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Unmissable Story extra pieces from Ruffn' Tuff vol.6
Clive Hunt

 
Interview by Tadahiro Konoe / Translated by Mizuho Takahashi / Photo by Masataka Ishida
 

先月DVD化され再び話題を呼んでいる映画『Ruffn' Tuff』のために取材した数十時間に及ぶテープはインタビュー集として書籍化されているが、その書籍からもページ数の制限でもれてしまった人達の発言を採録する当コーナー。今回はクライブ・ハント編の最終回。ザ・ローリング・ストーンズがレゲエに憧れた理由や、ブルワッキーとのニューヨーク時代などについて語ってくれた。
 
なぜ、ストーンズの連中がレゲエを好きになったかって? そうだなぁ。身震いするような音楽っていうのは、ま、音楽全般が元々そうなんだろうけど、キャンディーやドラッグと同じで、やめられなくなるものなんだよ。でも、なぜレゲエかというと……俺はその種の専門家じゃないし、知っていて成功を収めているのはレゲエの世界だけだし、ま、音楽全体の知識はあるけれども、うまく言えないが、初期のレゲエはミステリアスだったということだね、R&Bとかロックといった超メジャーな音楽の人たちにとっては。いいかい? レゲエは謎めいたものだった。なんだか複雑そうに見える。ジャマイカを見渡せば確かにラスタはいるけれど、レゲエ=ラスタじゃないだろ? それは後になってクリス・ブラックウェルとボブ・マーリーが混ぜ混ぜしただけのこと。レゲエはジャマイカ音楽のバラードだよ。レゲエを“ラスト・ミュージック”だとか言ったりするが、まあ、あれも単なる宣伝文句に過ぎない。
 
 レゲエは、俺が自分で手がけた曲を聴いても、なんだか不思議で難しい感じがする。ミュージシャンにとってもそうだ。ドラムはずっとワン・ドロップ。あの当時、レゲエ以外の大物ドラマーがアレを聴くと驚いた。だが、実際には凄く単純なんだよ。要はアクセントとビート。一般的な音楽の拍子はワン・トゥー・スリー・フォー、ワン・トゥー・スリー・フォー。西洋の音楽は全部これ。白人も黒人もジャマイカ人も西洋の音楽スタイルで育ってる。アフリカに起源がある連中にしても、これだ。ところがレゲエのビートはアクセントがひとつじゃない。それがまずミステリアスなんだ。レゲエのミュージシャンが売れてラジオなんかでも聞けるようになると、「これは何だ?」って騒ぎになる。だって、(ワンドロップのリズムで)ワン・トゥー・スリー・フォーなんだから、凄く目立つ。
 
 一度レゲエのドラムとベースについて書いたことがあるけど、書き終えるのに一ヶ月かかった。有名ミュージシャンの中には本にするなと忠告してくれた人もいる。その本がレゲエの全てを単純化しすぎることになると言ってね。俺は怒って、原稿を手にしたまま、そいつと言い合いしたけどね。これもジャー・ワークスのひとつだと思ってやり遂げたよ。でも、その俺にもうまく言えない。レゲエにはガンジャや太陽きらめく島のヴァイブスやただ他の音楽と違うということ以上の何かがある。そして非常に単純な音楽だ。それは確かだ。俺の個人的な意見だけど、レゲエはもうずっとずっと前から世界中の様々な音楽の影響を受けてきた音楽だ。世界中どこへ行っても、レゲエが影響を受けて取り込んだ音楽の断片が見つかる。特殊な文化の中の音楽は除くけどね。それは間違いなく言える。
 
※     ※     ※
 
 色々話したけど、ひとつ話してないことがあるな。ブルワッキー(Wackie'sのロイド・バーンズ)とのニューヨーク時代のことだ。ワッキーズから出た超有名アーティストがいるんだ。気がついてる? ブルワッキーも俺が数年前に話すまでわからなかったんだけど、アルファ・ブロンディがそうなんだ。そもそもコロンビア大学でアルファ・ブロンディを見つけたのは俺だ。アルファ・ブロンディは当時、学生だった。当時はアルファ・ブロンディなんて名前じゃなかったけどね。それに俺はアルファ・ブロンディというやつが誰なのか長い間知らなかったぐらいだ。俺が知っている彼はセドゥー・コーニーだったから。
 
 あれはマックス・ロメオとピーター・トッシュとブラック・ウフルーのコンサートがコロンビア大学であった時のことだ。ジャマイカのアーティストがショウをするときは見に来てくれと電話があるから、その日も俺はバックステージに行った。行けば「クライブ!」と抱擁で歓迎だ。わかるだろ? その様子を楽屋でじっと見ているやつがいた。小脇に本なんか抱えてる。そいつが近づいてきて「オマエは誰だ?」と俺に聞いた。「なぜそんなことを聞く?」と俺が言っても「オマエは誰だ?」の一本やり。「誰だ?」「誰でもない」のやり取りがしばらく続いて、ついにセドゥーが聞いてきた。「どうしてアーティストが皆、お前に挨拶するんだ?」って。教えてやったよ。「俺も彼らと同じ世界の人間だから。ジャマイカ人だけどニューヨークに住んでる。久々の再会なんだ」ってね。すると彼は本の中に見て欲しい曲がいくつかあると言う。文字を見るだけじゃ音楽は判断できないから、彼にブルワッキーのスタジオに来いと誘った。俺はスタジオの隣に住んでいたからね。ま、スタジオに住んでいたといってもいい。あの頃、みんなあそこで暮らしてただろ? マキシン・ストウもいた。今は偉くなっちゃったけどね。ジョン・ブーツも住人だった。
 
 ともかくだ。俺はアルファ、いやセドゥーをワッキーズに来させた。ちょうどニューヨークで大きなブラック・アウト(註:77年7月25日のニューヨーク大停電のこと)があった頃だ。76年とか77年とか。ワッキーズで彼はフランス語とアフリカの言語でちょっとしたレゲエの歌を歌った。面白いと思ったね。スタジオはセッションの準備がしてあって、俺がエンジニアで一人で色んなことをやっていたわけだけど。そういう中で俺はピアノを弾きながら彼に言った。「ボブ・マーリーの歌を知ってるか? 歌ってみろ」って。彼は「War」をフランス語で歌ったよ。俺とドラマーはいい感じだなと思って、次の日にもう一度スタジオに来るよう頼んだ。
 
 翌日、彼は曲のリストを持ってやってきた。そして、その日にブラック・アウトがあったんだ。彼はすごく怯えた。俺たちは皆、それまでにニュースで見たことも聞いたこともないようなことを目の当たりにした。ひどいことが起きたんだ。警官が狂ったように路上で人々を殺した。本当にひどかった。俺はアルファをスタジオの地下に泊めた。ベッドを貸してやって、俺は床に寝た。彼女がいたからね。あれで彼は気が変になったに違いない(註:コロンビア大学卒業後、本国に戻ったアルファは精神病院に一時、入院させられている)。何かがおかしくなってしまった。以来、彼に会うチャンスはなかった。俺は俺で、その後ドラッグで10年以上、病院に入っちゃうわけだし。俺も最悪だったんだ。ドラッグ中毒の程度が進んじゃって、とんでもないことになって入院した。
 
 俺がジャマイカにあるドラッグのリハビリ施設にいた時、そこの人が俺に「音楽業界の人なの?」と聞いてきた。いろんな人が俺を訪ねてくるからね。俺は彼女に「好きなレゲエ・アーティストは?」と質問してみた。彼女は「アルファ・ブロンディが好き」と答えた。アルファ・ブロンディ? 名前は聞いたことがあるような気もするがよく知らない。「クライブ、知らないの? 彼は世界で一番のレゲエ・アーティストよ」と言うじゃないか。「そいつが一番なわけがない」と言ってやった。「彼の曲を聴いたことないの?」。「ないね」。というわけで、彼女は休暇でイギリスへ行った際に雑誌とCDをお土産に持ってきてくれた。雑誌の表紙にはアラブ風の巻物をして目だけ見せている男が写っていた。驚いたよ。「おいおい! これはセドゥーじゃないか!」。「いいえ、クライブ。この人がアルファ・ブロンディよ」。「冗談じゃない。これはセドゥーだ。昔、俺がこいつを友達のスタジオに連れて行ったんだ。セドゥー・コーニーだ」。「ちがうわ、アルファ・ブロンディよ」。本当に彼だったんだよ。
 
 その後、俺はフランスのプロダクションをプロデュースするようになった。フランスでレゲエ革命が起きていた絡みでね。俺はその革命の影にいた男というわけだ。革命を次の段階へと進めた張本人の一人だと思ってる。ちょっとしたフランスのアーティストを俺が手がけると、滅茶苦茶ヒットしたんだよ。ところで、フランスでは売れたアーティストはプラチナとかゴールド・レコードでいっぱいの豪華な家に住むようになる。ああいうのは何故かジャマイカでは見ることがないな。ともかくだ。ある時、レコード会社のやつがアルファを知ってるかと聞いてきた。「もちろん知ってるさ。昔から」と答えてやった。彼は俺がアルファと関係があったなんて思わずに、自分がアルファと知り合いだってことを俺に自慢したかったんだと思うね。なんたってアルファはケタ違いの大スターだからね。で、ある夜、そいつからホテルに連絡があった。「クライブ、お友達のアルファに会いたいかい?」。彼は俺をアルファのいるホテルに連れて行った。変な感じだったよ。彼がホテルのフロントにフランス語で「クライブ・ハントがアルファをたずねてきた」とか何とか言ってる。忘れもしないよ。フロントがアルファの部屋に電話をしたら誰かが出たようで「お客様が見えております」と俺の名前を告げたんだが、その後フロントの奴は「お電話にはお出になられたのですが、その後、アルファ様からの返事がありません」と受話器を耳にあてたまま変な顔をしていた。二分後だ……エレベーターのドアが開き、「ミスター!」とアルファが俺に向かって飛び出してきた。長いこと抱き合って再会を喜び合って以来、俺たちの関係は順調だよ。近いうちに、彼との間にもっといいことが起こるかもしれないね。
 
 
■CD
「Ruffn' Tuff 〜 Founders of The Immortal Riddim」
O.S.T.

[Overheat / OVE-0100]
¥2,625(tax in)カリプソ、スカ、レゲエなど全16曲のベスト・セレクション。
 
 
■BOOK
「Ruffn' Tuff:ジャマイカン・ミュージックの創造者たち」
監修:石井“EC”志津男
A5判/192ページ

リットーミュージック¥1,890(tax in)

出演者の中から13名のインタヴュー+石井、石田、落合のエッセイ集。
 
 
 
 
 
 
Ruffn' Tuff THE DVD
Text by Hajime Oishi
 
 
昨年末から公開された映画『Ruffn' Tuff』。その内容については本誌でも大きく取り上げてきたが、このたび早くもDVD化されることになった。ここでしか観れない特典映像も収録されているようで、その内容をチェックしてみよう。
 
「今、ジャマイカの映画を作ってるからさ」。そう、石井志津男監督/OVERHEAT社長に聞いたのは去年の春あたりだったと思う。それからしばらくして、僕は原宿のアストロ・ホールで試写を観させていただくことになった。暗闇にボンヤリと浮かびあがるキングストンの灯り。グラッドストン“グラディ”アンダーソンの「Twinkling Star」が静かに響き渡り始める——。全82分。僕の涙腺が崩壊したのは2か所。グラディがボロいピアノで「Eastern Standard Time」誕生のいきさつを語るシーン、そしてそのグラディとストレンジャー・コールが身を寄せ合いながら「Just Like A River」を口ずさむシーン。身体のなかがジンワリと熱くなり、頭のなかがクラクラした。なんてロマンティックな映画なんだろう、それが見終わった直後の率直な感想である。
 
 その『Ruffn' Tuff』がDVD化される。特典映像として収録されるのは、まずグラディとストレンジャー・コールによる「Just Like A River」のミュージック・クリップ。未使用映像と劇中の印象深いシーンを織り交ぜながら、“川の流れのように”大らかな2人の歌声がゆったりと流れていく。2人の人生とジャマイカ音楽史のどこまでも雄大な流れがさりげなく交差するようなこのクリップを観ていると、またもや涙腺が緩んでしまうのだった。そして、こちらも貴重なクライヴ・ハントとリン・テイトの未発表インタヴューも収録。本編で使用されなかった証言は書籍版『Ruffn' Tuff -ジャマイカン・ミュージックの創造者たち』、そして本誌でも何度となく紹介されてきたが、まだまだネタはあるのだ! 特にクライヴ・ハントが明かすエピソードは非常に興味深いものだが、ここでそのネタをばらすのは止めておこう。そして、さらには石井監督と澤美代子によるオーディオ・コメンタリーとライナーノーツも——。
 
 
『Ruffn' Tuff』を観ておもしろかったのは、登場人物の証言が食い違っている点が多くあること、そしてそれをそのまままとめてしまったところである。その作りは(石井監督自身が認めるように)確かに乱暴だし、言ってしまえばこの映画はジャマイカ音楽の正史を取り上げたものとは言えないだろう。だが、ジャマイカ音楽の正史って? この映画のなかに登場する面々のギラギラした顔つきを観ていると、その歴史はアーティスト/プロデューサー/関係者ひとりひとりの人生のなかにしかないのかもしれない、そうとすら思えてくる。そして誰がなんと言おうとも、自分が見てきたこと/感じてきたことしか信じないジャマイカ人たちの、ガンコで揺るぎない人生哲学にヤラれてしまうのだ。劇場では何となく観ていたシーンにも、実はカッコいいジジイが映っていた……そんな発見もあって、やっぱりDVDで観直しておきたい『Ruffn' Tuff』である。本当にみんなイイ顔してる!
 
「Ruffn' Tuff 〜 Founders of The Immortal Riddim」DVD
監督:石井 "EC" 志津男
[Dex Entertainment / DXDS-0064]

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