東京の秋を爆音で彩るオリジナル・ビッグ・ダンス、「Soul Rebel 2008」が盛況の内に幕を閉じた。トップの座を譲らぬビッグ・アーティストから今観ておきたい旬な若手まで皆、夏の長期ロードで鍛え抜かれたハイ・レヴェルなパフォーマンスで魅了してくれた。

SOUL REBEL 2009

2008年10月12日、日曜日。このシーズン最高の秋晴れの好天に恵まれた中、今年の「ソウル・レベル」は行われた。
 昨年同様、日比谷公園では「鉄道フェスティバル」が開催されており、その楽しげなヴァイブスの中を通り抜けつつ、音楽堂に向かう。若干、オープンが遅れていたので、入り口近くでビールを飲みながら、訪れる人々を見ていた。カップルが多い。レゲエ好きが集まってくる様子に接し「健全だな」と思う。ちょっと見、「ガラ悪そう」に見えたとしても、心を病んでない感じ。勝手にそんなこと思いつつ、2本目の缶を潰す。秋晴れのこんな日が、1年を通して1番気持ちいい、とか思う。
 1時間近く遅れて、「ソウル・レベル2008」は始まった。今年は、埼玉のレゲエを引っ張り続けるサウンド、Maximumのセレクションが、観客を迎え入れる。更に新しい試みとして、バンドの演奏ではないが、5組の注目すべき若手アーティストがフィーチャーされていた。若さと情熱で過激な発言も飛び出した親指ヘッド。元気ものの印象を残した風(ふう)。今、そのステージに立っている喜びが伝わってきたAkane。多くの観客に受け入れられた導楽。そして注目の女戦士Mison-B。闘魂伝承。受け継ぐ者たち。これからは君たちの時代だ。
 再びMaximumのプレイをはさんで、我等がHome Grownの登場。ゴールデン・ウィーク辺りから始まり、おそらくここまで5ヶ月以上のロードをHome Gは続けているはずだ。マジお疲れさんです。だが、今年の野外の演奏は、これが最後とのこと。早いもんだ。
 そして怒濤のショウのスタート。
 まずEnt Deal League。ソロを出したDomino-Kat、Micky Richはいつにも増してパワフル。Ken-Uがそれをサポートしつつ、要所要所を締めて行く。
 
 痛快なサード・アルバムをラガなやり方で投下したばかりのYoyo-C登場。フリー・スタイルを駆使して確実に観客をロック。熟練の技が光った。
 
 続いてFire Ballから、日本の「スティクリ」ことSticko(Truthful) & Criss。ソロ曲や、ボブ・マーリーを始めとするレゲエ・スタンダードの熱唱など普段では見れないショウの構成で盛り上がった。
  1部のトリは、Mighty Jam Rockの3人衆。「ソウル・レベル」には無くてはならない存在。彼等の様な「ソウル・レベル」レギュラー陣が、夏の各地のレゲエ・フェスの核になっていることは誰もが認めるところだろう。余裕のステージだった。
 
 最早、恒例といっていいSunsetのプレイをはさんで、後半はMoominからスタート。こんな秋晴れの夕暮れには、Moominの歌がよく合う。「歩いて帰ろう」辺りは本当にマッタリしてしまった。
 
 今回の「ソウル・レベル」は、演者側に共通した「ジャパニーズ・レゲエの再スタート」的な思いがあったのだろうか。毎年、見て来た僕も、また新鮮な気持ちで見れたほど、全体的にライヴが面白かった。そんなテンションを引き継いで登場したH-Manも貫禄のステージを披露。揺るぎないものを感じた。
 
 そして多くのものを背負って前に突き進む男、Ryo the Skywalker登場。真摯なメッセージを、レゲエに対する想いを、情熱を込めてたたみかけるライムを、観客は受け取ったことだろう。濃密な空間が日比谷野音を埋め尽くしていた。
 
 そして女王のステージ。列島をサーキットして帰って来たこの場所は、少数精鋭に囲まれた、真のPushimのステージだ。「Rainbow」のイントロで登場し、心を奮い立たせるストロングなチューン「Survival Future」で客席のヴァイブスは頂点に達する。Jing Tengの新たな一面を垣間見れるファンキーなスカ・ナンバー「Love This Music」も素晴らしかった。そしてこの夏のテーマ曲とも言える「Rainbow」に聞き入り、「I Pray」を歌い上げたその後の、最後の最後にサビだけを聞かせてくれた、彼女の2年半ぶりのアルバムへの序曲「Renaissance」。「再生」や「復興」を意味するこの言葉は、静かな、だが確かな、そして大きな愛情も含んだ「決意」を感じさせる。「ソウル・レベル2008」のエンディングは、そんな風だった様に思う。
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 無論、今までもそうだったのだが、これから、観客、リスナーも含めたこの音楽に関わる全ての人たちにとって、全員にとって、ある意味、正念場な時期に突入していくのだろう。好きなこの音楽を感じながら、大切な時間を過ごしていこうと思う。

Text by Naohiro Moro from Riddim 308