて、作家がミキシング卓のところに座る、そして卓やエフェクターを操作して電子変調する。それはライヴ・エレクトロニクスの作品なんだけど、正にジャマイカでキング・タビーがDUBとしてやってたことと方法論としては同じなわけ。ただし、92年当時も言ったんだけど、ジャマイカのDUBはダンスホールがあって、しかもそれが野外で行われてて、さらに政治状況も反映されてあの形が形成されていったと思うのね。そこは全くの突然変異だと思うんだ。
 
 あとはドラッグだね。これもそういう流れをひも解いて行くと50年代のビート(ビートニク)があって、LSDが出来て。要するに人間の可能性を追求する道具として化学薬剤のLSD-25が開発されて、それを使って人間の意識を拡大していこうという運動があったわけ、サイケデリックっていうね。それは、当初快楽を求めるものとして存在したわけではなかったの、だから66年に規制されるまでは合法だった。意識の拡大、人間の可能性の追求ということで、そういう時代に電子音楽家もそれを体験して実験をするわけ。音楽の製作現場では、ミキシング卓が“楽器”としてクレジットされたりしていくわけ、60年代中後期の幾つかのサイケデリック・アルバムにはね。演奏自体はロック・ビートによるものだけど、それは正にタビーがDUBでやったことのルーツみたいなことで、関連づけて言うとね。もちろんレゲエのビートじゃないから、そこは違うんだけど、実はそういう繋がりがあるんだ。
 
 で、さっきも言ったけど、92年の『Riddim』誌上でそういう発言が出来たっていうのは、僕にとってはエポックであったかな。ホルガー・シューカイが98年の『モジュレーション』って映画[※編集部註/イアラ・リー監督による98年制作のアメリカ映画。一言で言えば電子音楽の進化の歴史を振り返るドキュメント映画]の中で「シュトックハウゼンがDUBの創始者だぜ」みたいなことを言ってるんだけど、シューカイは元々シュトックハウゼンの弟子筋にあたるからそういうのもあったんだろうけど、正確にはケージの方が先駆(40年代初頭)だったと思います。それで、そういった発言は、公式的には『Riddim』が最初だったかな。アカデミズムではなくて、真に進歩的なストリート・マガジンで発言できたことに僕は誇りをもってます。そうは言っても僕は、タビーのこと好きだからね。DUBはとかく専門領域の話になっちゃうんだ。機材の話になったり、研究してそのサウンドを追求していくと、作品を聴いた時にタビーか、(プリンス・)ジャミーか、サイエンティストか分るようになる。タビー没後、未発表音源が大量に発売されたけど、その中には明らかにタビーのミキシングでないものも混じってた。そうゆうことが解ってくるの。ジャンルとかとは関係なく音と対峙する形でそうゆう付き合い方をすると、色んなことが見えてくる。その面白さも広がってきたりするんだよね。音楽とはそういう付合い方をすると更に面白いと思います。
 

 
YANN TOMITA 音楽家 東京都出身
最先端の前衛音楽から誰もが口ずさめるポップ・ソングまでを包括する希代の音楽家。音楽業界を中心に絶大なるフリークス(熱烈な支持者)を国内外に有する。日本初のプロのスティール・ドラム奏者として、また大量の電子機材を含む研究機関、オーディオ・サイエンス・ラボを主宰する。近年(2006年)の作品として、書籍『フォーエバー・ヤン・ミュージック・ミーム1』ヤン富田著(アスペクト刊)、そのサウンド・トラックとして「フォーエバー・ヤン・ミュージック・ミーム2」(NMNL Records)、国内外にカルトな人気を誇るDOOPEES の「ミュージック・ミーム3」(NMNL Records)がある。

 
 

 
※資料提供(from Audio Science Laboratory Archives)
 

2008年2月29日

DUBWISE REVOLUTION 3

Dubwise Revolution
Mad Professor

 
Interview by Toshiaki Ohba / Translate by Ichiro Suganuma / Photo by Simon Buckland
 
 
 

 UKに拠点を置き独特なDUBミュージックを30年間に渡り追求し続けているAriwa Soundsの主宰者、Mad Professor。レゲエ・アーティストの作品はもちろん、Massive Attack、The Orb、KLFといったDUBの影響下にあるアーティストから、The Beastie BoysやRancidに至るまで仕事をこなす。逆に言えば、あらゆる音楽が彼のDUBを求めているとも言えるのだ。
 
ダブ・ミュージックに夢中になったきっかけを教えて下さい。 
Mad Professor(以下M):僕がダブ・ミュージックを作り始める前は、だだ単なる音楽ファンだった。とにかく色んな音楽が好きだったんだよ。レゲエ・ミュージックはもちろん、ソウル・ミュージックも色々収集していたんだ。だけどダブ・ミュージックを初めて聴いた時に俺は感動したんだ。僕は電気関係の知識がバックグラウンドにあったからかもしれないけどね。
 
 ダブ・ミュージックはKing Tubby、Lee Perryらによって始まったけど、僕が思うに多くの名作ダブ・アルバムは1975〜76年頃に作られているんじゃないかな。僕はそれらを聴いて自分もやりたいと思い立って、1977年に小さなスタジオを始めたのさ。18歳頃だったかな。スタジオって言ってもあの当時だから最初は4トラックだったんだよ。それが1979年になる頃にはプロフェッショナルなスタジオになった。とにかく自分がそれに夢中になって、スペシャルな音楽を作りたいっていう思いやアイデアがあって、スペシャルなダブの楽曲を作り始めたって事さ。
 
 今は2008年だよね? 現在、ダブ・ミュージックはあらゆる音楽に存在しているし、たくさんのファンがいるけど、ダブ・ミュージックが始まった当時は、聴いても嫌いな人もいたし、理解しない人も多かったし、変わった音楽だと思った人も結構いたと思う。だた僕の場合は、その音楽が好きで、それを作る技術があって、テクノロジーが好きだったら、貴重で価値のある音楽と思えたんだよ。
 
ダブを定義すると? 
M:ダブ・ミュージックはエレクトロニック・ミュージックにおける最初の形だ。そしてミュージシャンじゃなく、エンジニアがその音楽の魂やヴァイブスのクリエイターになった最初の音楽でもある。ダブ・ミュージックにおける重要な要素は、フィーリングとエフェクトなんだ。でも、ただ単純にエフェクトをかければいいって訳じゃなくて、エフェクトのクリエイティヴな使い方が重要なんだ。
 
キング・タビーのサウンドの魅力、そして彼から受けた影響と言えば?
M:彼のリバーブ、そしてエコーの使い方、それら全てが好きさ。彼って想像力が凄かったんだと思うよ。とにかくスペシャルなんだ。そのシンプルさとか、全ての音があるべき場所にある感じとか。『King Tubby Meets The Upsetter At The Grass Roots Of Dub』なんか特に最高だね。もちろん僕とは違うスタイルを持っているし、バックグラウンドや方向性も違うから、自分がキング・タビーとどの点で一緒のアプローチをしているのかは分らない。自分が好きな事をキング・タビーが好きかどうかは分らないしね。テクニックに関してもそうだよ。彼が生きていた時代、つまり50〜60年代の機材はバルブエレクトロニック(真空管)を使っていたし、70年代に入るとゲルマニウム・トランジスタになって、70年代中盤にはシリコン・トランジスタになっていった。僕がダブを始めた頃は主にシリコン・トランジスタの頃で、ICに変わりつつある頃だったから、テクノロジーが違えば、アプローチも違ってくるからね。今は更にコンピュータだから。ProTools は全てがどうなっているか知らなきゃいけないからスタジオにはあるけど、あまり好きじゃないから使っていない。好きじゃなきゃいけない訳じゃないからね。僕が実際やっている事は30年間変わってないよ。アナログだし、オートメーションは使わないし、相変わらず24トラックだしね。だから新しい作品を作ってもいつものARIWAサウンドになるんだ。
 
ARIWAサウンドの独自性を自身で分析して下さい。
M:それは僕には分らないな。サウンドの中に自分自身が入っているからね。つまりそのサウンドが僕って事なんだ。僕は他に出来る事がないから、自分の出来る事をしているだけなんだ。実際、自分が何をしているか分らないんだ(笑)。でも、それをやり続けているんだ。もしかしたら僕のファンならば、マッド・プロフェッサーのサウンドをリバーブやエコーだけで話を片付けないで、詳しく説明してくれるかもね。
 
今後、ダブ・ミュージックはどのように進化すると思いますか?
M:僕たちは神を信じて、未来は彼の手の中にあり、未来は神のみぞ知るところって事かな。今も彼の手の中にあるのさ。僕はただの人間で、未来の事は分らないよ。神に訊く事を俺に訊かれてもさ。とりあえず今は、間もなくリリースされる Susan Cadoganの『Two Sides Of Susan』を終えたところだね。その次は『Dub You Crazy 2008』、その他は古いシングルを集めたARIWAコンピレーション・アルバム『ARIWA Singles Box S
et』をリリースする予定ってところかな。
 
 最後に言っておきたいんだけど、ミスターECとは長年仕事をしてきて、初めて日本にコンサートで呼んでもらったし、オーバーヒートからはアルバムを出してもらっているし、本当に感謝しているよ。300号おめでとう! ここから更に素晴しい25年が送れる事を祈っているよ!
 

span class="cdtitle">"Dub Me Crazy"
Mad Professor
[Ariwa / ARICD 001]
記念すべきアリワ・サウンズのレーベル第一弾アルバムであり、その後も続く "Dub Me Crazy" シリーズ第一作目。
 

"King Tubby Meets The Upsetter At The Grass Roots Of Dub"
King Tubby Meets The Upsetter
[Celluloid / LTM 1035]
本文中にマッド教授が薦めているDUBミュージック界の両巨頭による作品。 
 

"Two Sides Of Susan"
Susan Cadogan
[Ariwa / Victor / VICP-64063]
『Soulful Reggae』以来13年振りに2人がタッグを組んだビター&スウィートなラヴァーズ・アルバム。日本先行販売。
 

DUBWISE REVOLUTION 4

Dubwise Revolution
Kazufumi Kodama

 
Interview by Toshiaki Ohba / Photo by Shizuo "EC" Ishii
 
 
 

1981年、MUTE BEATの前身であるRUDE FLOWER結成以来、現在に至るまでの長きに渡り一貫してレゲエ/DUBにこだわった音楽を作り続けているこだま和文。彼を突き動かし続けるレゲエ/DUBとは何なのか? 何が魅力なのか?
 
●こだまさんにとってのDUBというものを具体的に言葉で言い表すと。
こだま和文(以下K):そうだね、そういう話をする前にいつも言ってきたことなんだけど、僕にとってはDUB=レゲエですから。まずは、DUBはレゲエありきなんですよ。しかもその中でもリズムありきなんですね。だからドラムとベースがあってDUBなんですよ。つまり、簡単に分りにくく言うと(笑)、レゲエの骨格なんですよ。そのレゲエの骨格と言うのはドラムとベースなんですよ。剥き出しになった骨格に何だか分らないものがまとわりついたものが僕にとってのDUBなんですよ。でもそれをひっくるめて結局はレゲエなんですよね。それは元々レゲエ自体にしっかりしたもの…リズムがあって、歌があって、それでスタジオ・ワンで録音されてきた様なものがずっとあって、そんな歴史の中である時期から何だか分らない何か(響き)がそこに加わってきた訳でしょ。グルーヴもあれば、トランスもあれば、色んなことがあの中で起きてしまったという。
 
とにかくレゲエはリズムなんですよね。彼らがカリビアンってこともあるだろうし、アフリカンってこともあるだろうけど、とにかく色々あったリズムの中から何故かあのリズムが出てきた。そしてそれがもの凄く音楽の骨格になっているということですよね。これが強いんですよ。それでどこまで行ってもレゲエの一番の発明はね……音楽だから「発明」って言葉は不適切かもしれないけど、やっぱりワン・ドロップに尽きるんだよね。ワン・ドロップって言ったってルーツ・ラディックスのワン・ドロップもあるし、スライ&ロビーのもあるし、カールトン・バレットのワン・ドロップもあるんだけど、総じてワン・ドロップっていうことが不思議。今どんなダンスホールのトラックを作っている人もさ、気がつくとワン・ドロップのトラックを作るでしょ、結局は。あれがミソですよ。あのリズムから離れられないところがあって。それプラスDUBなんですよね。しかも曲の主役である歌を取っ払って、演奏だけにしたもので聴くなり踊るなりして楽しむなんて、殆どジャマイカだけで起こったことですからね。
 
● では一体、どういうところに我々は惹かれてしまうんでしょうか?
K:簡単に説明できないところがあるからなんでしょうね。簡単に解釈されて、簡単に流行って、次は何?っていうシステムの中に入り込んで行かない、何十年経っても説明のつかない何かがあるってことでしょ。それはやっぱりレゲエなりDUBの出どころの強さと言うか、アフリカから連れてこられたアフリカンがあのカリブの小さな島に住むことになって、それで出てきてしまったリズムでしょ。実際、いつまで経ってもラジカルだし、最前線にある音なんだよね、感覚が。
 
僕もね、うんざりするぐらい聴いてきたし、演ってきたからさ、時々離れる時もあるんだよね。それでヒップホップ行ったり、クラシック聴いたり、ポップスも色々聴くんだけどね、今自分が一年の間、或いは一ヶ月の間でもいいんだけど、家で時間がある時に何をターンテーブルに乗せるかっていうのは見えちゃうんだよね。暮らしの中にあるから。しょっちゅう乗せるのは、(オーガスタス・)パブロとリー・ペリーとキング・タビーとスカタライツ、ジャッキー・ミットゥなんですよね。やっぱり凄い音楽だと思うよ。「それは好きだからでしょう?」って言われればそういうことなんだけどさ、もうちょっと違う感じなんですよ。客観的に見て、自分で思うんだ。そう、OVERHEATが昔出したオーガスタス・パブロの顔のアップのCD、あれは2枚のアルバムを合わせた奴だけど(『Augustus Pablo』と題してOVERHEATが88年にリリース。内容は75〜82年までの音源を集めた『King David's Melody』と82年作『Earth's Rightful Ruler』をカップリングしたもの。写真1)、『King David's Melody』とか単品で持ってても、あれを聴いちゃうわけ。日本盤で出た名盤中の名盤なんだよね(笑)。俺、一番聴いてるかもしれない。ま、歌って言うとまたちょっと違うんだよな。歌っていうのは絶対的に歌だから。とにかく僕の中ではタビー、パブロ、リー・ペリーはちょっと別のところにいつもある音楽なんだよね。オールマイティって言うかさ。
 
●でもそう考えるとミュート・ビートって凄いですね。偶然でも今挙げた彼ら全員と一緒に演っている訳ですから[編集部註1/パブロとは86年12月にリリースされた12インチ・シングル「Still Echo」で共演(その後同名アルバムにも収録)。キング・タビーとリー・ペリーとは『MUTE BEAT DUB WISE』(89年作/写真 2)で共演。ペリーとはその後、こだまの1stソロ作『Quiet Reggae』(92年作)でも共演している]。
K:それは石井(EC)さんのお陰でもあるんですけど。僕の中に起きた奇跡ですよ。3つの奇跡。こんなことはあんまり無いと思いますよ。それを自分の糧として今までやってこられたんじゃないでしょうか。
 
●その内の二人が既に亡くなってしまい…。
K:更に言えば、ローランド・アルフォンソ、トミー・マクック。そういうことになっていくでしょ。既にリー・ペリー以外の皆さんいないわけですよ。強烈ですよ。それだけで生まれてきて良かったなって思うわけですよ[編集部註2/ミュート・ビートはローランドと1988年7月15〜17日の3日間、渋谷クアトロのオープニング記念ライヴで共演。この時の模様は1999年にローランドの追悼盤として『ローランド・ミーツ・ミュート・ビート』と題されOVERHEATよりCD化された]。
 
●実際、こだまさんがここまで長い間、DUBにこだわり続けて創作や演奏活動をしているのは何故なんでしょうね?
K:簡単な答えとしては、僕が聴いているレゲエは、色んな音楽をひっくるめて一番モダンで、しかも音楽の中の音楽だからですよね。とにかく音楽として飽きない響きを持ってるんだよ、DUBが。つまりレゲエのリズムを骨格にして作られた音楽が。
 
●それは何故だと思いますか?
K:それはアフリカンだし、カリビアンだし…。歴史の中で彼らは無理矢理奴隷として連れて来られてしまってさ、それで否応無しに住んだところがジャマイカだったっていう。そこから始まっていると思うね。僕らには本当は理解出来ない恐ろしさとか、孤独感とか、切なさとか、痛さとか、或いはそれらがあるからこそ彼らが感じてきたちっちゃい……僕らにしてみたら小さいことかもしれない喜びの大きさとか、ありがたみの大きさと言うかさ、喜怒哀楽のうねりと言うか、陽の光の眩しさが元々違ってたんじゃないかなって。そこから出てきた音楽を僕らは聴かされているんじゃないかなって感じるんですよ。なかなか的確な説明は出来ないけど、逆に説明出来ないものを持っているからそこまで聴き続けてきてるんだろうね。だから本当に未だに凄いと思うの、パブロのDUBとか演奏を聴くと。
 

King Tubbyを囲むエンジニア4人のそろい踏み。Tubby亡き後は、Peego(左)がDigital Bスタジオに、Fatman(左から2人目)はJammy'sスタジオに移る。右端は宮崎“DMX”泉。(1988)

Riddim 300th Issue

Riddim 300th Issue
 

Wayne Smith, King Tubby, Gladstone "Gladdy" Anderson (L to R) / Photo by Shizuo "EC" Ishii
 
25年前にたったの3000部からスタートした『Riddim』がおかげさまで今号にて300号になりました。この長い間には様々な音楽が流行ったが、我々が注視してきたHip HopもReggaeも音楽全体の中で確かな地位を得たことは紛れもない事実であろう。『Riddim』は世界と一瞬でつながるインターネットの時代でも必要な雑誌でありたい。そんな時代だからこそ、今こそ温故知新の気持ちでDubを取り上げた。本誌でさえ予想しなかったライヴDubバンド、 Mute Beatのワン・ナイトも実現した。 


Dubwise Revolution Text by Kentaro Takahashi
 
Dubwise Revolution / Yann Tomita
 
Dubwise Revolution / Mad Professor
 
Dubwise Revolution / Kazufumi Kodama
 
Dubwise Revolution / Mute Beat

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