「東京のど真ん中で野外ダンスを!」の掛け声と共に2000年秋に日比谷野外大音楽堂でスタートした「Soul Rebel」も今年で10周年。その道程はジャパニーズ・レゲエ・シーンの進化/深化と共にあった。そしてこの日、鍛え抜かれたパフォーマーと観客が一体となり、大団円を迎えた。

SOUL REBEL 2009

あの日から丸9年の月日が流れた訳だ。2000年10月8日。ジャパニーズ・レゲエが、次のステージに進出するための、新たな出発の日であったと思う。あの日感じた、このジャンルが間違いの無いものとして定着していく予感。それは確実に履行され、ご存知の様に今がある。
 日比谷の森の木々に囲まれ、丸く切り取られた野外音楽堂の青い空と、周囲を取り囲む官庁街のビル群。そんなバビロンの井戸の底から拳を突き上げ、魂の反逆を謳い続けて来た「ソウル・レベル」。東京で開催する意義を貫き、シーズンの終わりを告げるライヴとして、毎年、日比谷の秋の1日をレゲエで染め上げて来た。そこには特別な意味があると思う。
 2009年10月11日。そして今年、10回目の「ソウル・レベル」は、第1回目のあの日と同じ様な、素晴らしい秋晴れの空の下、開催されたのだった。
 
まずはヒューマン・クレストのプレイで、場を和ませながら、客を迎え入れ、ショウはスタート。今年は2バンド体制。予々その名前を耳にしていたアルプス・バンドがついに登板だ。そのフレッシュな演奏に乗せて、フレッシュな若手のステージ。親指ヘッド、ルイード、アカネ、ミソン・Bと続く。ミソン・Bの時には関西の注目株、アポロも登場、コンビネーションを披露した。
 そして第1部のトリには、この秋、セカンド・アルバムをメジャーからリリースするエント・ディール・リーグの3人。野音でのその人気ぶりに、東京ローカルである彼等らしさが見て取れる。
 タクシー・ハイファイのスティーリー追悼セレクションで心地よく過ごしてる間に、ホーム・グロウンがスタンバイ。重低音のヴァイブレーションが野音を包みこむ。
 御大ランキン・タクシーでハッピーに笑い、チェホンの巧みなライム捌きに感心し、兄貴ナンジャマンの心意気を受けとめる。ショウは軽快に続き、シークレット・ゲストとして登場したのが、ファイヤー・ボールのクリス。2曲ほどソロを披露して客席を沸かせていった。
 
2部のトリは早くもマイティ・ジャム・ロックの3人。ジャンボ・マーチ、タカフィン、ボクサー・キッド。「The Three Musketeers」が夕暮れ時に絶妙にマッチしていた。
 サンセットのプレイで踊っているうちに、すっかり日比谷野外音楽堂は夜の闇の中に。ショウは最終セグメントに突入。
 NGヘッドとルードボーイ・フェイスの共演。この夏、各所でバトル・ショウを展開してきた2人のラバダブ・セッション。そのフリー・スタイルなノリに、ホーム・Gの演奏も自然と熱くなる。
 求道者の様な佇まいのH・マンが決意の曲「不退転」で登場。その言葉に引き込まれる。アーティストとバンドの息がドンピシャ。H・マンのタイミングを全て読み切っての阿吽の呼吸。さすが。
 リラックスしたムードでムーミン登場。伸び伸びとその声を響かせる。途中NGヘッド、ヨンシンを招いて「Day By Day」が実現。関東では初披露となったのではないだろうか。これも「ソウル・レベル」のスペシャルなところだ。
 いよいよ佳境。リョウ・ザ・スカイウォーカー。ひときわ大きな歓声が上がる。野音の客はよくリリックを知っている。メドレーに続いて、新たな定番「ここにある今を 共に歩き出そう」と、大合唱タイムが続いた。
 そして大トリには素晴らしいプシンのショウ。登場していきなりの「あすなろ」のアカペラ。鳥肌モノ。女トゥーツ・ヒバートと呼ばせてもらいたい"どレゲエ"なジャム・セッションを経て、ライヴでは初めて聞いた新曲「My Endless Love」。最近、フェスでは滅多に聞くことの出来なくなった「Forever」もチラッと披露。もちろん大合唱。C.A.M.P(クリス、アカネ、ムーミン、プシン)もライヴで再現。先日、訃報の届いた初代コーラス隊「恐山クルー」のアサトさんへ捧げるアカペラから、感動の「Rainbow」へ。「ソウル・レベル」ならではのプシンのショウだ。個人的に、シーズン通して何度目かの彼女のステージだったが、毎回、その素晴らしさが褪せることはない。
 最後は全員がステージに再び集まっての大団円。スティーリー&クリーヴィが、88年に送り出したモンスター・トラック"Duck"に乗せてのラバダブ・セッション大会。演者も、観客もいい感じに「やりきった感」を覚えた頃合いに、「ソウル・レベル2009」は幕を降ろした。
 
丸9年も時間が経てば、いろんなことがあるだろう。誰にとってもそう。多くの別れもあれば、反面、その倍ぐらいの出会いもあるってもんだ。生きている間は、生きて行かなければならない。この音楽の現場にも子供たちがずいぶんと増えた。若い新しい世代のお客さんも増えた。だから、きっと次のディケイドへ。この"反逆の魂"は、受け継がれて行くのだろう。

Text by Naohiro Moro from Riddim No.320